美鈴は新しい獣魔を孵化させる。
いま僕は、天空の城の食堂にいる。
美鈴さんと、一緒に朝食を食べる為、美鈴さんが食堂に来るのを待っているところだ。
身仕度に時間がかかっているのかな?
何時もなら、とっくに食堂へ来ている時間なのに、美鈴さんが来る気配が無い。
…おかしい…どうしたんだろう?
「美鈴さん…どうかしたのかな?」
僕が一人言を言うと、アリアが「様子を見て参ります!」そう言って、食堂を後にする。
いくら自分の彼女だと言っても、女性の部屋に入るのは気が引ける。
アリアは同じ女性だし、美鈴さんの身の回りの世話をするメイドだ。
だから、アリアに任せておけば大丈夫だな!
…そう思っていました。
しかし、様子を見に行ったアリアまでもが、何時までたっても戻って来ない…
…おかしい…
ここは天空の城だ。
風の精霊達が警備と言うか、占領していて警備は万全だ。
だから、身の危険は無いハズだ。
それに、スノーや白玉も居る。
…どうしたんだろうか?
僕が様子を見に行く為、椅子から立ち上がろうとしたタイミングでドアが開き、美鈴さんとアリアが食堂に入って来た。
「拓哉さん!遅くなってごめんね!」美鈴さんが言う。
「大丈夫だよ!」僕は答える。
それから僕達の食事が始まる。
美鈴さんには、バッハとアリアが。
僕には、ヨモギとアズキが食事の世話をしてくれる。
アズキは、まだ話す事は出来ないが、人の言葉は理解している。
ヨモギと共に、アリアから“メイド道”なる物を学んでいる最中だ。
…何だろう?
何か何時もより、美鈴さんの機嫌が良い。
…何と言うか…ニコニコしている?
これは、聞いた方が良いのか?
聞くべきなのか?
それとも、そっとしておいた方が良いのか?
…いったい僕は、どうすれば良いんだ~!!
うん。
あれこれ悩んでいても仕方ない。
僕は思い切って、聞いてみる事にする。
「あの~美鈴さん。何か良い事でもあった?」
「ふふふ…実はね!新しい獣魔が産まれたんだよ~!」
「ああ、こないだの卵が孵化したんだ!良かったね!」
「それで、どんな魔獣が産まれたの?」
「ふふふ。今度の獣魔は、この子でーす!」
美鈴さんがトートバッグの中から、水色の物体を取り出す。
「…それは…スライムかな?」
「そうです!スライムの水餅ちゃんです!!」
「新しい獣魔が産まれて良かったね!」僕が言うと美鈴さんが、水餅の能力を教えてくれる。
「拓哉さん!この子はね、普通のスライムと違って、魔法が使えるんだよ!」
「へぇ~、魔法が使えるスライムなんて、珍しいね!」
「うん!水魔法が使えるの!だから、水の攻撃魔法や結界魔法以外に、回復魔法が使えるのです!」
「今朝、私がベッドから起きると、私の頭の上に乗ってきたの。暫くそのままにしていたら…何と!髪の毛がツヤツヤになったのです!!」
美鈴さんが髪の毛をかき上げる。
すると髪が指先から、サラサラ~っと滑り落ちる。
美鈴さんの髪に、光の加減で輪っかが見えた。
「確か天使の輪だっけ?髪がツヤツヤだね!」僕が褒めると美鈴さんが「それに、枝毛も修復されてたんだー!水餅ちゃん、偉いぞー!」
成る程…それで美鈴さんが、ご機嫌だったのか!
そして僕は、気になっている事を尋ねる。
「美鈴さんを呼びに行ったアリアが、なかなか戻って来なかったのは、水餅と何か関係があるのかな?」
僕はアリアを見る。
するとアリアが、咳払いをして「これは、大切な事だったのです!検証が必要だったのです!…髪は女の命とも申しますし…」
アリアの髪もツヤツヤだった。
するとヨモギが「私も試してみたいです!」と言うと、アリアが「あなたには不要です!」
そう言われ、ヨモギがしんなりする。
確かにヨモギには不要なんだよな~
ヨモギは半精霊だ。
だから、自分で再生してしまう。
朝食を食べ終わった僕達は、天空の城を降りて草原を歩く。
探索者協会で獣魔登録をして貰う為、2人で支店へ向かう。
スノーは美鈴さんの横を歩き、白玉は美鈴さんが持つトートバッグの中だ。
そして水餅は、美鈴さんの頭の上に乗っていて、ゆらゆら揺れていた。
★★★★★
僕達はダンジョンゲートを抜けて、支店のロビーを歩く。
探索者達が一斉にこっちを見る。
う~ん?
僕じゃ無くて、皆が美鈴さんを見ている?
僕は探索者達の視線を追うと、美鈴さんの頭の上に乗っている、水餅を見ている様だ。
スライムなんて、浅い階層に幾らでも要るのに…何が珍しいんだろうか?
僕達は、受付の人に「支店長に会いたいんですけど…」と言うと「どうぞ~」と言って通される。
今日も顔パスだった。




