繁忙期を乗り越えし俺達(ビジネスマン)
パチャ・・・パチャ・・・
降り注ぐ雨の中、水溜まりを踏みしめる音が響き渡る。
その正体はもちろん・・・
「タケシ・・・ィ!」
ポラリスは声をひねり出し、その名を呼ぶ。
巨大な雷に飲み込まれ、無様に這いつくばる一同をタケシはニヤニヤしながら見下ろしていた。
「いや~久々にホンキ出したわ~」
タケシは相変わらず軽い口調で言い捨てた。
「嘘だろ・・・!?俺のビースト拳が効いてねぇってのかよ・・・!!」
そんなタケシを見たダーク・ウルフは絶望した表情で呟く。
先程ダーク・ウルフの渾身の必殺技を受けたというのにタケシはケロっとしていた。
「いや?そうでもないよ。見なよこの身体を!クッソ痛かったわ!」
タケシはそう言うと胸部に受けた傷を見せる。
ダーク・ウルフの爪撃によりガッツリやられた胸部は痛々しく切り裂かれ、大量の血が流れ落ちていた。
さらに瞬間的に受けた衝撃により常人であれば肋骨にもダメージが入っているはずだ。
なのにタケシはいつもと変わらず涼しい顔をしていた。
「まぁ今回ばかりは相手が悪かったネェ!でもまぁオレっち相手にここまで立ち回れただけでも偉いよ!自慢していいレベルやで!」
「チッ・・・!舐め腐りやがって・・・!」
ダーク・ウルフはそう言うしかなかった。
圧倒的な実力差。それは戦略やチームプレイで覆せるものではなかった。
自力の時点でタケシはダーク・ウルフ達を大きく上回っていた。
(タケシ・・・まさかここまでの力を有していたとは・・・!)
何も言わずシャイニングカイザーも想定外の事に動揺していた。
そう、無理もない。落雷という自然現象を行使してくるとは思ってもみなかったからだ。
自然現象に敵意は存在しない。故に反応できず防御できなかったのだ。そう、無理もない・・・。
「う・・・びびび・・・」
「・・・」
同じく落雷を受けたエルリークも仰向けで倒れ、アージョに関しては意識を失っているようだ。
一撃で盤面をひっくり返したタケシだがこれでも全盛期から大きく弱体化していると言う。タケシの本当に強さは底知れない。
「ほな、お楽しみと行こうかナ~」
ヴォン!
タケシはそう言うとネイチャーオーラを身に纏う。
すると降り注いでいた雨が止む。そしてタケシの足元に風が集まり始めた。
「アイツ・・・何を・・・!?」
その様子を見ている事しかできないインフェルノカイザー達。
タケシはフワっと宙に浮くとそのまま上昇していく。
「まさか・・・ヤツは”星の核”を・・・!?」
ポラリスはタケシの狙いに気づいた。
そう、この広間の天井に祀られるように固定されている物体、”星の核”だ。
「にゅふふ・・・この時を待っていたぜェ・・・”星の核”を吸収し・・・オレっちは完全復活する・・・!長かった・・・!!」
”星の核”の眼前まできたタケシは悲願の言葉を述べる。
そして地に伏せるインフェルノカイザー達を見下ろすと上機嫌に口を開いた。
「とは言えアンタ等のおかげで久しぶりに楽しめたわ!って事で君たちを殺すのは最後にしてやんよォ!」
そう言い放つとタケシは”星の核”に手をかざす。
「オレっちが完全体になる瞬間を見逃すなよ~?」
ゴアッ!!
刹那、”星の核”から驚天動地のエネルギーがまろび出る。
タケシはそのエネルギーに怯む事無く自身の体に吸収し始めた。
「うっひょーー!!スッゲェパワー!!!」
「な・・・なんじゃありゃァ・・・!」
そんなタケシに対しエルリークは唖然としながら呟いた。
遠目から見てもそのエネルギーの奔流は尋常ではない。
普通の人間であればその身は耐えきれずに崩壊してしまうだろう。
だがタケシは普通の人間ではない・・・。あふれ出るエネルギーをどんどん吸収していく・・・。
「クッ・・・!シャイン!完全覚醒-パーフェクトバースト-はまだダメか!?」
ダーク・ウルフは一縷の望みをシャイニングカイザーに託す。
確かに完全覚醒-パーフェクトバースト-であればタケシを止められるかもしれない。
「・・・ダメです・・・!回復しきっていません・・・!」
だがシャイニングカイザーの返答は絶望であった。
すなわち、現状タケシを止める術はないという事。
一同はタケシが完全体になるその時を指をくわえて見ているしか出来なかった。終わりや。
「インフェルノカイザー・・・」
だがそこにポラリスが一石を投じる。
「指輪を・・・私に貸してくれないか?」
「なに・・・!?」
ポラリスの唐突な提案にインフェルノカイザーは思わず警戒する。
指輪とは言うまでもなくインフェルノカイザーの左指に嵌っている漆黒の指輪、バーストリングの事だ。
元々ポラリスはこの指輪の真の力を引き出すためにインフェルノカイザーを利用し、最後には指輪を奪おうと画策していた。
今は和解したが唐突にその指輪を貸せと言われたらかつてのポラリスの野望が嫌でも脳裏に過った。
