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 研究所には私と遥しかいない。私はここでずっと眠っていた。その間に遥はどこかに消えてしまった。いなくなってしまった。コーヒーと薬。物理的な行動ができるのは私と遥の二人だけ。澪と照子は実際の世界には(おそらく)干渉できない存在だ。

(コーヒーに薬を混ぜる照子なんて想像できない。遥ならすぐに想像できるけど……)

 私はここで眠っていた。こんなに警報がなっているのに、すぐには目覚めなかった。目覚めたあとも、ぼんやりとして意識がはっきりと覚醒しなかった。……たぶん、遥に眠らされたんだ。(いや、きっと間違いない)

 夏は照子の寝室を兼ねた遥の研究室の風景を思い出す。あそこには薬がたくさんあった。それは照子用なのだと思いけど、人にだって服用できるのかもしれない。たとえそうではなくても少し強力な睡眠薬くらいなら遥は自分で調合できるだろうし、外部から購入だってできるだろう。

 夏はそっと自分の背負ってきたリュックサックを見る。そこには確かにリックサックがあった。リュックサックは部屋の隅っこの床の上にぽつんと一つだけで置いてある。蓋は空いていて、先ほど急いで時間を確認しようとして、その中にしまってある腕時計を探したときのままになっている。

(腕時計はちゃんとリュックサックの中にあったが、銀色の拳銃は相変わらずそこからなくなったままだった)

 夏はリュックサックの前まで移動すると、その場にしゃがみこんで手探りで中を確認して、真っ白な腕時計を取り出した。そしてそれを自分の左手にきちんとはめた。(腕時計は沈黙したままだったけど、腕時計を所有しておきた理由はほかにもあった)本来ならこのタイミングで拳銃を所有したいところだが、銃はなくなってしまったので(おそらく遥がどこかに隠したのだ)それはできなかった。

 夏の持ち込んだ銀色の拳銃と弾丸は、今は遥が所有している。(そういうことになるはずだ)

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