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 室内は温度調整がされているようでとても暖かい。研究所自体はそれほど広くはないようだが、夏の理解を超えた世界が広がっている。夏が真っ直ぐ通路を歩いていくと奥のドアが勝手に開いた。どうやらここでも道案内をしてくれるみたいだ。夏は通路の奥に進む。すると左右に同じようなドアがあった。その前まで移動すると右側のドアだけが開いた。

 中を覗いてみると、そこに一人の少女がいた。

 その美しい少女は袖のない白いワンピースのような上品な服を着ている。(スカート丈はひざ上まで。私と同じくらい)足元は白いブーツ。頭には白いカチューシャ。左手には白いリングをつけている。さらさらの黒髪はいつも通りまっすぐのストレート。可愛らしい形の小さな耳は両方とも髪の外に出している。

 ほっそりとしていて、胸が少しだけ(私よりも)大きくて、綺麗な手と長い足をしている。小さな(あひるみたいな)くちびるはしっかりととじている。(もしかしたら、遥には魔法がかかっていて、魔法がとけたら遥はあひるに戻ってしまうのかもしれない)

 少女はこちらを向いている。(空想の物語の中のお姫様みたいに美しい顔。その大きな長いまつ毛のぱっちりとした黒い瞳には、私の顔がはっきりと映っている)間違いなく木戸遥だ。

 その顔を見て夏は言葉を失った。文句を言いにきたのになんの言葉も出なかった。ずっと会いたかった遥が目の前にいる。確かに彼女はそこに存在していた。

「久しぶりだね、夏」ぼんやりと突っ立ている夏を見て遥が先に声をかける。その声でようやく夏は自分の言葉を取り戻す。

「ひ、久しぶり」

 片手をあげて引きつった笑顔をした。

 それから夏は部屋の中に移動する。すると背後でドアの閉まる音がした。部屋の中で夏と遥は向かい合う。

 本人が目の前にいると、どうしても緊張してしまう。さっきの笑顔は夏が何百回と練習してきたとびっきりの笑顔のはずだったのに……、まあ、なにごとも練習通りにはいかないものだ。

 遥はじっと夏の顔を見つめている。

 夏は慌てて遥の顔から目をそらした。すると、そんな夏の視界になにか得体の知れない異様なものが映り込む。

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