ブレイクスルー
「永久の闇 (トワノヤミ)のジジイ!?なんでここに・・・」
インフェルノカイザーが入院している病室に突如現れたのは永久の闇 (トワノヤミ)と呼ばれる老人だった。
初見の読者の為に軽く説明すると、かつてインフェルノカイザーやダーク・ウルフに闇のオーラの修行を付けたこともある師匠的なポジションの爺さんだ!
左手に使い古した杖。身体には薄汚いボロボロの黒いローブを身に着け、白髪滾る髪と髭はその素顔と真実を隠す。
「永久の闇 (トワノヤミ)」と呼ばれているがこれが本名なのかどうかも不明なのだ。
「オイオイ爺さん!ここ病院やぞ・・・!」
爆音と共に扉を開いた永久の闇 (トワノヤミ)に対し、エルリークはシンプルな苦言を呈す。
「なんじゃ?思ったより元気なようじゃの。さっきまで泣きそうな空気じゃったのに」
「う、うるせーな!聞いてたのかよ・・・」
だがエルリークをスルーし、初手でダーク・ウルフを煽る永久の闇 (トワノヤミ)。
独特の雰囲気を纏ったご老体はそのまま歩を進めるとインフェルノカイザーが横たわるベッドの前で足を止めた。
「ふむ・・・」
昏睡状態のインフェルノカイザーを一目見るや難しい表情と共に考えを巡らせる。
「ったく・・・。そう言えば爺さんと会うのは久しぶりだな。見ての通り・・・カイザーはこの前の戦いで寝たきりになっちまった・・・」
ダーク・ウルフは押し黙る永久の闇 (トワノヤミ)に対しそう伝える。
それを聞いた永久の闇 (トワノヤミ)は軽く頷くと振り返り、口を開いた。
「もう少し早く来るつもりじゃったが色々忙しくての。お前が解説せずともアンドレイの奴から大方の事は聞いとるわい」
「お?爺さんアンドレイ様と知り合いなんか?」
エルリークは素朴な疑問を永久の闇 (トワノヤミ)に確認する。
「なんじゃハゲ、言うとらんかったか?ワシとアンドレイは旧知の仲じゃよ。まぁ最近はあまり連絡取ってなかったがの」
「それは初耳やな・・・。ウルフは知ってたん?」
「いや・・・それは俺も初めて知ったな・・・」
今ここに開示される新たなる情報。
それはこの老いぼれ爺さんである永久の闇 (トワノヤミ)と大魔界ヘル・イン・ザ・ダークネスを治める魔皇帝、アンドレイ・グ・リーンナイトは実は顔見知りだったのだ。
そんな脇役の設定をここで一摘みしたところで永久の闇 (トワノヤミ)は続ける。
「とは言え、聞いてた以上にカイザーの容態は深刻そうじゃの」
「あぁ・・・。てかアンドレイ様から話聞いたってんならタワーやタケシの事も・・・」
「存じておる。まさかシャインまでも身体を乗っ取られるとはの。奴も助けてやらねばなるまい」
「もちろんだ。そう言えばシャインとアンタは裏で繋がってたんだっけ・・・」
シャイニングカイザーは過去に光の連邦軍に逆スパイとして活動していた。
その際、永久の闇 (トワノヤミ)に光側の情報を流し、水面下で戦争を止めるため行動していた過去を持つ。
「うむ。もはや隠す必要もあるまい。して、件のタケシとやらの行方は掴めていないそうじゃな」
「あぁ。正直八方塞がりだ。奴は自分につながる情報を徹底して潰してやがる。世界各地をしらみつぶしに探してたんじゃ切りがねぇ」
ダーク・ウルフはため息交じりに語る。
「ウルフはポラリス派の奴等を扇動して水面下で活動してるんじゃないかって言ってたよな?だがポラリス派からも情報が得られないってんじゃどうしようもねぇよなァ・・・」
エルリークも情報を整理し、ダーク・ウルフに確認するように述べる。
「ポラリス派・・・各地で暴れてる連邦軍の残党の事じゃな?じゃったら一つ情報を提供できるやもしれん」
と、永久の闇 (トワノヤミ)はここに来て期待させるようなことを枕言葉に語りだす。
「ワシも密かに各地の状況を集めておったがあの残党共はとある"一族”を探しておるようじゃ」
「とある一族?」
永久の闇 (トワノヤミ)によって新たに示されるポラリス派の情報。
それは終わりの見えない闇の中に射した一筋の光のようにダーク・ウルフの表情に生気が戻る。
「一族ってなんやねん。てか爺さんはどこで知ったん?」
一方でエルリークは首をかしげながらそう訊ねる。
「襲われた村の様子を見に行ったら残党兵がおっての。ワシを村人と勘違いして聞いてきたんじゃよ。『オイコラジジイ!例の一族の情報吐けやカスコラ』っとな」
「あ~・・・薄汚い爺さんいたら村人だと思うわな~・・・」
「ふむ。このハゲもあの時の残党兵のようになりたいらしいの」
ドゴラッ!
