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 夜会の三日後――。

 セイロン公爵とクラリスの父であるフィルズ伯爵からの許可を得て、クラリスが麻里の言う通り、侍女二人を連れて公爵家にやって来た。

「はい、まずは二人とも、これを着てね」

 セレンティーヌとクラリスに渡したのは、デカTシャツと乗馬用のパンツである。

「こ、これを着ますの?」

 困惑する二人に満面の笑みを浮かべて麻里が答えた。

「そう、動きやすそうでしょ?」

「た、確かに動き易そうではありますが……」

 二人の視線が扉横に立つ侍女達に向けられる。

 なぜなら今麻里から渡されたデカTシャツと乗馬用パンツを、既に彼女達の侍女が着用しているから。

 常にヒラヒラしたドレスで生活している令嬢達には抵抗あるかもしれないが、あんな姿で運動なんて出来るはずもない。

 なのでこれから毎日、運動する時にはこの服装に着替えてもらうことになる。

 クラリスの侍女達に同じ格好をしてもらったのは、これから約二カ月の間に行うことを、フィルズ伯爵邸に戻ってからも継続出来るよう、確りと覚えて帰ってもらうため。

 運動といっても激しいものではなく、ストレッチを中心とした室内で出来るものにプラスして、庭の散歩くらいのものだ。

 普段部屋にこもって刺繍や本を読む生活をしている令嬢達には、それでも充分な運動になるだろう。

 それと一番大事なのが食事だ。

 貴族の食事は日に二回。朝食(十時頃)と夕食(二十時頃)の間が長く、アフタヌーンティーで空腹を補っている。

 問題は、その何れもがカロリーオーバーであること。

 なので食事量を減らすのではなく、野菜を中心としたヘルシーメニューに変えることで、スッキリとした体と肌荒れ改善を目指していく。

 セレンティーヌ達が着替えるのを待つ間に、ハーブティーで喉を潤す。

 これはドクダミ茶やプーアル茶、桑茶やよもぎ茶等、痩せ効果のある複数の素材をブレンドしたものだ。

 比較的スッキリとしていて飲みやすく、食前と運動前に毎日飲むことにより即効性はないものの、痩せ体質に導いてくれる優れものである。

「お待たせしました」

 おずおずと、セレンティーヌとクラリスが麻里の前のソファーに腰掛けた。

 慣れない格好に戸惑っているのが分かる。

 侍女が二人の前にハーブティーを置くとスススと下がっていき、二人はカップに手を伸ばした。

「これはハーブティーですか? 初めて口にするお味です」

 セレンティーヌの言葉にクラリスが頷く。

「私も初めて口にするお味ですが、とても飲みやすいですわ」

「これは痩せ効果のあるお茶をブレンドしたものよ。即効性はないけど、続けて飲めばジワジワ効果が出てくるの。これを今日から毎日、食前と運動前に飲んでもらうから、気に入ってもらえたみたいで良かったわ」

「このハーブティーにそんな効果が……」

「飲むだけで痩せ効果を得られるなんて、素晴らしいですわね」

 セレンティーヌとクラリスが瞳をキラキラさせて、嬉しそうにハーブティーを飲んでいる。

 ちなみに侍女の皆さんにも、前もって飲んでもらいました。

 ハーブティーを飲み終わったら、次はストレッチである。

 ヨガマットはこの世界にはないので、厚手の絨毯の上で行うことに。

 麻里の前にセレンティーヌとクラリス、侍女達はその後ろで絨毯の上に直に座ってもらう。

「私と同じようにやってみてね」

 胡座を組み、楽な格好で肩の力を抜いて。

「まずは上半身から。前に伸ばした腕を、こうやって反対の腕で体のほうに引き寄せて。その際、反動はつけないで、呼吸はゆっくりで止めないようにね」

 皆が真剣な顔で、言われた通りに肩のストレッチを始める。

「はい、じゃあ反対側も」

 続いて胸のストレッチ、背中のストレッチをやったら、今度は下半身のストレッチに入る。

 腰とももの外側のストレッチ、ももの後ろ側のストレッチ、ももの内側のストレッチ、最後にふくらはぎのストレッチをして、一旦終了。

 最初の一週間はこれを朝と夜の二回行い、慣れてきたら朝はラジオ体操、夜はこのストレッチを行うつもりだ。

「次はコレね」

 麻里が取り出したのは、幅三十センチ、高さ十センチほどの台。

 これは商会に頼んで急遽作ってもらったもので、今朝届けてもらったばかりである。

 ほんと、無理言ってごめんなさい。

「これは踏み台昇降に使うための台よ。こうやって昇り降りするためのものなんだけど……」

 見本とばかりに台を使ってみせる。

「昇り降りするだけ、ですか?」

「ええ、昇り降りするだけ。でも、これがまた結構辛くなってくるんだけど、まずはやってみましょう!」

 言いながら、一人一人の足もとに台を置いていく。

「背筋を伸ばして、右足乗せる、左足乗せる、右足下ろす、左足下ろす、これの繰り返し。軽く肘を曲げてリズム良く腕を振って、台には足の裏全体をしっかりと乗せるようにしてね」

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