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 そのまま夏は大きな雲の中にぼん、と落ちた。そして、その分厚い雲を突き抜けようとして、その下へ、下へと落っこちていった。ごろごろと雷を帯電する暗い雲の中にいる間、夏は夢が終わる、ということを実感していた。

 いつもこうして夏の夢は終わるのだ。それは目が覚めたら忘れてしまうこと。今もこの瞬間まで、夢の終わりがそうなるということを、忘れていたこと。だけど今ははっきりとわかる。ここで私の夢は終わり。楽しかった架空の物語は終わりを告げて、つらく悲しいだけの現実が始まるんだ。夏はそっと目を閉じた。それはこれから始まる現実に備えるための行為だった。


 やがてぼん、と音がする。夏は「え?」と驚いて目を開ける。すると上空に巨大な雲の壁があった。それは先程まで夏が迷い込んでいた巨大な雲の壁だった。夏は周囲を見る。そこには空があり、青色がある。夏は空を飛び続けている。

 ……夢が終わっていない? 夏は驚く。どうしてだろう? 夢が終わらない。いつもならここで、私の夢は終わるのに。……いつもここで、……これからというときに、夢は終わってしまうのに。

 大きな強い北風が吹いて夏の体がと吹き飛ばされる。夏は風に懸命に耐えながら、空中で体制を立て直す。雲が吹き飛んで空が青色に染まる。あの巨大な雲の壁を一瞬で吹き飛ばすなんてすごい風だ。空の一番高いところには太陽が輝いている。ずっとそこから動かない太陽。それはまるで太陽というよりは北極星のようだった。

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