三本の矢
「作戦は以上だ。いくぞお前等・・・!」
エルリーク、アージョとの作戦会議を終え、ダーク・ウルフは手の中でダガー回し、構えると戦いに備える。
視線の先に棒立ちするは「破壊を齎す存在」ことタケシ。
相変わらずニヤニヤした表情で構えるタケシは緊張感の無い口調で言う。
「おや、お話終わったカナ?・・・ぶっちゃけ飽きてきたんやけどもうちょっと付き合ってあげた方がいい?」
タケシの言葉はダーク・ウルフ達の事をまるで脅威として捉えていないと言わんばかりの発言だ。
そう、無理もない。タケシにとってこの戦いは遊び。余興と言っても良いだろう。
その気になればタケシは本気を出し、遊びを終わらせる事も可能なのだろう。
だがタケシはそれをしない。理由は舐めているから。負ける訳がないと確信しているから。
しかし、ダーク・ウルフはその慢心に勝機を見出していた・・・。
「フン!その余裕がいつまで持つかな!?」
ズォッ!
その言葉と同時にダーク・ウルフは魔力を練り上げる。
「闇魔法・ダークネスワールド! ─暗黒が支配する世界の中において前は抗う事など不可能ですから─」
その瞬間
†タケシに闇が訪れた†
「うお!?目が見えへん!暗いよー!怖いよー!!」
一時的に視界を闇に奪われたタケシはわざとらしく動揺して見せる。
そう、タケシにとって視界を奪われたところで特に不都合はない。
理由はタケシにはネイチャーオーラがあるから。これを使えば周囲の状況を感覚的に察知できるのだ。
故の余裕。故のおふざけ。故の慢心なのだ。
「ドラゴン拳!ドラゴニック・グランド・キャニオン!!」
ズゴゴォ!!
そんなタケシに対しハゲの大男エルリークが大声と共にド派手な技を繰り出す。
ドラゴンパワーを宿した岩々が無常にもタケシに襲い掛かった。
「はぁ・・・ハゲのオッサンは馬鹿の一つ覚えやねぇ・・・」
一転してエルリークの技にガッカリしたような発言と共に、タケシはネイチャーオーラをその身に纏う。
「フォートレス・ザ・コットン!」
モサッ!
その言葉と同時にタケシの身体を覆うように濃密な綿が展開した。
ドンガラガッッシャァァアン!!!
けたたましい轟音と共にエルリークが放った岩が綿の塊に着弾する。
だがしかし、濃厚な綿の要塞は降り注ぐ岩を優しく受け止め、その衝撃を無に帰してしまう。
その圧倒的な防御力の前にエルリークの技は完全に無効化されていた。
「オレっちの綿の前にはそんな攻撃無駄だヨ~ン!」
「それはもう見切ったぜ!!」
だがダーク・ウルフは得意げに言うと闇のオーラを右手にチャージ!
そして、狙いを定め解き放つ!
「ヤミノマ・槍!!」
ンビャッ!!
ダーク・ウルフが放ったそれは闇のオーラを細く収束させたヤミノマだった。
言葉通り、その見た目はまるで槍。攻撃範囲こそ狭いが一点に火力を集中させ貫通力に特化させているのだ。
「それだけじゃねぇぜ!受け取れ!ウルフ!」
さらにここまで存在感が無かったアージョがそう叫び、ダーク・ウルフの肩に手を掛ける。
「伝達しろ・・・破壊力のオーラ・・・!」
カタストロォム・・・!
アージョの身体に赤いオーラが纏わる。それは燃え盛る炎を思い起こさせる崩壊の脈動。
この破壊力のオーラは発動する事で攻撃力や力やパワーを増加させる特性を持つ。
そしてオーラは肩を掴まれているダーク・ウルフにも伝播する。
すると破壊力のオーラはダーク・ウルフの身体を包み込み、放出中の”ヤミノマ・槍”にも伝わる。
闇のオーラによる槍は破壊力のオーラと混じり合い、今やその貫通力は常軌を逸した威力を宿していた。
ズドーラッ!!
