191
「空、奇麗だね」遥がつぶやいた。
「こんなに綺麗だっけ? 久しぶりだからそう思うのかな? どう思う? 澪」遥は澪に視線を向ける。
すると遥が泣いていることが澪にわかった。奇麗な遥の頬には涙の跡がはっきりと残っていた。それは星の光を反射してきらきらと輝いていた。
「そうかな? いつもと変わらないと思うけど、調べてみようか?」いつものように澪は言う。突然そんな質問をされても困る。
遥はその返答を聞いて軽く微笑む。遥は澪のいるノートパソコンの画面を優しく撫でてくれた。澪は遥が笑ってくれたことが嬉しかった。
「調べなくていい」遥は言う。
それから遥はなにもしゃべらなくなった。きっといつものように難しい考えごとをしているのだと澪は思った。遥の思考の邪魔をしてはいけない。だから澪もなにもしゃべらなくなった。遥の見ているものが澪にはわからない。だから、沈黙の中で、澪は自分のことを考えた。澪は星空を眺めながらずっとその先の先にまで続いている果てしない宇宙を見ていた。
澪は宇宙に憧れている。あの大きな青色の(今は夜だけど)空を突き抜けて、宇宙を旅する自分を空想するだけで澪はとても幸せな気分になることができた。
いつか本当に宇宙に行ってみたいと思った。もちろん宇宙には絶対に行く。空想を現実の形にしてみせる。今朝もそのために宇宙船の設計をしたところだ。
それはあっけなく遥に却下されてしまったけど、(どうやら宇宙船に不具合があったようだ)それくらいでは諦めない。




