表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
闇空  作者: 闇の使徒インフェルノカイザー
第十七章 ~聳え立つ巨塔。解き放たれるは救済か破滅か~
495/497

解き放たれた災厄

「今日はサ、もう止めよう!解散!」


タケシは手のひらを前に出し言う。

予想外の言葉を受けたインフェルノカイザー達は顔を顰める。


「テメェ何言ってんだ・・・!?」


「実はさァ・・・この体とオレっちの精神がまだ馴染んでないんだよねェ。できれば安静にしたいワケよ」


タケシはため息と共にそう語る。

体と精神が融合したばかりで馴染んでいないと言うタケシにとって今は不要な戦闘を避けたかった。

そう、無理もない。シャイニングカイザーの体乗っ取った事でタケシが今まで培ってきた力や能力はほとんど弱体化されてしまっていた。

さらに、身体の感覚がまだ同調していないため本来のポテンシャルを発揮する事が出来ないのだ。そう、無理もない・・・。


「ほんで、アンタ達はボロボロの満身創痍。戦った所でお互いに損するだけっしょ?」


一方で、インフェルノカイザー達もダークネス・ダーク・タワーでの激戦で限界を迎えていた。

こんな状態で戦っても満足に動けないし、最悪の場合新たな犠牲者が出てしまうかもしれない。

であれば、互いに戦うメリットは無い。って事でタケシは休戦を持ちかけた。


「図に乗るな・・・!本調子で無いなら好都合だ・・・!!お前をブッ倒してシャインを返してもらう!!」


ズァッ!!


タケシの申し出を却下し、インフェルノカイザーは更にギアを上げ、闇のオーラを放出する。

だがその目の前に、ダーク・ウルフが飛び出した。


「待て!カイザー!コイツを倒してもシャインの人格が戻るとは限らねぇぞ!」


「っ!」


勘の良いガキであるダーク・ウルフは懸念していた。

この状態のタケシを倒しても果たしてシャイニングカイザーの人格が戻るのかという事を。

最悪の場合、永遠にシャイニングカイザーの意識が戻らずそのまま死に至るかもしれない。

そんなやり取りをする二人をタケシはニヤニヤしながら静かに見ていた。


「そ、そうやぞカイザー!俺馬鹿だから分かんねぇけどよォ、まずはタケシの野郎の精神を良い感じに切り離す必要があるんじゃねぇのか!?」


馬鹿のエルリークも焦った様子でインフェルノカイザーを止めに入る。

このまま何の対策もせずに戦えば取り返しのつかない事になる事は決定的に明らか。

そうなれば大いなる悪夢がその身を襲い、やがて最悪のシナリオが今後の人生に付きまとうだろう。

タケシの行動はシャイニンカイザーの身体を乗っ取ったことで生き残ったと同時に、人質を取っているような状況だった。


(それに・・・今のカイザーがこれ以上闇のオーラを解放したらあの時みてぇに暴走しちまうかもしれねぇ・・・!)


同時に、ダーク・ウルフはライジングボルトシティでの戦いの事を思い出していた。

かつて、怒りに支配されたインフェルノカイザーは限界を超えて闇のオーラを解き放った。

暴走し、破壊の化身と化したインフェルノカイザーだったが、その際はなんとか大事に至らずに済んだ。


(もし今あの時と同じ事になったら今度はカイザーが世界を破壊する災厄になっちまう・・・!それだけは絶対にさせねぇ。させる訳にはいかねぇ!)


