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 木戸遥は夢が実際にどんな現象なのか体験したことがなかった。遥は夢を必要としていなかった。(それがよく似ている二人の少女である遥と夏の一番の相違なのかもしれない)遥にとって夢とはもっとはっきりとした(現実の)形を持つものだった。

 木戸遥は十四年間生きてきて今まで一度も夢を見たことがない。そしてこれからも夢を見ることはないだろう。(それは遥は確信していた。しかし同時にその確信が裏切られることも期待していた。遥は夏の語る夢というものにすごく興味があった)

 遥は目をつぶる。遥の意識が拡散する。真っ暗な世界の中に一人ぼっちで落っこちていく。(それは別に怖いことでも嫌いなことでもない)孤独な世界を遥は愛している。

 愛とは形だ。遥は愛の正体を見抜いていた。だから遥は孤独を愛することができた。自分を愛することができたんだ。(そう。私は私を愛している。私は私を許している)


 夏、気づいてる? あなたのおかげなんだよ。私に愛がなんであるか、教えてくれたのは夏なんだよ。愛はあなたのすぐ近くにある。あなたの近くであなたを守ってくれている。それが愛。あなたは愛されている。愛されて生まれてきたんだよ。それを忘れないでほしい。(もし忘れているのなら)思い出してほしい。そして一秒でもいい、一瞬でもいいから、私よりも少しでも長く、(あなたには)生きてほしい。


 夏はもう眠りの中に落ちていた。(目をつぶっていても、遥にはそれがわかった)遥はそれを確認するとかろうじて残っていた眠りかけの自分の意識をゆっくりと手放していった。ディスプレイの光が自動で消えた。(それは遥がそうするように命令をしたからだ。遥の意識がなくなれば遥の部屋の明かりもまた自動的に消えるのだ。木戸研究所ではあたり前の出来事だった)部屋の中に明かりはなくなった。そして世界は真っ暗になった。(まるで遥の思考そのもののように)

 遥のノートパソコンに(自動で)表示されている言葉。

『神様はいつも怒っている。笑っているときなんかきっとないのだ』

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