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368 木戸遥の結末 おーい。どこ見てるの?

 木戸遥の結末


 おーい。どこ見てるの?


 木戸遥は透明な世界の中で目を覚ました。いったいなにがどうなったんだろう? 私は死んだはずじゃないのか? 遥は疑問に思う。自分自身で撃った銃の感触が右手に残っている。確かに撃った。だから私はあの瞬間死亡したはずだ。自分が死亡したことを明確に遥は記憶している。しかし、手で頭の傷を確認するとそこにはなんの傷もなかった。遥の頭に小さな穴は開いていなかった。だから赤い血もあふれてはいないし、遥は涙を流してもいなかった。いつも通りの自分が(木戸遥が)そこには存在しているだけだった。

 それでも、自分が死んだという感覚は確かに残っている。……でも、もしそうなのだとしたら、今ここでこうして思考している自分は誰なのだろう? 私はいったい誰なんだ? 私は木戸遥ではないのだろうか? 私は私ではなくなってしまったのだろうか? 遥は思考する。でも答えはまったくでなかった。説明ができない。これほど現在自分に起こっている現象を理解、認識できないことは遥にとって産まれて初めての経験だった。

 それからしばらくの間、うーん、と唸って考えていた遥が突然ふふっと笑い出す。それは『ある可能性』に遥が思い当たったからだ。そうか。これは『夢』なんだ。私は夢を見ているんだ。遥はそう確信した。遥はこれまで夢というものを見たことが一度もなかった。だからこれが遥が見ている夢だとしたら、この夢が遥の初めての夢を見る経験ということになる。これが夢だとしたらとても興味深い体験だ。こんな不思議なことがあるだろうか? 私の知らない世界がこんなところにまだあった。なんて素敵な経験なんだろう。 

 ……ううん。そうじゃない。きっと私の知らないことなんていくらでもあるんだ。たくさんの驚きと感動が世界には埋まってるんだ。宝探しのようにそれらを探し出す。遥は子供のころ、とても本が大好きだった。一日中本を読んでいた。あれは宝探しだった。ページをめくるとそこには宝があった。からっぽの本もあった。そんなときはとても残念な気持ちになった。意地になって宝を見つけるまで本を読むことをやめなかった。子供のころの私。……一人ぼっちのかわいそうな子供だ。

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