表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダダッコ秀忠 ~天下一のぐうたら将軍~  作者: おしゃまな耳かき
第六章 -幕間- 「元和《げんな》二年、駿府」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/29

訃報の日

家康が死んだのは、その三ヶ月後だった。


訃報が届いたのは、昼過ぎだった。


秀忠は書類を持ってきた土井利勝に、「今日はいい」とだけ言った。


それから縁側に出て、庭を見た。


何を見ていたのかは、わからない。庭はいつもと同じだった。松の形も、石の並びも、何も変わっていなかった。変わっていないのに、何かが変わっていた。それが何なのかを探すように、ただ庭を見ていた。


日が傾いてきた頃、お江が隣に座った。


何も言わなかった。


秀忠も何も言わなかった。


夕暮れが庭を染めた。赤から紫へと変わって、それからゆっくり暗くなった。二人は並んで座ったまま、日が落ちるのを見ていた。言葉は何もなかった。何も言わなくていい、とお江は思っていた。言わなくていい、とわかっているからこそ、隣に座っていた。


夜になって、侍女が灯りを持ってきた。


秀忠は「いい」と言った。


灯りはいらなかった。


暗い庭を、もう少し、二人で見ていた。


縁側の廊下の端で、ひさは息を殺して控えていた。奥方様のご用があればすぐ動けるよう、ただそれだけのために。しかし用はなかった。二人はただ、暗くなった庭を見ていた。


ひさは途中から、何を控えているのかわからなくなった。それでも動けなかった。動いてはいけない気がしたからだった。


秀忠が、ぽつりと言った。


「……お父さん、めんどくさいとこ多かったよな」


お江は何も言わなかった。


「関ヶ原の時も。将軍の時も。ずっと、なんかしろって。全部ひとのせいにしてたよな、あのひと」


「……そうね」


「なのになんで、いなくなると……」


秀忠は、そこで止まった。


最後まで言わなかった。


お江も、続きを聞かなかった。


ひさは廊下の端で、その「止まった場所」を聞いていた。生涯、誰にも話さなかった。お江がそうしたように。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