194 12月25日 夜 楽しい時間はあっとう間に過ぎてしまうね。
12月25日 夜 楽しい時間はあっとう間に過ぎてしまうね。
「遅すぎる」
帰ってすぐ遥に怒られた。ずるいことに澪は姿を隠している。遥の前に現れるつもりはないらしい。根性のないクジラだ。あとでいじってやろうと夏は心に決めた。
「ごめん。つい夢中になっちゃって」
「ご飯さめちゃったよ。とりあえず温め直すからちょっとだけ待ってて」エプロンをつけた遥はそう言っててきぱきと動いて晩御飯の支度をしてくれる。夏はその作業を手伝おうかと思ったが、怒られたばかりだし、かえって邪魔になってしまうので大人しく座っていることにした。遥は時間にとてもうるさい。時間を守るということは、当たり前のことではあるが几帳面すぎる。昔からずっとそう。いつも時間を気にしている。なんとなく時間に追われているイメージがある。実際に遥にとって時間は最大の敵と言っていいだろう。人は誰でも、どんなに遠くまで逃げても、絶対に時間から逃れることはできないのだ。
「晩御飯、チキンとクリームシチューなんだ。クリスマスっぽくていいね」この辺境の地にある研究所にいると忘れてしまいそうになるが、今日はクリスマスなのだ。