今のインフェルノカイザーは完全覚醒-パーフェクトバースト-を発動した反動で闇のオーラが扱えない状態だ。

そんな状態で無理やりに闇のオーラをひねり出そうものならインフェルノカイザーは身も心も闇に飲まれるだろう。

その果てに訪れるのは究極の闇。タケシが世界を破壊する前にインフェルノカイザーによって滅亡と言う名の悪夢が世界を喰らうだろう。

そうなるともう後戻りはできない。闇に堕ちた者は人の道を踏み外す。悪夢を見続けるしかないんだ・・・。


「フヒヒ!君たちの言うように今のオレっちを倒してもシャイン君の人格が戻るかは分かんないよ~ん。ってコトでさ、無駄な争いは止めようゼ!」


「・・・タケシ、お前は一つ勘違いしている・・・」


「あん?」


休戦を推すタケシに対し、インフェルノカイザーは静かに語りだした。


「お前の言う通り、俺達にとってシャインの身体を傷つけるのは不本意だ。だがな、お前を拘束するだけならその限りじゃねぇぞ・・・!」


ダーク・ウルフとエルリークの言葉を受けたインフェルノカイザーは頭を冷やし、冷静になっていた。

先程までの破棄衝動は収まり、精神は秩序が保たれていた。視線と言葉には絶対的な自信と覚悟が込められている。


「そうか!コイツとっ捕まえて牢屋にぶち込んどけば分離させる方法をゆっくり探れるって事やんな!お前頭いいな!!」


馬鹿のエルリークはインフェルノカイザーの考えを称賛する。

であればやる事は簡単だ。三人がかりでタケシを取り押さえ、逃げられないように縛り上げるのみ。

ダーク・ウルフもニヤリと笑みを浮かべるとタケシを拘束せんと戦闘態勢を取った。


「トホホ・・・か弱いオレっち相手に三人がかりだなんて非道いなぁ。人の心とかないんか?」


「御託はここまでだタケシ。お前を拘束する!覚悟の準備をしておくんだな・・・!!」


インフェルノカイザーは最後の力を以てタケシを取り押さえようと構える。


「ハァ・・・。しゃーない。”奥の手”使っちゃうか~!」


タケシは深くため息をつくと右手にネイチャーオーラを集め始めた。

それを見たインフェルノカイザー達一同は警戒するとタケシの攻勢に備える。


ニョキィ・・・


「何だ・・・?」


インフェルノカイザー達の警戒とは裏腹に、タケシの右手の平に一枚の葉っぱが生えた。

それは赤色にじんわりと発光する葉。タケシはこの葉っぱを使って一体何を仕掛けてくると言うのか・・・。


「コレは”記憶の葉”。詳しい事は尺が無いから端折るケド、この中にはとある記憶が内包されててねェ・・・」


タケシはニヤリと笑うと続ける。


「インフェルノカイザー君・・・君の記憶や!」


ドン!


「な!?」


インフェルノカイザーは思わず動揺し取り乱した。

しかしダーク・ウルフは冷静に忠告する。


「惑わされるなよカイザー。苦し紛れの嘘に決まってんだろ?」


タケシの事を信じていないダーク・ウルフはバッサリと言い捨てた。

言葉や仕草さえ罠-ワナ-。鵜呑みにしてはダメダメ・・・。


「この期に及んでしょーもない事言ってんなァ?ヤっちまおうぜカイザー!ウルフ!」


エルリークもタケシの言葉を世迷言として捉えていた。

よく見て、考えて、それから踏み出すのよと言わんばかりに一歩踏み出す。

だがタケシは余裕の表情で口を開いた。


「にゅふふ・・・。インフェルノカイザー君は思い当たる節がアルんじゃないカナ?」


「な、何を言ってやがる・・・」


「君の父親が死んだ日・・・君は何をしてたんだっけ~??」


「っ!!」


インフェルノカイザーはタケシの質問に対し目を見開き、言葉を失ってしまう。

それはまるで心当たりがあるかのような反応だ。タケシはその反応を楽しむかのように笑う。


「これは折衷案だよ。オレっちを見逃すんならこれを返してあげるよ。ホラ、気になってきたんじゃないの~?記憶の葉の中身がサ~?」


「くっ・・・!テメェ・・・」


(なんだ?カイザーの奴・・・タケシが言う事に心当たりがあるのか?)


ダーク・ウルフはインフェルノカイザーの様子がおかしい事に違和感を覚えた。

正直なところ、タケシが本当にインフェルノカイザーの記憶を持っているとは思えない。

しかし当の本人のインフェルノカイザーは目を泳がせ動揺している様子だ。

その様子はダーク・ウルフだけでなくエルリーク、そして相対するタケシにも伝わっていた。


「ほな、交渉整理って事で!失礼しま~す」


タケシは勝ち誇ったような表情で言うと記憶の葉をその場に落とす。

そして振り返ると逃げるようにそそくさと歩みだした。


「ッ!おい待てェ!失礼するんじゃねェ!!エルリーク!」


「おうよ!」


タケシを逃がす訳にはいかない。ダーク・ウルフは強く思うとエルリークに号令を出す。

エルリークは瞬時に反応すると二人は最後の力を振り絞り、タケシに飛び掛かった!


ガツン!


「ぐぁ!?」


鈍い音と共にダーク・ウルフとエルリークは何かに激突し、阻まれる。


「これは・・・シャインの技・・?!?」


二人を阻んだのはタケシを覆うように展開する半透明の球体だった。

紛れもなくそれはシャイニンカイザーの技の一つ「プロテクト・スフィア」だ。

指定した座標に球状のシールドを設置するその技だが、この局面で発動した理由は一つしかなかった。


「ちっ、誰だよ人が帰ろうとしてる時に絡んでくるバカはよぉ〜!君達に関しては格付け終わってんだから黙ってなよ」


タケシは気だるそうに言うと首だけで振り向き、ギロリと睨みつける。


「コイツまさか・・・シャインの技を使えるのか・・・!?」


「そうだなァ~・・・一ヶ月!」


驚くダーク・ウルフなど気にも留めず、タケシは右手の人差し指を天に掲げ、言う。


「オレっちの精神とこの身体が馴染むまで一ヶ月ぐらいかかると思うからその間、時間をあげるよ!」


「何だと・・・!?」


「その間にオレっちに対しどう対処するか頑張って考えるんだね。次会うの楽しみにしてっから!」


タケシは一方的にそう言うと体が光に包まれる。

光魔法・ライトニング・ワープだ。


「チャオ~♪」


「ま、待て!!」


インフェルノカイザーがそう言った頃にはタケシの姿は無かった。

すなわち、タケシを取り逃したという事を意味していた。


「・・・クソがァ!!」


ドゴォ!


