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(出口はおそらく開く。それは遥の意思であり、実際的には澪が開けてくれたのか、緊急時のマニュアルなのかわからないけど、夏を研究所の外に誘導してくれている。もしかしたら本当に地上に出られるかもしれない。閉鎖されて閉じ込められると思ったけど、地上に出るための経路も存在しているのかもしれない。……反対側の秘密の通路はどうだろう? あれが非常通路なのかもしれない。でもわざわざ隠す必要があるのだろうか? それでは非常時の役に立たないのではないのだろうか? ……それになんだろう?)

 ……あの闇は嫌な予感がする。少なくともあの先にはいいことはなにも待っていないような気がする。だからあの闇は無視することにした。……それがいい。それでいいんだ。怖いものからは逃げ出したっていい。それは卑怯な行為ではない。とても勇気のある、……生きるための前向きな行為なのだ。 

 ずっと開かなかった遥の部屋のドアと、突然そのドアが開いたと思ったら、今度は二つのドアが(おそらくは同時に)開いて夏に選択肢を与えた。

 そのドアの開きかたはとてもおかしかった。遥なら緊急時に夏に選択肢を与えるようなドアの開きかたをプログラミングしないはずだ。もっと一直線のプログラムにするはずなのだ。(夏はいつもまっすぐ走るのだから)

 選択肢を与えられ(それは夏にとって本当に珍しいことだ)夏は迷ったが、出口に向かう選択肢を選んだ。マニュアルにしては思考がちぐはぐな気がする。遥が設計したとは思えない不自然さ。

 矛盾した意思を感じる。まるでこの研究所を支配している意思が二つあって、そのうちの一つが夏をこの場所に閉じ込めようとして、もう一つが夏を研究所の外に出そうとして、その二つの意思が混ざり合って、混濁して、混乱しているかのようだった。こんなおかしなプログラムを天才である遥が書くだろうか? 答えはノーだ。遥がこんなおかしなプログラムを書くわけがないのだ。

 どこかおかしい。(やっぱり変だ)

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