勢いよく綿の要塞に突き刺さった闇はいとも簡単に貫通してしまった。
「おっほ♪貫通力ヤバくて草ァ!そんなモン喰らったら風通しが良くなるねェ!!」
これには流石のタケシもお気持ちを表明。
しかし相変わらずのふざけた口調だ。それすなわち、タケシ本人は無傷であるという事を意味していた。
「ココだ!アージョ!」
その時、何かを見計らったダーク・ウルフはアージョに合図を出す。
「まかせろ!洞察の心眼・・・<一心集中>・・・!」
ドクン・・・!
刹那、アージョは青いオーラを静かに纏う。それは自身の洞察力を飛躍的に高める洞察のオーラだ。
これを発動したアージョは驚異的な集中力を発揮し、感覚が過敏になり、その眼は隠された真実を見抜く。
今のアージョであればチェリーを取りこぼすことは無いし、ビタ押しすら朝飯前だろう。バレれば出禁も視野。
そんなオーラをアージョがこのタイミングで発動したのには理由があった。
「・・・見えた!」
そう。今のアージョの目には視えていた。
周囲に溶け込み、常人の目には映らなくなったタケシがニヤニヤしながら闊歩している姿が!
「そこだァ!」
シュッ!
威勢よく叫ぶとアージョはタケシがいる場所に向ってピンポン玉のようなボールを投げつけた。
パシャッ!
投げつけられたボールが地面に着弾し破裂すると、ピンク色の液体が周囲に飛散する。
このボールの正体は先ほどダーク・ウルフからこっそりと渡されていたペイントボールだったのだ!
「うっわ!?え、何!?汚っ!!」
「ビンゴ!ウルフの言った通り実態は消えていない!」
アージョは作戦が成功し、思わずガッツポーズ。
飛散した液体は何もない場所に不自然にピンク色の脚を出現させた。
即ち、見えなくなっていたタケシの脚にペイント液が付着した事を意味し、タケシの存在が露になったという事だ。
「え?もしかしてオレっちの事見えてる感じ?意外とやるやん!面白くなって来たんじゃないかぁ!?」
自身の透明化能力を看破された事に対し驚きを隠せないタケシ。
だが裏腹に、タケシは高揚する。まるでこの状況を楽しんでいるかのように。
「無敵ごっこは夢の中だけにしやがれ!」
シャッ!!
完全に見えている訳では無いが脚が見えていれば居場所が分かったも同然であり、攻勢を仕掛ける事もできる。
すぐさま反応したダーク・ウルフはタケシに向って右手に持っていたダガーを投擲した。
「まぁ、”ナチュラル・スキン”を見破った所で君らが勝てるとは限らないんやけどね~」
一転してダーク・ウルフ達を冷笑するとタケシはネイチャーオーラを右手に宿した。
「コットン・デ・アンブレラ!」
パサァ・・・
タケシの正面に綿が傘のように展開される。
綿による傘はダーク・ウルフが投げ放ったダガーを優しく受け止め、攻撃を無にしてしまった。
「まぁ狙いは良かったと思うケド、結局アンタ等じゃ・・・」
「ドラゴン拳ッッ!!!!!」
「!?」
ダーク・ウルフのダガーを防いだタケシは余裕の表情で所感を語る。
だが次の瞬間、大声と共にエルリークが眼前に現れたではないか!
「ドラゴニック・ブロアッ!!」
ブァックショォォォオン!!!!
そしてノータイムで口からドラゴンパワーを解き放つ。
唐突な奇襲攻撃がタケシを襲った。
「うおお!今のはビックリしたぜェ!!あとその攻撃唾飛んで汚いから止めてネ・・・」
だがタケシは無傷だった。
そう、直前に展開していた綿による傘がタケシの身を守ったのだ。
エルリークの肺活量により綿の傘は弾け飛んでしまったが直撃をしっかり防いでいた。
「いや~惜しいねェ!でも今の良い狙いだったにょ!」
「エルリーク!スイッチ!!!」
「あいよォ!」
ンバッ!
刹那、号令と共にエルリークは地面を踏み込み、姿勢を低く構える。
すると背後から一筋の闇の使途が跳ねるように飛び出した。
そう、その正体は皆さんの想像した通り、ダーク・ウルフだ!!
「キメてやる!」
キマるのか!?