永久の闇 (トワノヤミ)の一言と同時にエルリークは壁に叩きつけられた。
「じょ、冗談ですや・・・ん」
「まぁ他の事聞く前に撤退して行きおったからこれ以上の情報は無いがの」
ボロ雑巾と化したエルリークを軽く流し、永久の闇 (トワノヤミ)はそう語る。
「ワシも例の一族と言われただけじゃ流石に何の事がさっぱりでの。どうじゃウルフ。何か心当たりはあるか?」
「ちょっと待ってくれ。何か忘れてる気がする・・・」
エルリークがボコられた下りをスルーしていたダーク・ウルフは目を細め、顎に手を当て考察する。
(一族・・・なんだろう・・・?この単語には聞き覚えがあるような・・・。思い出せ俺・・・!)
一族という単語に対し何かを思い出しかけるダーク・ウルフ。
目を瞑り、脳ミソをフル回転させ、自身の記憶を辿る。
「・・・ちょっと待てよ・・・!?」
何かを思い出したかのように目を見開くダーク・ウルフ。
ダーク・ウルフの脳裏には今まで忘れていた一つの単語が思い浮かんでいた。お得意の推理パートだ。
「そうだ・・・すっかり忘れてた・・・!」
ダーク・ウルフはハッとした様子でそう言い、顔を上げると勢いよく立ち上がった。
「調和の要・・・!」
ダーク・ウルフは一言、その言葉を発した。
その単語に対し永久の闇 (トワノヤミ)も驚いた様子で目を見開いた。
「ほう・・・!久々にその言葉を聞いたわい。普段はお目にかかれない一族だというのにどこで知ったのじゃ?」
「その、話すと長くなるんだが・・・」
永久の闇 (トワノヤミ)の問いにダーク・ウルフは記憶を呼び起こしながら語り始める。
そもそも”調和の要”と呼ばれる一族はこの世界の陰に生き、災いなどが起こらないかを監視し、言葉通り密かにこの世界の調和を守る一族だ。
そんな設定の一族であるがダーク・ウルフは永久の闇 (トワノヤミ)とのやり取りの中で思い出したことがあった。
「この前の大戦の時の話なんだが、ダークネス・ダーク・タワーに向かう前に一人の女の子が俺達に助けを求めてきたんだ」
「ほう・・・」
「名前までは忘れちまったがその娘は調和の要から伝言を頼まれてて、そこで俺達は調和の要ってのを知った。でも爺さんに言われるまですっかり忘れてたぜ。インターセクトの奴らにも伝えとかねぇとな・・・」
ダーク・ウルフはかつての記憶を元に語る。
だがダーク・ウルフが忘れてしまっていたのも無理もない。
その後のダークネス・ダーク・タワーでの戦いは激動の連続であった。
故に唐突に出てきた小娘や一族の事などすっかり忘れていたのだ。そう、無理もない・・・。
「ってか爺さんの方こそ調和の要の一族の事知ってんのか?」
「現役だった頃に少しだけ調和の要の者と関わったことがあっただけじゃ。あの時はアンドレイの奴がムチャしてのう・・・。おっと、この話はまた今度じゃ。尺が長くなるからの」
「え?あぁ・・・」
よく分からない事を言いながら過去をはぐらかす永久の闇 (トワノヤミ)。
ダーク・ウルフは気にはなったが深堀る気にはならなかった。
「話が逸れたな。しかしポラリス派の者達がなぜこの期に及んで調和の要の一族を探して居るかは見えてこぬな」
「いや、そうとも限らないぜ・・・」
永久の闇 (トワノヤミ)の考えにそれは違うと言わんばかりに待ったをかけるダーク・ウルフ。
「同時に思い出した事がある。ポラリスも調和の要の一人だったんだ!ポラリス派の奴等が一族を探してる理由としては納得できる!」
調和の要を契機に、ポラリスが調和の要の人間であった事を思い出す。
思い出した記憶は連鎖するように更なる記憶を呼び起こす。もう止まらんよ。流れ始めたエネルギーと同じだ。
そして勘の良いガキであるダーク・ウルフはそこから更に考察を深める。
「そもそもあの塔を制御するには調和の要の権能が必要だったハズ!星の核を狙ってたタケシが調和の要の権能を狙うのは容易に想像できる!であればポラリス派を使って調和の要の一族を探しているという説明も付く・・・!」
「なるほど。両者の利害が一致しておる訳じゃな」
ダーク・ウルフはこれまでの情報と調和の要の繋がりを整理し、推理する。
そうすると思わぬ繋がりが浮かび上がってきたではないか。
