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 遥は銃を自分のこめかみから外した。深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。それから遥はキッチンから部屋の中に戻ってきて、夏の眠っているベットの隅っこに腰を下ろした。

 遥は目を閉じて、自分の頭が吹き飛ぶ瞬間の映像と、夏の心臓を撃ち抜く自分の姿を重ね合わせるようにして、それらを同時に頭の中で思い描く。そのあまりにもリアルすぎるイメージが遥の脳裏に焼き付いて離れなくなる。

(そのイメージはこうだ。遥が崩れ落ちて壁にもたれかかり、夏は床にどくどくと赤い血を大量に流しながらうつ伏せの状態で倒れている。遥の頭はスイカ割りのスイカのように粉々に砕けている。夏の顔は見えない。夏の顔はその美しい黒髪によって遥の目から隠されている。遥は夏の顔がみたいと思う。でもそこで映像にノイズがまじり、イメージは砂嵐の中に消える)

 遥は頭にずきっ、という痛みを感じる。

 遥はベットの中で眠っている現実の夏を見る。(夏の顔はちゃんと見える。夏は呼吸をしている。毛布が上下に運動している。心臓がきちんと動いている)

 ……だから、できるだけ、銃の存在を自分から(そして夏から)少しでも遠ざけたかった。部屋の中は近すぎた。頑張ってキッチンまでは持っていくことができた。(本当はもっと遠くまで持って行きたかった)

 二日間の間、ずっと頑張ってきたけど、そろそろ限界だった。これが遥の精一杯だった。それでも、震える手で、震える体で、頑張って銃をキッチンまで持ち運ぶことができた(一時的とはいえ、夏から引き離すことに成功した)自分を自分で褒めてあげたいと思った。武器に対して遥はあまりにも無力だ。遥にはそれ以上、なにもすることができなかった。抵抗はできない。もう許されることもない。小さな銀色の拳銃はずっしりと重い。それは命の重さだった。

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