燻り続ける災禍の炎
「よし。コイツで最後だな」
トアル―村でのポラリス派の暴動を治めたダーク・ウルフは兵士達を縄で緊縛し終えていた。
”元”光の連邦軍であるポラリス派の兵士達は後に留置施設へ押送される手筈となっている。
そこでは様々な取り調べが行われ、場合によっては刑務作業に回される可能性も視野なのだ。
「ったく、戦争は終わったってのにコイツ等はいつまでこんな事やってんだか・・・」
ダーク・ウルフはため息交じりに呟く。
光と闇の戦争が終わり、平和が訪れるかと思っていたが現実はそう簡単ではない。
光の連邦軍宰相であったポラリスのカリスマ性は数多の人間を魅了した。
だがその真意は歪んで解釈され、今もなおこうして争いの火種が燻っていた。
<フンッ!こんな奴等に慈悲なんていらねぇだろ?どうせ対話なんて出来やしねぇよ>
世界の行く末を憂うダーク・ウルフに対し、ダルクは冷笑しながら語り掛ける。
その姿は先ほど兵士達を蹴散らした本来の巨大な姿ではなく、小さな子犬の様な姿であった。
「お前なぁ・・・。気持ちは分かるけどそんな考えじゃ何も解決しねぇだろ?」
<んな事知るかよ。こうして分かり合えていないのが事実だろ?お前のやってる事自体ムダな事なんじゃねぇのかァ?>
「あー!うっせぇうっせぇ!」
ピャッ
言い返せなかったダーク・ウルフは臭ぇ口塞げや限界ですと言わんばかりに左目に力を籠める。
すると瞬く間にダルクは左目の魔眼の中へ吸収され、その姿を消した。
「・・・んな事は俺だって分かってんだよ・・・」
そしてダーク・ウルフは歯を食いしばり呟く。
そう、ダーク・ウルフも今の現状を好転させる為にはもっと根本的な部分を解決しないと意味がないと分かっていた。
しかし物事はそう簡単にはいかない。世界の前にはダーク・ウルフは只の歯車の一つでしかないのだ。
(カイザー・・・。お前ならこんな時、どうする?)
歯痒い想いを胸に、ダーク・ウルフは友の名を思い浮かべた。
「あなたのおかげでこの村は救われました・・・。なんとお礼をすれば良いか・・・」
そんなダーク・ウルフの元へ十数人程の村人達が感謝の言葉と共にぞろぞろと現れる。
襲撃に遭った村人達は所々ケガをしているようだ。
「え?・・・き、気にすんなって!アンタ達の通報が早かったから間に合った。おかげでコイツ等捕まえれたしお互い様だぜ」
驚いたダーク・ウルフだったが次の瞬間には爽やかに返答した。
「お兄ちゃん!これあげる!」
そんなダーク・ウルフの下に麻生袋を持った一人の子供が人だかりの後から出てきた。
「お!お前はさっきの!これは・・・?」
「この村で採れたフルーツでごぜぇます。少ないですが感謝の印でさぁ。是非お召し上がりくだせぇ・・・」
「マジか!サンキュー!!」
子供の正体は先ほどポラリス派の兵士の前に立ちはだかっていた子供であった。
そしてその子供の保護者もダーク・ウルフの前にやってくると感謝の言葉を述べた。
「グ・・・調子にのるなよ小僧・・・。何がインターセクトだ・・・。今にポラリス様は我々の下に戻られる。その時が貴様等の最期だ・・・!」
気を失っていた兵士の一人が意識を取り戻し、唐突に呟く。
だが身体を硬く縛られているため抵抗できずにいた。
「まだ諦めてないのか?まぁいいや。俺も聞きたい事あったしな」
ダーク・ウルフはそう言うと兵士の前に立ち、ギロリと睨みつける。
「お前等を指示している奴は誰だ?」
「何・・・?」
「光の連邦軍が解体されてから3週間程度しか経ってないってのに、ここ2週間でお前らの動きが急に活発になっただろ?それってお前等を纏めて指揮してる奴がいるんじゃないか?」
「・・・」
ダーク・ウルフの質問に対し、兵士は目を逸らし黙秘する。
反応からしてこの説は合ってる可能性はある。だがもう一押し確証が欲しい。
そう考えるダーク・ウルフは更に質問を続ける。
「そもそもポラリスが生きてるだなんて誰から聞いたんだ?俺はダークネス・ダーク・タワー(以下DDT)での戦いでポラリスの野郎がこの世界の未来の為に命を投げ出したの瞬間を見てたんだが・・・」
「し、信じられるか・・・!貴様達の様な下賤で矮小な闇の世界の人間のクズの主張など!」
(食いついたな・・・。あと言い過ぎやろ・・・)
