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 そうか、そうだったんだ。私、もうだめなんだね。

 私の頭はおかしくなってしまった。私は狂ってしまった。私は壊れてしまった。私は失われてしまった。私は粉々になってしまった。私はばらばらになってしまった。私は私の内側で再構築されて、私は変わってしまった。私はもう、(私の知っている)私ではなくなってしまった。

 きっとさ、最初から私は不良品だったんだね。だったら最初から、生まれたときから、それがわかるように、あなたは不良品ですってさ、シールでも貼っておいてほしいよね。(それもすごい強力なやつ)

 本当にやんなっちゃう。苦労するのは、いつも私なんだからね。(私の責任は私が負うことになるからね。それが所有するってことの意味だからね)ずるいよね。夏。神様はずるいよ。ずるいずるい。ね、そう思わない? 夏。遥は夏の鼻の頭に軽く指先で触れる。夏は眠りの中にいる。起きる気配はまったくない。安らかな寝息を立てている。その眠りがずっと続けばいいと遥は思う。現実はいつだって残酷だから。それはとても苦しいものだから。(でも、今の夏なら、そんな心配はないのかもしれないね。あなたはきっと、私と違って大丈夫なんだからね。だから、私の空想の世界の終わりの巻き添えにはできないよね)遥は思考を整理する。

 夏、あなたはだめだよ。あなたはまだ引き返すことができる。あなたはこんなところに居てはいけない。こんな場所に来ちゃだめだよ。ここから引き返すんだよ。外の世界に逃げて。今すぐここから逃げ出して。ここから出て外の世界で生きて。ちゃんとこのおかしな世界の中から生き延びて、……そして私の分まで人生を生きて。(幸せになって。夏ならなれる。あなたはきちんと幸せに生きられるんだよ)

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