「案ずるな。この局面において邪な事はせぬさ。私に策がある。タケシを止める策がな・・・」
「ポラリス・・・分かった」
インフェルノカイザーの不安に対しポラリスは落ち着いた口調で語る。
その口調からはかつての悪意や敵意と言ったモノは感じられなかった。
それを確信したインフェルノカイザーは痺れる指先を何とか操ると指輪を外し、ポラリスへ譲渡した。
「感謝する・・・!」
指輪を受け取ったポラリスはそう呟くと緑色と青色が混ざり合ったオーラをひねり出す。
そう、ポラリスが持つ治癒のオーラだ。それを纏い、ポラリスは立ち上がった。
「星の核のエネルギー美味ェ~!」
ギュォォォ・・・
一方、星の核からエネルギーを貪るタケシは上機嫌だった。
かつて別の世界で『他ヲ消シ去ル者』と呼ばれ、この世界では”破壊を齎す存在”と言い伝えられてきた異端者・・・。
無限にエネルギーを生み出すと言われる星の核だがタケシは物ともせず吸収していた。
ピタッ・・・
「あれ!?」
その時、星の核から輝きが失せ、溢れ出るエネルギーがストップしてしまった。
タケシはまだまだ物足りない様子だ。よもや全てのエネルギーを吸収した訳では無いだろう。
違和感を感じたタケシはチラりと視線を落とした。
「おやおや~?」
その視線の先には相変わらず地面に伏せるインフェルノカイザー達の姿が見える。
だが一人だけ・・・ポラリスのみ二本の脚で立ち、何かをしている姿が見えた。
「はは~ん!?星の核のエネルギーが止まったのはポラリスの爺さんのせいだな~???」
タケシはポラリスを一目見た瞬間そう察した。
「タケシ・・・。貴様の思い通りにはさせん・・・!」
強く握った右拳を突き出し、ポラリスは静かに言う。
その右手の中にはインフェルノカイザーから受け取った指輪が握られていた。
「兄さん、あの方は一体何を・・・?」
そんなポラリスの行動にシャイニングカイザーは疑問を感じ、インフェルノカイザーに問う。
インフェルノカイザーとの指輪のやり取り、そして星の核から発せられるエネルギー放出の停止。
この二人にしか知らない何かがあるのだろうと間の良いガキのシャイニングカイザーは考察していた。
「あの指輪は星の核を制御するための鍵らしい。それがどういう意味かは分からなかったが見ての通り星の核を制御できるんだろう・・・」
少し前、ポラリスと同じ”調和の要”一族のレウィンからインフェルノカイザーは指輪の概要を伝えられた。
その際は星の核を完全に開放し、その力を行使できると聞いたが鍵であるという事は逆にその力を無効化する事もできるのだろう。
現にポラリスは指輪を使う事で星の核の稼働をストップさせている。伏線回収だ。
「死にぞこないの爺さんがイキがっちゃって・・・。せっかく生かしといたのにさぁ~・・・お前さぁ、ひどいよ・・・」
タケシはポラリスを見下しながらやれやれと言わんばかりに言う。
だが次の瞬間、タケシが纏う空気が変わった。
「もう殺すしかなくなっちゃったよ」
ヒュンッ!
刹那、空中に静止していたタケシの姿が消える。
「ッ!!」
ズシャァッ!!
次の瞬間にはポラリスの上半身から大量の血液が噴き出していた。
「バンブー・セイバー・・・」
そう呟くのはタケシ。右手には竹で作られた刀を持っているではないか。
その刀身には朱色の液体が付着している。そう、血液だ・・・!
「ポラリスゥー!」
そして響き渡るインフェルノカイザーの叫び。
そう、この一瞬の間にタケシは竹製の刀を生成し、ポラリスの眼前へ現れると唐竹割のようにポラリスを切り裂いていたのだ。
「・・・ガッ・・・ぁ!?」
思わず片膝を着くポラリス。
その様子をタケシは馬鹿にしたような表情で見下していた。
「かつては光の連邦軍のカリスマとして恐れられていたポラリス様も堕ちたモンだねェ。所詮今のアンタはちょっと生命力が強いだけの何もできない老いぼれってコト!」
もはやタケシを止める者は皆無。ポラリスを見下し、冷笑し、嘲笑し、侮辱するタケシは上機嫌に笑う。
その様子に対し、インフェルノカイザー達は言葉を失い拳を握るしか出来なかった。
「まァ老いぼれたとは言え、その治癒オーラによる耐久力はダリィな?メンドクェけどコイツの生命力全部吸っとか・・・」
タケシは気だるそうに言うとポラリスに対し右腕を伸ばす。
だがその瞬間、ポラリスの左手がタケシを握り潰す勢いで掴みかかった!
「うお!?」
「馬鹿め・・・!まんまと誘い出されてくれたな!」
「何コイツ・・・いい加減しつこいわ。文字数4000字超えてんだっつの」
タケシは塩対応でポラリスの悪あがきをあしらう。
だがそれはポラリスの本当の狙いであった。
「タケシ・・・!貴様の野望は我が命に代えてでも阻止する!!」
ドァッ!!!!
「!?」
その瞬間、ポラリスとタケシは突如として闇のオーラに包まれた・・・!!




