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 照子はとても綺麗な(夏の青空みたいな)青色の瞳からとめどなく涙を流している。とても美しい涙。

 照子はとても子供らしい表情で泣いている。その表情は澪の知っている照子とはまったく異なるものだった。なんていうか、とても人間らしい……、いや、それは『人間そのもの』だった。


 今の照子はまるで本当に生きている人間みたいだった。それは木戸遥が理想としていた木戸照子の姿だった。人形のように整った照子の顔はぐしゃぐしゃに泣き崩れている。小さな手のひらで血と涙を拭きながら照子は小さな鳴き声を上げている。その鳴き声はどこかぎくしゃくとしている。照子はまだ声を出すことにも、涙を流すことにもあまりなれていないようだ。

 頭から足下まで真っ赤に染まった照子の小さな体は震えている。その泣き声も体と同じように震えていた。

 体は震えている。声も震えている。

 照子は怯えている。……照子はきっと(いろんなものに)怯えているんだ。澪にはそれが理解できた。だから澪は照子をなんとか安心させてあげたいと思った。

「とりあえず医務室があるからそこに遥を連れて行こう。あとは検査をして、それから……そうだ! 遥の体を保存しないといけないね。えっと血液は冷凍保存されているから問題ないし……、それに手術は機械がやってくれるよ」澪は意識的に明るい声でそう言った。


「はるか、たすかるの?」澪の明るい言葉を聞いて、照子も少しだけ明るい表情になった。澪にはそれがなんだかとても嬉しかった。

「助かるよ。きっと助かる。ここにはなんでもあるんだ。新鮮な臓器だってあるし、外の世界では販売されていない遥手作りの新薬だってあるんだよ。設備もばっちりだし、だから大丈夫。きっと遥は助かるよ」

「ほんとう?」

「うん。本当」と澪は言う。照子は澪の言葉を聞いて(顔をにっこりとさせて)とても喜んでいる。

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