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昼食を終えて、二度目の休憩の後。
もう一度踏み台昇降をして、セレンティーヌとクラリスの二人には顔を洗ってから鏡台の前に座ってもらう。
ここからは、彼女達の侍女の出番だ。
「目の前に色々置いてあって、何が何だかよく分からないと思うけど。これから説明をしていくから、メモするなり何なりして、しっかり覚えてね」
鏡台の上には、麻里がコツコツ(?)増やした化粧品を綺麗な硝子の容器に入れ替えたものがズラリと並べられており、侍女達が真剣な顔でそれらを見ている。
「まず一番左側から、化粧水。これは肌に水分を補給するためのものよ。次は美容液で、保湿や美白、シワ改善なんかに効果のある成分が凝縮されてるの。その次はプロペトね。これは化粧水と美容液で補給した潤いを、蓋して閉じ込める役割をしてくれるわ。その次は日焼け止めで、その名の通り、肌が日に焼けるのを防いでくれるものよ。ここまでは大丈夫?」
確認すれば「はい!」という元気な声が返ってきた。
「じゃあ、今説明した順番で、セレンとクラリス様の肌に乗せていきます。今度は量の説明をするわね。まずは化粧水だけど、手で塗る方法とコットンを使う方法があるの」
麻里が五百円玉大の化粧水を手のひらに出してみせる。
「手で塗る場合はこれくらいの量が適正量なんだけど、一度に出すとこうやって零れちゃうから、ニ〜三回に分けて少量ずつ顔に馴染ませてあげて。コットンを使う場合は、全体がひたひたになるように多めに含ませてから使ってね」
侍女達が恐る恐る硝子容器からコットンに化粧水を浸し、セレンティーヌとクラリスの肌に乗せていく。
「因みに、多くつけすぎると肌のバリア機能が低下してかえって乾燥する場合があるから、最初は適量を守るようにしてね」
続いて美容液、プロペト、日焼け止めを塗り終わり、麻里が化粧下地を手にとる。
「次はこの下地を塗って、その後コンシーラーでシミとかクマをカバーします。そしてようやくファンデーションなんだけど、このキープミストを少量混ぜて使うと崩れにくくなるの」
「色々な種類のものがありますのね。ですが、不思議なことに、これだけたくさん塗っているのに、いつものメイクよりも自然に見えますわ」
セレンティーヌが感心したようにそう言えば、クラリスもウンウンと頷いている。
「同じメイクでも、目指すものが違うのよね。ここでは陶器のように白い肌を作るために白粉をはたきまくるけど、私のいた所ではいかに透明感のある肌に近付けるかで試行錯誤していたの」
「個人的に、いつものメイクよりこちらの透明感のある肌の方が好感が持てます」
「私もこちらのメイクの方が好きですわ」
どうやら二人ともお気に召してくれたらしい。
いや、侍女達の瞳のキラキラ具合からいっても、二人だけでなく侍女達も気に入ってくれたのだろう。
様々な色のアイシャドウやチークや口紅などを並べれば、皆のテンションが爆上がりし、落ち着かせるのが大変だったのは言うまでもない。
とりあえず使い方を見てもらうため、今日は麻里がセレンティーヌとクラリスにポイントメイクをしてみせた。
「こんな感じに仕上げてみたけど、どうかしら?」
まずは基本のナチュラルメイク。
ハイライトやシェーディングのお陰で、派手なメイクでなくても自然な立体感が出ている。
「お茶会なんかではこういったナチュラルメイク、夜会ではもうちょっと派手で華やかなメイクが良いと思うわ」
セレンティーヌとクラリスが鏡の中の自分の顔に驚いているが、それよりも侍女達の反応がもの凄かった。
「わあ、素敵!」
「使用する化粧品が違うだけで、これ程までに変わるなんて……」
「何て言ったらいいのか分からないほどに感動です!」
「喜んでもらえたようで良かったわ。後で侍女達の部屋に今使ったもの一式を届けるから、明日の朝以降、自分の顔にそれらを使ってメイクしてきてちょうだい。フィルズ伯爵邸に戻ったら、あなた達だけでクラリス様のシチュエーションに合わせたメイクをしないといけないでしょう? だから、私がいる間に様々なテクニックを覚えてもらわないといけないし、失敗したら失敗したで、何が悪かったのかを教えてあげられるからね」
侍女達が顔を見合せ、満面の笑みを浮かべながら拳をグッと握っている。
どうやら喜びに叫びたいのを我慢しているらしい。
さっきテンション爆上がりした時に、セレンティーヌとクラリスから注意を受けていたしね。
そこまで喜んでくれて何よりだけど、見たこともない化粧品を使って侍女達がどこまで上手くメイク出来るのか。
明日の朝、侍女達がどんな顔でやってくるのか。
麻里が「楽しみだわ」と小さく呟いた。




