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 体が軽い。ここはきっと空に近い場所なんだ。体の軽さは命の軽さ。私は今、少しだけ空に近い場所に立っているんだ。遥は周囲を見渡す。透明な世界。ガラス細工のように繊細な世界。(この世界を作ったのは私なのかな?)素敵な場所。こんなところに来ることができるなんて夢の世界も悪くない。

 透明な風が世界に吹いた。その風の中で、遥は夏のことを考えた。

 私はどうなってもいい。でも夏にはちゃんと生きていてほしい。きちんと大人になってほしい。夏は研究所の外に出ることができただろうか? ここから元いた世界に(夏の帰るべき場所に)帰ることができただろうか? とても心配だ。夏は無茶ばかりするから。怪我とかしてないといいんだけど……。夏に会いたい。会いたいって思えば会えるのかな? 

 遥はそっと瞳を閉じる。それから夏の姿形を頭の中にできるだけ鮮明に思い浮かべる。……夏。あなたに会いたい。私はあなたに会いたいの。本物じゃなくてもいい。私の空想でもいい。私の中にいる偽物の夏でもいい。あなたに会いたい。あなたにあって、もっとたくさん、いろんなことをおしゃべりしたの。だからお願い夏。私の前にちゃんと来て。どうか私を迎えに来て。

 遥はお願いごとをする。

 遥は普段、お願いをすることはない。願いとは自分の力でつかみとるものだからだ。(だからこれはとても珍しいことだ)でも、ここは私の夢の中。だからちょっとぐらいずるしてもいいよね、夏。遥はゆっくりと目を開ける。目を開けるとそこは見覚えのある場所だった。夏に始めて出会った場所。二人の大切な思い出の場所だ。……懐かしい。

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