現状況を整理する回
光の連邦軍によるヘル・イン・ザ・ダークネス侵略戦争及び、ダークネス・ダーク・タワーでの死闘から3週間が過ぎようとしていた。
歴史に名を遺す大戦は終結し、新たなる時代へ向け世界は変革して行く。
闇の世界、ヴァリアヘイム大陸を統べる魔皇帝「アンドレイ・グ・リーンナイト」
光の世界、アルスヘイム大陸を統べる最高指導者「アンドロメダ」
両者は協議の末、和睦を合意。緊張状態にあった両陣営は共存への道を選んだ。
和睦に伴い、光と闇の代表者による暫定政権が樹立。暫定政府を立ち上げた。
これにより平和への道が開け、希望ある未来が約束された・・・かに思えた。
しかし、世界はそう簡単ではない。
先の光の連邦軍によるヘル・イン・ザ・ダークネス襲撃事件は双方に大きな爪痕を残した。
事件以降両勢力の溝は深まり、新たに共存関係が結ばれた所でその溝が埋まる訳ではない。
差別、宗教、対立、価値観の違い、パッドvsキーマウ論争、コンテンツを衰退に追い込む転売ヤーの横行。
これらは長い年月をかけて双方が歩み寄る事で初めて解決する事象。まぁ転売ヤーは死んだ方が良いか。
変わり行く世界の中に生きる人々もまた、変革を余儀なくされていた。
変革の中で、光の世界を実質的に支配していた光の連邦軍こと「天上天下唯我独尊戦国無双連邦」は解体された。
創設者であるポラリスは侵略戦争の中でMIA(作戦行動中行方不明)。
そして構成員である十二幹部が壊滅した事を受け、なし崩し的に組織体制は崩壊。
所属していた兵士達は最高指導者アンドロメダの元へ帰属した。
だが、その中には闇の勢力との和睦に反発する者達が存在していた。
彼らは「ポラリス派」と呼ばれ、最高指導者のアンドロメダよりも光の連邦軍の創設者であるポラリスに心酔していたのだ。
ポラリス派の者達は闇との共存を拒絶。ポラリスが生きている事を信じ、アンドロメダから離反。
世界各地に散らばり潜伏しつつ光の連邦軍の再興を企て、各地で小規模な諍いを起こす。
暫定政府はポラリス派との衝突を避け、話し合いで解決しようと試みているが難航していた。
そして、最大の脅威はポラリス派だけではない。
ダークネス・ダーク・タワーの戦いにおいてその正体を現した災厄、タケシだ。
インフェルノカイザー一行との戦いの際、シャイニングカイザーの身体を乗っ取り、タケシはその姿を消した。
野放しにしておけばやがて世界を滅ぼす脅威となりえる存在だが、同時にその存在は世界に混乱を齎す。
そう考えた暫定政府は世間には公開せず水面下で捜索するも、その消息は未だ掴めていなかった。
大きな戦いは終わったが世界は未だ混乱の中にあった。
そこで、事態を重く見た政府は世界情勢安全保障機構「インターセクト」を発足させた。
光と闇、それぞれの陣営の選りすぐりの人材を選抜し発足されたこの組織は世界に蔓延る争いの火種を刈り取る事を目的とし立ち上げられた。
被害地からの通報を受け次第、対応できるメンバーが現地に赴き、武力介入を行う。
そして争いの鎮圧、騒ぎを起こす人間の逮捕、襲撃地への支援をするのだ。
さらに、タケシの捜索も主導し、一刻も早く厄災の根源を見つけ出す事に力を尽くしていた。
そんな激動の世の中にて、ダーク・ウルフもインターセクトの一員として日々慌ただしく活動していた・・・。
「・・・以上がトアルー村襲撃の件の報告だ」
ここは世界情勢安全保障機構「インターセクト」ヘル・イン・ザ・ダークネス本部。
闇の宮殿内の空き部屋に新たに併設されたこの部署にてメンバー達は会議や情報共有を日々行っている。
トアルー村での一件を片付けたダーク・ウルフはヘル・イン・ザ・ダークネスに戻り、資料を纏め、このように複数の人間に対し任務達成の報告をしていた。パワポで。
「ご苦労だったなァウルフ。一人での初任務にしては上出来じゃねーか?」
ダーク・ウルフに労いの声を掛ける茶髪の中年。
ヘル・イン・ザ・ダークネスが誇る四蜃が一人、マーベリクだ。
「へっ!朝飯前だっての!」
満更でもない様子のダーク・ウルフは軽い口調で述べる。
「流石はこれまで十二幹部との死闘を繰り広げていただけの事はある・・・。子供だと思っていたが大したものだ・・・」
同席するモブの戦略家のおっさんも驚いた様子で賞賛する。
「しっかし・・・身体の中から木を生やすとはなァ。口封じなんだろうがやりすぎだ」
一転してマーベリクは所感を述べる。
ポラリス派のバックに着いている者が口封じの為に兵士達に仕掛けたものだという事は明らかだ。
「ウルフ様が捕らえた兵士達の内、既に4名が同じように尋問中に身体の中から木が生えて絶命したと報告が上がっています。彼等から情報を聞き出す事は難しいでしょう・・・」
銀髪の男が礼儀正しい口調で意見を述べる。
コイツは暗翼空挺部隊のリーダーを務める男、バシリア。
暗翼空挺部隊代表としてバシリアもこのようにインターセクトに所属していた。
「ああ、バシリアさん。俺もそう思う。でも・・・俺はこの件で一つ確信した事があるんだ」
ダーク・ウルフはバシリアの意見に賛同すると続ける。
「人の身体の中から木を生やす・・・こんな非人道的な事を平気でやるヤツなんて一人しかいねぇ・・・!」
「以前話にありました・・・”タケシ”という人物ですね?」
