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 大丈夫だよ夏。私はあなたのこと絶対に恨んだりしないからさ。だから今すぐにその人の元に帰ってあげて。きっとその人は夏がいなくなって寂しいって泣いてるよ。それはすごくいけないことだよ、夏。

 あなたを待っていてくれる人がいる。あなたに手を差し伸べてくれる人がいる。あなたを愛してくれる人がいる。すごいよ夏。それって、とってもすごいことなんだよ、夏。

 ……私にはさ、そんな人誰もいないもの。それってすごいよ夏。もうそれはさ、才能だよ。なにごとにも代えがたい、あなた自身の才能だよ。人から愛される才能。それが私には欠けていた。これっぽっちもなかったよ。夏。私の箱の中身は空っぽだったよ。開けてみたら、なにも入っていなかったの。もうそりゃさ、ショックだったよ。本当にね、ショックだった。死んじゃおうかと思ったよ。それがわかったときにはね。なんか笑っちゃうよね。でもさ、仕方ないよね。ないもんはさ、ないんだからさ。

(あ、私のことはもういいよね。今は夏のことだよね。夏のことに話を戻すね)


 そこが、あなたの居場所なんだよ。あなたが空想する噓の世界じゃない。夢の中でもない。現実のあなたの居場所。もともと、あなた自身が立っていた場所。あなたの世界で一番のお気に入りの場所。(あなたはそこに帰っていくの。それってすごいことだよね。本当に素晴らしいことだよね)

 あなたが愛してやまなかった、あなたが世界で一番安心して暮らすことのできた場所。

 そんなところにさ、夏。あなたは今から帰ることができるんだよ。それってさ、本当にすごいよ、夏。おめでとう。夏。……本当に、本当におめでとう。

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