暴言が気になりつつもダーク・ウルフはこの兵士に質問すると同時に探りを入れていた。
そしてポラリスと言う名に反応した事を確認すると更に続ける。
「別に信じなくてもいいぜ?だがアイツが生きてるって主張には何かの裏付けがあるんだろ?まさかポラリスの名を騙って賊みたいな事やってんじゃねぇよな?」
「貴様ァ・・・我々を侮辱するか!?我々には偉大なるポラリス様の信託が聞こえる御仁がついているのだ!!我々の行いはポラリス様の意志に他ならない!!」
「ポラリスの信託だぁ?」
支離滅裂な事を言う兵士にダーク・ウルフは訝しむ。
(なるほど。やっぱりコイツ等のバックには黒幕がいるのは確定みてぇだな・・・)
勘の良いガキのダーク・ウルフはそう考察する。
ポラリス派を纏める何者かが付いている事は間違いないだろう。
(光の連邦軍は解体された。同時に、十二幹部も壊滅した事により指揮系統は機能していないはずだ。だが黒幕は散り散りになった残党をほんの数週間足らずでまとめ上げ、信用を得ているってコトか・・・)
ダーク・ウルフは目を細めながらし思考を巡らせる。
本来組織という物は共通の目的を持った者達が目的達成の為に協力し合う体制だ。
だが所属する者達を管理する者が居なければその組織は調和が乱れ、やがて崩壊するだろう。
創設者であり、リーダーであるポラリスが不在である以上光の連邦軍の残党達も本来はそうなるはずだ。
しかしポラリス派と呼ばれる者達は崩壊するどころか組織的に動き、世界各地で破壊活動や襲撃を行っている。
現状を鑑みるとポラリス派の背後に潜む黒幕は大きな影響力を持っている事は明白だ。
(連邦軍の残党にコンタクトを取れて、ポラリスの事をよく知っていて、強い影響力を持つ者・・・)
今ある状況を頼りにダーク・ウルフは理論の中に潜り、その正体を探る。
(・・・導き出される答えは・・・アイツしかいねぇ・・・!)
考察の末閃き、アナグラムを解くようにダーク・ウルフは一人の男に辿り着く。
目を開き、頭部に巻いている三角巾の結び目をギュっと締める。脳細胞もトップギアだぜ。
確証こそないものの、ダーク・ウルフには絶対的な自信があった。
「・・・そいつは是非会って話してみたいモンだな。俺にも合わせてくれよ。返答によっては開放してやるぜ?」
「何・・・?」
「きっと高貴なヤツなんだろうなぁ?小奇麗な白い装束とサラサラな金色の髪を持ってるんじゃないか?」
ポラリス派のバックに居る人物に対し、やけに具体的な特徴を言うダーク・ウルフ。
その特徴は言うまでもなくシャイニング・カイザーの特徴だ。
ダーク・ウルフには一つの仮説があった。それはポラリス派を操っているのはタケシなのではないかと言う説だ。
タケシがDDTでの戦いでシャイニングカイザーの身体を乗っ取り姿を消した事は記憶に新しいだろう。
そしてシャイニングカイザーは過去に光の連邦軍に従事していた過去を持つ。
そんな過去を持つ見た目と、長い間ポラリスの腹心として活動していたタケシの知見があればポラリスと深い繋がりがあるという事を示すには十分だろう。
そして何より、完全復活するまでの間身動きが取れない今のタケシにとって、ポラリス派の残党達は都合のいい駒にもできる。
「・・・ッ!?!!まさかあの方の事を・・・」
ダーク・ウルフの発言に対し、兵士は思わず取り乱す。
だが次の瞬間、兵士の様子が一変した。
「あがッ!?あぁあ!!!?」
目を大きく見開き、大声と共に突如苦しみだす兵士。
縛られた身体で必死にもがき、何かから逃れようとしているようだ。
「マズ・・・い・・・ィ!!!」
「な、なんだ!?」
ダーク・ウルフは困惑するしかなかった。
一方で兵士の顔色はどんどん悪くなり、目は酷く血走っていた。
そして兵士の体からじんわりと緑色の光が放たれる。
「ア゛ァァ゛・・・」
「ちょ!おまっ!?」
ダーク・ウルフは慌てて兵士に駆け寄る。
だがその時だった・・・!
ズボッ!
ダーク・ウルフが駆け寄ったのも束の間、兵士の口が裂ける。
同時に鈍い音と共に木が口の中から生えたではないか。
言うまでもなく、兵士はそのまま絶命した。
「ッ・・・!この能力・・・やっぱり・・・!!」
そう呟いたダーク・ウルフは怒りとも驚愕ともとれる表情で見ているしかなかった。




