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「はるか」

 照子が名前を呼んだ。右手が動かない。でも銃はまだそこにある。銃と遥の右手は一体。もう離れることはない。遥は左手で右手を誘導する。そして再び銃口を照子の頭に向ける。化け物を殺すには頭を撃つしかない。そうやって脳髄を粉々に粉砕するしかない。(なぜかそのイメージは、照子の頭ではなく、遥自身の頭が粉々に砕けるイメージとして、遥の脳内で再生される)

 小さな照子の体の全部が遥の上に乗っかった。照子は雪のように冷たい。そして氷のように透明だ。(その体は白い雲のように軽い)

 冷たい。照子。あなた、なんでこんなに冷たいの? 遥はその目から涙を流している。熱い涙。その涙に触れて、照子が溶けてしまうのではないかと心配になる。

 照子の顔が遥の顔に近づいてくる。照子の額に銃が触れる。照子はそのことを気にしない。きっと今自分のひたいに押し付けられている道具が人を殺すための道具であるということを照子は知らないんだと遥は思う。照子は純粋だ。私のように不純ではない。遥は引き金にかかったままの人差し指に力を入れる。指はなんとか動きそうだ。今度は当たる。銃口は照子の額にぺったりとくっついている。この距離ならば、絶対に外れない。 

「はるか」

 前髪の奥から(銃口を額に押し当てたことによって)深い海のような、夏の高い空のような、青色の照子の瞳が現れる。それは遥の知っている照子の瞳。遥の知っている愛おしい照子の顔。遥の愛した照子がそこにはいる。

 ……照子。あなたは照子なの? 遥は自問する。照子から、答えはない。

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