「ふむ。どうやら活路を見出せたようじゃな」
「ああ!脳細胞もトップギアだ!感謝するぜ爺さん!!俺の考えは以下の通りだ!」
①タケシの狙いは完全体として復活する事
②その為にはこの世界に封印されている”星の核”の力が必要
③だが星の核はダークネス・ダーク・タワーに封印されている
④タワーの封印を解くには調和の要の一族が持つ権能が必要
⑤隠れ住む調和の要の一族を探すために散り散りになったポラリス派の残党を扇動し利用
「この仮説が正しければ・・・ポラリス派の暴動と雲隠れしたタケシとの繋がりが証明できる!」
ダーク・ウルフは確かな自信を元にそう語る。
停滞していた状況がここに来てようやく動くのではないかと期待に胸を膨らませる。
「だがよォウルフ・・・」
そんなダーク・ウルフに対し、うずくまっていたエルリークがよろりと立ち上がりながら異を唱える。
「その仮説を立証するにはこっちも調和の要ってやらを見つける必要があるんじゃねぇか?現状そんな手がかり無ェだろ・・・」
「とも限らねぇぜ?エルリーク・・・!」
「あん?」
エルリークの指摘を受け止めた上でダーク・ウルフはニヤリと笑うと再度語り始める。
「あの時の女の子に直接確認すればいいんだよ!彼女はあの時言っていた。調和の要の人間から依頼を受けたってな!」
「あ~・・・そんな事もあったな・・・」
うろ覚えのエルリークはそんな下りもあったなみたいな表情で口を半開きにしながら聞く。
読者の皆さんも覚えていないであろう出来事だ。エルリークが覚えているはずもないだろう。
「そして師匠である人物がタワーで負傷。バシリアさん達と一緒に救急搬送に向かったよな?」
エルリークに確認するように言うとダーク・ウルフは畳み掛けるように続ける。
「この病院はこの都市で一番デカい病院だ。負傷者が緊急で搬送されるならまずここだろう。つまり、この病院に師匠が入院しているなら女の子も付き添いでこの病院にいる可能性が高いって事だよ!!」
バンッ!
「そうか!って事は直接調和の要の件を聞けるって事やんけ!お前よく覚えてたな!?」
ダーク・ウルフの推理と台パンに思わず感服するエルリーク。
先ほどまでの空気と打って変わって、二人の表情には活力が漲っていた。
「ふむ。お主等がやる事は定まったようじゃの」
黙って聞いていた永久の闇 (トワノヤミ)はそういうとコンコンと杖を突く。
それを聞いたダーク・ウルフとエルリークは力強く頷いた。
「そうと決まればカイザーはワシが見守ろう。お主等はやるべき事を成せ」
「悪ィな爺さん!エルリーク、あの子を探すぞ。善は急げだ」
「合点!退院してねぇといいけどナー!」
永久の闇 (トワノヤミ)に対し力強く返事をすると二人は荷物を纏め始めた。
「そうじゃ、ウルフよ。コレを持っていけ」
と、言うと永久の闇 (トワノヤミ)はダーク・ウルフに対し何かを差し出した。
それは綺麗な宝石のように輝くビー玉のような物であった。
それを受け取ったダーク・ウルフは訝しみながら口を開く。
「・・・えっと、ナニコレ?」
「お守りの様な物じゃ。餞別として貰っておけ」
「このタイミングで渡すって事はなんか重要なモンなんだろうが・・・どうせアンタの事だ。何か考えがあるんだろ?」
「そいつぁ秘密たい!」
「こすかぁ!」
永久の闇 (トワノヤミ)はダーク・ウルフの疑問をはぐらかす。
「んな下らねぇ事やってる場合じゃねぇんだわ。とりあえず貰っとくぜ!じゃあな爺さん!」
そういうとダーク・ウルフはズボンのポケットに雑にビー玉(仮)を突っ込む。
これが何なのか気になる所ではあったが詮索するだけ無駄なようだ。
かくして、ダーク・ウルフとエルリークは自身の荷物を纏めると駆け足で病室を後にする。
病院内で走り回るのはあまり好ましくないが今の二人はそれ所ではなかった。
「さて・・・」
そんな慌ただしい二人を見送った永久の闇 (トワノヤミ)は一言呟くとインフェルノカイザーの枕元に立つ。
「少し荒療治じゃがさっさと起きてもらうぞ。世界がヤバイからの・・・」
そう言うと永久の闇 (トワノヤミ)は静かに闇のオーラを身体に纏った。




