闇に潜むキーワード
時は日没。
暗国立ダークネス総合病院エントランスの一角にて、窓から夕日を眺めるハードボイルドな雰囲気の男がいた。
「ワイは探偵・・・。異界探偵のガーストや・・・!」
黄昏に酔いしれる男は渋い声で呟くとブラックの缶コーヒーをグビっと飲む。
彼の名はガースト。探偵業を生業とする40代の中年男性だ。
「も~!探しましたよ!こんな所で何一人でカッコつけてるんですか?早く病室に戻りましょうよ」
そんなガーストの背後から背の低い少女が呆れた様子で苦言を呈して来た。
「な、なんやねんフープ!ワイの助手ならブレイクタイムを邪魔すんなや・・・」
フープと呼ばれる少女にガーストはぶっきら棒に言う。
「ったく・・・お前のせいでワイの癒しの時間が台無しやで・・・」
「コーヒーなら病室でも飲めるじゃないですか。お医者さんも安静にって言ってたんですから言う事聞かないと」
ガーストの小言を気にも留めずフープは続ける。
この二人は依然ダークネス・ダーク・タワーを調査していた二人組の探偵だ。
先の事件でガーストは凶弾に倒れ、生死の境目を彷徨っていた。
だがこの通り、ガーストは見事一命を取り止め、今では一人で出歩けるまでに回復していた。
「んな事言うても病室戻った所で新聞読む以外やる事ないやん?あと相部屋のオッサンのいびきがうるさいねん!」
「確かに隣のおじさんのいびきはうるさいですケド文句言っちゃダメですよ~。もう少しで退院できるんですから我慢してください」
「ふん!ワイならもうこの通りや!今から退院してもいいくらいやっちゅーねん!」
ブン!
そんな事を言いながらガーストは腕を回し、快調であることをアピールする。
だが・・・
ズキッ・・・!
「あいたた・・・」
腹部に焼ける様な痛みを感じて思わずうずくまるガースト。
言うまでもなくガーストが受けた傷は全快している訳ではないという事を意味する。
「ホラ言わんこっちゃない・・・。傷口が開いたらブレイクタイム所じゃないですよ」
「しゃーないな・・・」
ガーストは観念した様子で呟くとゆっくりと立ち上がる。
そんな二人の探偵の元にドタバタと騒がしい足音が近づいてきた・・・!
「いた!あの子だ!」
奥の廊下からフープに指を指しながら走ってくるチビ。その隣には筋骨隆々のハゲ。
そう。お馴染みの二人組、ダーク・ウルフとエルリークだ!
「あ、あの人は・・・!」
それに気づいたフープも驚いた様子で呟く。
程なくしてダーク・ウルフとエルリークは二人の探偵の前でズザザとストップした。
「な、なんや!お前らは!!病院の廊下走ったらアカンやろがい!!」
ガーストは動揺しつつ二人の罪を数える。
そう、廊下を走ってはいけない。理由は危ないから。
「ハァ!ハァ・・・!お前・・・あの時の女の子だよな!?探偵の!!」
「は、はい。あの時はお世話になりました」
ガーストの注意を無視し、ダーク・ウルフはフープに声を掛ける。
対するフープもガーストを無視し、ダーク・ウルフに応じた。
「・・・何やフープ、コイツ等知り合いなんか?」
「はい。タワーでの一件の時にお世話になった闇の領域の人達です」
「ほーん・・・」
フープはガーストに対し二人の事を軽く紹介する。
それに対しガーストは不信な表情で思考を巡らせる。
(タワーの件に関わってるっちゅー事はこの二人は一般人やあらへんな。今の所敵意は感じひんが何の目的でワイ等の下に?)
ガーストは警戒していた。そう、無理もない・・・。
一人は酒も飲めなそうな子供。もう一人はガタイが良すぎるハゲの大男。
こんなデコボココンビが急に押しかけてきたのだ誰であれ不信に思うのも無理もない・・・。
「コホンッ!君ら騒がしい奴等やなぁ。礼儀がなっとらんのちゃう?ここ病院やしワイ怪我人やで?」
まずは簡単な挨拶と言わんばかりにガーストは牽制する。
「あん?なんやこのオッサン・・・偉そうやな?」
「エルリーク、待て」
ガーストにピキつくエルリークをダーク・ウルフは冷静に静止する。
そして懐からとある物を取り出した。
「すまねぇな探偵のオッサン。俺はダーク・ウルフ。こっちのハゲはエルリーク。二人ともインターセクトの者だ」
冷静に自己紹介をしながらダーク・ウルフは一枚のカードを見せる。
そのカードにはインターセクトの紋章とIDが刻まれてた。そう、身分証だ。
「ガ、ガーストさん!インターセクトって・・・」
「ほぉ。最近新聞で読んだわ。”世界情勢安全保障機構『インターセクト』”。つい最近発足された組織やなぁ」
ガーストは冷静に見定め、敵対の意志はないと判断する。
「んで?そんな政府お抱えの組織の人間がワイ等に何の用や?お見舞いにでも来てくれたんか?」
だがガーストは警戒を怠っていなかった。
まるで挑発する様にガーストはダーク・ウルフに対し訊く。
「ちょっとガーストさん!命を助けてもらったのに失礼ですよ?すみませんウチの師匠が失礼を働いて・・・」
ガーストの態度にフープは呆れたように言うとダーク・ウルフに頭を下げた。
「ってオイィィ!!フープゥ!お前どっちの味方やねん!!」
「愉快な奴等だな。あとオッサン、ここ病院やから静かにした方がいいぞ」
「ぐっ・・・!」
そんなやり取りを見ていたエルリークは軽く笑うと冗談交じりに注意する。
先ほどまでのハードボイルドな空気が嘘のようにガーストはたじろいだ。
「俺達は探偵のアンタ達に話を聞きたくて来たんだ。少しだけ時間もらっていいか?」
「・・・ほぉ?ワイ等が持つ情報が目当てって事やな?懐の方の準備は大丈夫でっか?えー・・・ダーク・ウルフはん?」
ガーストは指で輪っかをを作りながら言う。
言うまでも金の事だろう。つまり、情報はタダではないという事だ。
「そうだな・・・。ここじゃなんだから少し場所を変えないか?」
ダーク・ウルフは人目を気にするように辺りを見渡すとそう提案する。
「情報の内容は・・・”調和の要”についてだ・・・!」
「っ!」
小声でその単語を出すダーク・ウルフに対し、ガーストの眼つきが変わった。




