表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

284/442

330

 だからなのか、当時の雨森研究所の面影が、地下にあるこの場所にはまだ残っていた。雨森美雨博士は人工進化研究の分野では超がつくほどの有名人だったが、雨森研究所が木戸研究所となり、人工進化分野のトップが雨森美雨博士から天才木戸遥への引き継がれたあとで、まるで遥と入れ替わるようにして、雨森博士は行方不明となってしまっていた。(現在でも雨森博士の行方は判明していない)

 深海には木戸遥の研究のすべてがあった。遥の人工進化研究の対象が照子だとすると人工知能研究の対象が深海だった。(この辺りはいろいろと複雑だ。二つの研究が互いの研究を支え合っているとも言えるのかもしれない)

 深海に行くことは澪にもできないことだった。(シロクジラとして唯一、遥からマスター権限が与えられていないのだ)……でも、だからこそ、そこに行ってみたいと澪は思った。(そんな澪の思いに遥もどこか察しをつけているようだ)……今なら、そこに行けるかもしれないと思った。シェルター室にいるということは、そこから下に降りていけば、研究所の最下層にある深海にまでたどり着くことができるということだった。(しかも非常事態ということで、深海までの通路がすべてオープンになっている可能性がかなり高い。数値にすれば八十パーセントくらいはある。それは澪の作戦の成功率と言ってもいい)

 澪は今、どちらかというと木戸遥のテリトリーではなく旧雨森研究所の、……つまりいなくなった雨森美雨博士の残していったテリトリーの中にいた。(それはつまり澪にとっての未知の世界の中にいた)

 とても強い好奇心が澪の心を支配した。(澪はもともと冒険が大好きな男の子なのだ)実際の行動に移りそうにもなった。でも結局、澪は我慢した。

 もうすぐここに遥が夏をつれて避難してくるだろう。(事故の規模によっては、もしかしたら、照子も一緒かもしれない)そのときに澪はシェルター室にいなければならない。そうしないとそのときのアリバイを遥にどこに行っていたのかと追及される恐れがあったからだ。(そのときにどんな言い訳をしても、いつものように遥は澪の言い訳、つまり『嘘』を、一瞬にして見抜くだろう)澪は自分の思考を空想的な方向から現実的な方向へと切り替えた。澪は思考を続けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