表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

170/442

189

 だって道は続いているもの。だからどこまでも行けるし、ちゃんと帰ってくることだってできる。夏は思考を繰り返す。あと必要なものは一歩を踏み出す勇気くらいのものだ。踏み出す勇気だけなのだ。夏がどこまで遠くに行くことができるのか? それを決めるのは他人じゃない。それを決めるのは夏自身だ。

 勇気の分だけ遠くに行くことができる。

 ならどこまでも走り続けてやる。伊達に毎日走っているわけじゃないんだぞ! 体力には自信がある。ランニングをすることができなかったことも影響しているのか、体を動かすことが楽しくて仕方がない。自転車を漕ぎながら、風の中で夏は笑う。

「……もう、さっきまで疲れた疲れた言ってたのにさ。しょうがないな。もうどうなっても知らないよ。一応言っておくけど、これは僕の責任じゃないからね」澪が言う。

「友達なんだからあとで一緒に怒られるんだよ」夏が言う。澪はなんだが納得がいかないようで夏の腕時計の中で頬を膨らませている。そんな澪はなかなか可愛い。

「男の子なんだから、このくらい我慢しなさい」笑いながら夏は言う。

 このころには、夏はもう澪のことが本当に好きになっていた。だけど人工知能の男の子は夏の好意には(あるいはその微妙な変化には)まったく気がついていないようだった。

 それは澪が小さな男の子だからなのか、あるいは澪が人工知能だからなのか、そのどちらが理由なのかは、夏には判断することができなかった。

 

 夏はドームの外周に続く道の上を走り続ける。すごく気分がいい。夏は一人、風を切るようにして自転車をとても速いスピードで走らせる。

 そして夏は実際にドームの外周にたどり着く。澪の説明を聞きながらドームの壁を見学し、その周囲を少し走ったあとで、満足すると、夏は適当なところで自転車の向きを変えて、今度は今走って来た道を全速力で戻り始めた。

 そのころにはもう空は暗くなり、日はすでに沈もうとしている時刻だった。

 そして二人が地下の研究所へ向かう森の中の駅に戻ってきたころには、もうすっかり世界は夜になっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