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 研究所を二つの区画に隔てているドアの前までくると、そのドアは夏の存在をなんらかの方法で感知して自動で開いた。本当に全部自動なんだ。夏は驚く。遥の話によるとシロクジラという人工知能がこの研究所のすべてを管理しているらしい。つまりこのドアの開け閉めだけではなくて、研究所全体や、夏の乗った列車や地下の照明や地上の広大な大地の上に広がっている幾つかの施設も、そのすべてを一個の人工知能が管理しているということだ。 

 それだけの量のプログラムを遥一人で書いたのだろうか? 

 いくら遥でもそれは物理的に不可能なはずだ。人工進化の研究と研究所施設の建設を同時期にやっているのだ。他にも数え切れないくらいの雑務や仕事をこなしているはずだし、論文の発表も行っている。

 ではどうやって完成させたのだろう? いくつかの可能性を考えたのだけど、夏にはどれが正解なのかその答えがわからなかった。いや、もともと正解なんてないのかもしれない。遥はいつもそうやって夏の上空を飛んで、一人でどこかに飛び去って行ってしまうのだ。夏を一人大地の上に置いてけぼりにして。

 夏は手前の区画の左側の壁のドアの前に立つ。ドアは先ほどと同じように自動で開いた。入り口のようにわかりやすい監視カメラはないようだけど、どうやって人物を確認しているのだろうか? 夏にはその原理が理解できない。

 部屋の中はとても明るかった。電気はずっとつけっぱなしのようだ。おそらく地上にあった透明なガラスの壁が太陽光発電の役割を果たしているのだろう。その変換された太陽の光が、こうして研究所の各所にエネルギーとして供給されているのだ。 

 この部屋もやはり真っ白な部屋だった。部屋の中には四角い箱が壁際に沿って縦と横に壁を全部覆い隠すようにして、綺麗に整頓されて置いてある。どうやらそれは人が両手で抱えて持ち運べるサイズの大きさのコンテナのようだ。

 部屋の大きさは今まで見てきた二つの部屋とまったく同じ。この部屋に置いてあるコンテナの数と大きさから考えると、この箱の中に入っているのは生活物資の類だろう。おそらく食料なども保存されているはずだ。すると大型資材はやはり地上か地下のどこかに専用の倉庫かなにかがあって、そこで保管しているのだろう。夏はぐるっと一周部屋の中を見てまわってから、その部屋をあとにする。

 研究所の中は一応これで全部かな? 

 ちょっとだけ迷ったけど夏は入り口から研究所の外にも出てみることにした。


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