エルリークによる激怒の拳を受けたバリアはビスケットの如く粉々に砕け散る。

三人は災厄の火種であるタケシを取り逃した事を悔やみ、沈黙が訪れた。

自分自身の不甲斐なさ、迷い、弱さ。それぞれの思いが重くのしかかり、ただただ現実を受け止める他なかった。



「すまない。二人とも・・・」


沈黙を破り、口を開いたのはインフェルノカイザーだった。

謝罪から入ったインフェルノカイザーに対しダーク・ウルフとエルリークはハッとして顔を見合わせる。


「・・・まァ、しゃーないな・・・。こうなっちまったら今後タケシがどう動くか予想して対策を考えるしかねぇだろなァ・・・」


エルリークは深く息を吐くと緊張が途切れたかのように言う。


「カイザー、お前・・・記憶がないのか?」


そんな中、ダーク・ウルフはインフェルノカイザーに問いかける。

タケシが唐突に用いた”記憶の葉”なるモノにインフェルノカイザーが妙な反応をしていた事をダーク・ウルフは見逃さなかった。


「・・・二人には言っておくべきなのかもしれねぇな・・・」


そう呟くとインフェルノカイザーは息を整え、少し間をおいてから口を開いた。


「・・・実はあの日・・・光の連邦軍による侵略があった”あの日”の事を思い出せないんだ・・・」


「それってお前の親父さんが殺されたっつー日の事か・・・?」


インフェルノカイザーの満を持した告白に対しエルリークは確認するかのように尋ねる。

その言葉に頷いたインフェルノカイザーは続ける。


「そうだ。・・・あの日俺は何をやっていたかも、ヘル・イン・ザ・ダークネスがどうなっていたかも・・・思い出そうとすると思考が働かなくなるんだ。まるでその日だけポッカリと抜け落ちたみてぇにな・・・」


「カイザー・・・。何でその事を相談しなかったんだよ?」


「すまなかったウルフ。俺はこの事から目を背けたかったのかもしれねぇ。父上を殺した犯人を突き止めて仇を討てば思い出せるんじゃないかって、全部解決するんじゃないかって・・・そう、思ってた・・・」


父親を殺めた犯人を見つけ出し、仇を討つ。

それはインフェルノカイザーが戦いに身を投じたきっかけであり、自身に課していた使命だ。

だがその事を盾に、インフェルノカイザーは”あの日”の記憶が無い事から目を背け、逃げ続けていた。

その事実をこの局面で突きつけられたが故に、タケシの言葉に惑わされ、逃げる隙を与えてしまったと言ってもいいだろう。

最初期から共に肩を並べて戦ってくれているダーク・ウルフとエルリークに対し申し訳ないと思う気持ちが込み上げる。


「でも本当は真実を知る事が怖かったんだ。だが今こそ、向き合う時なのかも・・・な・・・」


そう言うとインフェルノカイザーは目線を移す。

視線の先にはタケシが去り際に残した”記憶の葉”がポツンと放置されていた。

インフェルノカイザーは”記憶の葉”を回収する為、歩を進め始めた。


「ま、待てカイザー!罠かもしれねぇぞ?迂闊に触れるのは危険があぶねぇ!」


インフェルノカイザーの肩を掴み、止めに入るダーク・ウルフ。

ダーク・ウルフの言う通り、そもそも記憶など内包されていない可能性も十分考えられる。


「それでも・・・!」


ダーク・ウルフの静止を振り切るとインフェルノカイザーは”記憶の葉”へ手を伸ばした。


「逃げる訳にはいかねぇんだ・・・!」


”記憶の葉”を拾い上げるインフェルノカイザー。

その瞬間、”記憶の葉”が真っ赤に輝いたかと思うとシュワっと消滅する。


「ハッ!?」


刹那、インフェルノカイザーの脳内に記憶と言う名の情報が一気に流れ込む。

そしてそのまま、インフェルノカイザーはバタりと俯けに倒れてしまった。


「え!?カ、カイザー!?」


「お、おい!しっかりしろ!!」


突如として意識を失い、倒れこんだインフェルノカイザーに慌てて声をかけるダーク・ウルフとエルリーク。

だがその叫びも空しく、インフェルノカイザーの意識は戻らなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