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「シロクジラ?」
「この研究所のすべてを管理している人工知能の名前。私のオリジナル作品」
そういえばさっきからディスプレイの中を泳いでる白いクジラが泳いでいる。夏は四角い水槽の中のクジラに目を向ける。あれのことだろうか? 思い返してみると、照子の部屋でも、モニタの中で白いクジラが泳いでいたような気がする。
「結構時間かかったんだよ。大変だった」遥はさっきからかちかちとずっとノートパソコンのキーボードを叩いている。
夏はすることもないので部屋の中を観察する。
白い色はどこも一緒だ。外観も通路も照子の部屋も全部真っ白だった。遥の部屋も真っ白だ。部屋の構造はシンプルで物が少なくてよく片付いている。部屋の隅っこにはサイドテーブルがある。そこで遥は椅子に座ってずっとノートパソコンを操作している。部屋の中央に丸い形をしたテーブルと二脚の椅子があり夏はその片方の椅子に座っている。部屋の中には背の高い観葉植物が置いてある。その黄緑色が白一色の部屋の中でとても眩しい輝きを放っている。白い棚の上には赤い花の咲いた小さなサボテンの鉢がある。その隣には背表紙が真っ白な三冊の本が置いてある。棚の横には白いクローゼットが一つある。遥の部屋には二つのドアがあって手前のドアから研究所の通路に、奥のドアからはバスルームに移動することができる。さっき夏が顔を洗った場所だ。バスルームに付属している洗面台で夏は真っ赤になっている自分の顔を洗った。その途中にもう一つドアがあった。おそらくはトイレだろう。二つのドアの反対側はキッチンスペースになっていた。一人用にしては広いキッチンだった。レトロな調理道具が意外と多いことに驚いた。テーブルの上には三角柱の形をしたカレンダーが置いてある。二十五日に手書きのまるがついている。遥の描く手書きのまるを夏は久しぶりに見た。




