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 とても不思議。まるで今、初めて遥と出会ったみたい。なんでそう思うんだろう? なんでそう感じるんだろう? 

 夏は遥のおでこに自分のおでこをくっつける。それは遥の心を知るためだった。それは自然な動きだった。そうすることが当たり前であるかのように、夏は自然にそんな動きをした。そうすることでずっとわからなかった遥の本心が、夏の心に伝わってくるような気がした。だからそれを試してみた。そして実際にその行為は成功した。(ただの思いつきだというのにすごい。なんでもやってみるものだ)

 ……そうか。そうだったんだ。遥、あなたそんなことを考えてたんだ。そんなことを悩んでいたんだね。夏は笑う。

 すると、夏のすぐ目の前で遥も笑う。(本当に目の前だ。おでこだけではなくて、二人の鼻と鼻も触れ合っている)

 きっと夏と同じように遥にもずっと隠していた夏の本心が伝わっているのだろう。(通信とは本来、双方向であるべきものなのだ)情報とはつまり交換だからしょうがないけど、やっぱり少し恥ずかしい。照れ隠しに夏はまた笑う。そのまま夏は遥の顔を間近で見つめる。遥も夏を見返してくれる。

 遠かった。なんであんなに距離があったんだろう? なんでこんなに時間がかかったんだろう? 遥はいつも近くに居てくれた。こんなにそばに居てくれるのに。……私、ばかだね。大ばかだね。遥。本当にごめんね。迷惑ばかりかけて、ごめんね。……遥。

 夏の目に涙が浮かんだ。(一度流れ出したそれは遥と出会って、自然とその勢いを失っていた。その涙がまた溢れ出した)それは空の中に消えていく。悲しくなんかない。そうでしょ? (うん。そうだよ)それなのに涙は止まらない。夏の涙は夏の内側から夏の外側に出るのと同時に、空の中へと上昇して、(本当は二人が下降しているのだけど)空の中に消えていった。

 夏の流した涙は、そのすべてが空の中を上に、上に、昇っていって、やがて夏の目からは見えなくなった。青色の中に全部溶けてしまった。

 夏の涙は空を昇っていく。(きっと私の代わりに)どこまでも、どこまでも、高く、空の中を昇っていく。

 ……とても奇麗。それに、とても美しい。こんなに純粋なものが私の中から溢れ出したなんてとても信じられない。こんなに透明な物質が私の中にあるなんて信じられない。

 信じたくない。だって私は嘘つきだから。私は全然綺麗じゃないから。それなのにどうしてだろう? この涙は、私の中のどこに隠されていたのだろう? 私の中のどこに溜まっていたのだろう? なんか、変なの。そう思って夏は涙を流しながらまた笑った。

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