「ああ・・・!」
バシリアが上げた人物に力強く頷くダーク・ウルフ。
そう、ダーク・ウルフはポラリス派を裏から操っているのはかの宿敵、タケシであると断定していた。
「ヤツは”ネイチャーオーラ”という自然を支配するオーラを操っていた。それにアイツは性格が最悪であると同時に計算高いヤツだ。自分に繋がりそうな情報に反応して口封じするように仕組んでいても不思議じゃねぇ・・・」
ダーク・ウルフはタケシとの戦いを下に自身の見解を述べる。
タケシの性格の悪さと狡猾さはダークネス・ダーク・タワーでの戦いで痛い程痛感していた。
このような非道な証拠隠滅。タケシ以外に行う者がいるだろうか?いや、居ない(反語)
故に一種の信用とも言える程にダーク・ウルフはタケシを疑っていた。
「ウルフの考えは分かった。が、確証はねぇ。今の所は可能性の一つとして留意するに止め、別の可能性がある事も視野にいれねぇとな」
マーベリクはダーク・ウルフの発言を聞いた上で冷静に判断する。
「ま、実際に戦ったお前の言葉以上の情報がねぇからこの説が一番有力だろうがなァ~」
一転してマーベリクはダーク・ウルフに軽い口調で返した。
「だがタケシなる者は何故このような面倒な事を?ポラリス派の残党を扇動して何をしようとしているのだ?」
黙って聞いていた大臣の一人が疑問を漏らす。
「これは俺の予想だが・・・」
ダーク・ウルフは大臣の言葉に自身の考えを述べ始めた。
「タケシは土壇場で精神を切り離し、別の身体に乗り移った。その後は逃げるように退散して行ったんだがこうも言っていた。”身体が馴染むまで一ヶ月程掛かる”とな・・・」
「つまり・・・タケシという人物は本調子でない為ポラリス派の方々を操り、表舞台に立つことなく何かを探している・・・という事でしょうか・・・」
バシリアはダーク・ウルフの発言を下にそう考察し、ダーク・ウルフはコクリと頷く。
「何を探しているのかは不明だしもしかしたら違うかもしれない。でもこの仮説が合ってればタケシを探し出して対処することでポラリス派の連中の動きも止まるはずだぜ」
ダーク・ウルフはここまでの情報と自論を元にそう結論付けた。
「仮説通りタケシって野郎が黒幕だとしてもそこにつながる手がかりが無い以上、手が出せないのが現状だなァ。望みは薄いが尋問班からの吉報を待つしかねぇなァ・・・」
「ええ。光側本部にも今回の件を共有して情報を募りましょう。何か情報を掴めてると良いですが・・・」
ダーク・ウルフの自論を聞いたマーベリクとバシリアは今後の行動方針を話し合う。
その他の大臣や書記官達も書類を片手にあーだのこーだの語り始めた。
「っと、ウルフ。今日は疲れただろ?早めに上がっていいぜ」
そんな中、マーベリクが突如としてダーク・ウルフにそう告げる。
「え?でもよぉ・・・」
「後の面倒事は大人達にまかせとけって!それに行きたい所あンだろ?」
「マーベリク・・・!」
マーベリクはダーク・ウルフを労うように早上がりを促す。
上司公認の早退指示には流石にテンションが上がらざるを得ない。
「分かった!助かるぜマーベリク!」
明るい表情でそう言うとダーク・ウルフは広げてる書類などをそそくさと纏め速足で会議室を後にした。
「・・・ウルフ様、最近頑張っておられますね」
ダーク・ウルフが会議室から退出したのを確認したバシリアはマーベリクに語り掛ける。
それに対してマーベリクもそうだなと言わんばかりの表情で頷いた。
「まぁ、アイツ等はこれまでの戦いでいろいろ経験してきたからなァ。解決したいって気持ちは人一倍あるんだろうよ」
マーベリクはダーク・ウルフがこれまで幾度となく光の連邦軍と戦ってきた事を知っている。
十二幹部との戦闘や先の侵略戦争、そしてダークネス・ダーク・タワーでの戦い・・・。
それらは正に戦いの最前線と言っても過言ではない。
「それに・・・”アイツ”があんな事になっちまったからな・・・」
「ええ・・・。辛いはずなのに弱音を見せない姿勢、立派です。ですが少し不安でもあります・・・」
「その分、俺達大人がサポートしてやんねェとなァ!」
「そうですね・・・」
マーベリクとバシリアは軽い雑談を終えると仕事を再開し始めた。
ダーク・ウルフが持ち帰って来た情報を活かし、一日でも早く世界を平和にする事。
それはインターセクトに所属する者達の責務だ。その為に所属するメンバー達は日夜働く。
そんな現場を一足先に離れたダーク・ウルフが訪れたのは病院であった。
「マーベリクのおかげで今日は随分早く来れたな」
時刻は夕方5時過ぎ。
最近は夜7時過ぎに帰っているダーク・ウルフにとって久しぶりの自由時間だ。
そんな事を考えながらダーク・ウルフはお目当ての病室の扉を流れ作業のようにノックするとガラっと開ける。
「お、ウルフか!今日は早いじゃねぇか」
「エルリークか。お疲れ」
病室内にすでに居た地黒でスキンヘッドの大男がダーク・ウルフを出迎える。
砂漠のドラゴンを自称する頼もしい仲間、エルリークだ。
軽い挨拶を交わし、室内のベッドに赴いたダーク・ウルフは呟く。
「今日も・・・起きてないのか・・・」
そこには昏睡状態と化したインフェルノカイザーが深く目を瞑ったまま床に臥せていた。




