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 遥が照子をこんな小さな部屋の中に閉じ込めている理由はなんだろう? そんなことを夏は考えてみる。遥は照子のことを溺愛している。そんな遥が自分の部屋で照子と一緒に生活をしたり、照子を抱いて一緒のベットで寝たり、照子と一緒にお風呂に入ったりしないのはなぜなんだろう? 無菌室の中じゃないと生きていくことができない照子。木戸照子とは、そういった一般に愛と呼ばれるような行為すら頻繁には行えないほどに、(つまり数時間といえども無菌室の外に出られないほどに)そんなにすぐに死んでしまうような、弱い命なのか?

「……照子は、この部屋の外側の世界では、長く生きていくことができない命、なんだよね?」

「そう。照子は今のところ、この部屋の中以外の場所では、長い時間を生きていくことはできない。この狭い空間が照子のすべて。世界の全部。私は照子の生きていける世界をもっと広くしてあげたいの。ずっと元気なまま、照子が笑顔で自由に生きていけるような環境を作りたい」

「ドーム建設がそのためなんだよね?」

「うん。そうだよ。もっとも、私は買い取ったドームを再利用しただけで、もともとの建設理由は違うんだけどね。このドームが完成すれば、照子は地上に出ることができる。……だけど、それだけじゃ不十分。もちろん、この部屋だけって言う現状よりはいいけど、まだまだ狭い。もっともっと、照子の世界を広くしたい」

 ずっと照子だけを見ていた遥が、ちらっと横目で夏を見た。その視線に気がついて夏は遥の顔を見る。

「……でも、地上に出られれば、とりあえず太陽が見えるようになるから、それだけでも大きな一歩かな?」

 すると自分のほうに視線を向けた夏を見ながら、そう言葉を付け加えたあとで、遥はにっこりと本当に嬉しそうに笑った。

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