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 遥、お願い。私を見捨てないで。ちゃんと私を見て。私のことをちゃんと受け止めて。私に触れて欲しいの。触れて、愛してほしい。私のことを愛して欲しいの。私はあなたが好きなの。大好きなの。私には遥が必要なの。遥がいなくちゃ、私はだめなの! お願い。だから、遥! お願い!!

 夏は限界まで手を伸ばす。それでもだめだ。まだ二人は出会わない。……もう少し。……もう少しで遥に手が届く。遥も夏に手を伸ばしてくれている。遥が夏に手を差し伸べてくれている。私に向かって、手を差し伸べている。(こんな奇跡のような出来事があるだろうか。遥が私を信頼してくれているのだ)……つかみ損ねるわけにはいかない。絶対に、つかんでみせる!

「遥!」夏が叫んだ。(珍しい)

「夏!」遥がそれに大声で答える。その声は遥に負けないくらいの、大きな声だ。(声の大きさなら夏は遥に負けない自信がある)

 二人の少女が空の中を落ちていく。


 やがて、二人の手がお互いに届きそうな距離にまで近づいた。いや、それはもう実際に届いたと言ってもいいくらいの距離だった。夏の目には遥のまつげの形まできちんと見える。

 届いた! と夏は思った。(きっと遥も思ったと思う)

 でも、次の瞬間、それを邪魔されるようにして、夏はなにかとても強い力によっていきなり後方の方向に向かって、遠くに弾き飛ばされてしまった。夏はその力と現象に疑問を持つ暇さえ与えてもらえなかった。そして気がつくと、夏は一人で青色の世界の中でぐるぐると回転運動をしていた。なぜ自分がそんなことをしているのか夏には状況がよく理解できなかった。わからない。少なくとも夏の意思ではない。それは外部からの刺激だ。それは、……風だった。とても強い風が吹いている。強い、向かい風だ。この風が夏と遥の邪魔をしている。その風のせいで夏は遥の姿を見失った。また遥を失ってしまった。(偽物ではない風とは、つまり本物の風とはこういう向かい風のことをいうのだろうか? どうして私を応援してくれるような追い風が吹いてくれないのだろうか? 夏の体は震えている。夏は涙をじっと我慢している)

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