知恵と勇気で勝ち残れ
「うおお!刺矢噴迅!!」
ドギュゥゥンンン!
アージョ渾身の刺突攻撃が綿の要塞に勢いよく突き刺さる。
濃密な綿の壁を破り、その中に潜むタケシに一矢報いた!・・・かに思えた。
ファサァ!
「うぇ!?」
瞬く間に綿は周囲に飛散し、アージョは思わず変な声を出す。
その感覚はまるで糠に釘・・・豆腐にかすがい・・・暖簾に腕押し・・・装甲車に5.56x45mm弾薬・・・。
つまり全く手ごたえが無くアージョの技は上手く決まらなかったという事を意味する。
そして何より、その場にタケシの姿は皆無。いったいどこへ・・・!?
「リーフカッター!」
何処からか聞こえたその言葉と同時に、舞い散っていた綿が一瞬にして無数の葉っぱのような姿へ変わる。
だがそれはただの葉っぱではない。紙のように薄く、刃物の様に鋭く、水のように優しく、花の様に劇しく。
震える刃のような葉っぱはアージョに向け様々な方向から飛翔し、その身を切り刻んだ!
シュパパパパパパ!!
「ぐあああああ!!?」
咄嗟の事だったため防御が間に合わなかったアージョはタケシの技におもっくそ被弾する。
せっかくのアージョの見せ場もタケシの攻撃を見せつけるための物になってしまった。
「ア、アージョ!?」
「チッ!世話のかかるヤツたい!」
ダーク・ウルフとエルリークは一瞬動揺するがすぐさまアージョの救援に向かう。
だがその為には飛び交う葉っぱをどうにかする必要があるがダーク・ウルフには策があった。
「常闇に吹きすさぶ漆黒の風・・・舞え!闇魔法、ダーク・ストーム!」
ビュゥゥゥン!
ダーク・ウルフが詠唱と共に練り上げた魔力はやがて暗黒の竜巻となり発現する。
アージョの周りに黒き竜巻は巻き起こり、飛び交う葉っぱを全て弾き落した。
「アージョ!無事か!?」
そのままダーク・ウルフはズタ袋と化したアージョのカバーに入る。
なんとか危機は去ったが何処かへ消え去ったタケシを見失った状況。油断は許されない状況だ・・・。
「ったく、一人で飛び出しやがって・・・立てるか?」
エルリークはぶっきらぼうに声をかける。
体中に痛々しい切り傷を負ったアージョだが幸いな殊に傷は浅そうだ。
それに、この程度でくたばる訳が無い。エルリークはそう確信していた。
「すまねぇ油断した・・・!だがヤツは言った何処へ・・・?」
アージョは身体中の焼けるような痛みを堪え、よろりと立ち上がりながら消えたタケシを索敵する。
そんな時、突如後方から不穏な気配を感じた。
「ここだYO」
「!?」
三人は仰天の表情と共に振り向くとボウズ頭のソイツは何事もなかったかのように棒立ちしていた。
「んなっ!?」
「コイツいつの前に・・・!?」
アージョとエルリークはまるで理解が出来ていなかった。
先程まで姿形もなかったタケシだが一体いつの前に現れたと言うんや・・・。
「コイツはたしか”ネイチャーオーラ”とか言う謎のオーラを使うんだったな・・・。これもそのオーラの力なのか・・・?」
一方でダーク・ウルフは考察していた。タケシの能力を。
確かに綿や葉っぱなどは自然由来のワザなのだろう。
だが姿を消す能力については皆目見当も付かなかった。これを見破らない限り攻撃を与えるのは困難を極めるだろう・・・。
「この野郎!!ドラゴン拳ンン・・・ッ!!!」
一方でエルリークは大きく息を吸い込むと踏ん張りながらドラゴンオーラを口元にチャージ!
そして、放つ・・・!!
「ドラゴニック・ブロアッ!!」
ハックショォォォオン!!
エルリークの口から龍属性のエネルギーを帯びた衝撃波が解き放たれ、タケシを強襲する。
しかしタケシはとっさに前方に綿を傘のように展開した。
「うお、あっぶねェ~~!!!」
凄まじいドラゴンオーラと風圧と飛沫がタケシ襲うがタケシは後方へジャンプしフワっと着地し、ワザとらしく言う。
綿はエルリークのドラゴンエネルギーを完全に防いでいたが、風圧により綿のシールドは飛散していた。タンポポのように。
タケシが操る綿は正に変幻自在に戦士達を翻弄する。
攻撃を防ぐ盾であると同時に、攻撃を繰り出す矛にもなる珍妙な綿はまるで掴み処のないタケシのようだ。
戦闘が始まる前にダーク・ウルフ達を見下すような発言をしていたタケシだが言うだけの事はあるという事だ。
「クソが!こうなりゃアポロデュオ召喚して・・・」
「待てエルリーク」
頭に血が上り、再度攻撃を繰り出そうと意気込むエルリークをダーク・ウルフが静止した。
「なんや!?ぶっ飛ばすぞ!?」
「闇雲に戦ってもアイツの思う壺だ。このままじゃ無駄に消耗しちまうぜ」
「それは・・・そうばってん・・・」
我に返ったエルリークはダーク・ウルフに渋々従う。
だが内心焦っていた。このままではタケシに勝てないし見せ場が無いという事を。
「じゃあどうすればいいんや?なんか考えがあるんやろ?」
(綿による防御はまだ対処できるかもしれねぇが・・・問題は透明化だ。発動されると手も足も出せなくなっちまう。それに・・・その気になれば透明化中に俺達の息の根を止める事もできる筈。随分と舐められたモンだぜ・・・!)
エルリークが文句を言う中、ダーク・ウルフは考えていた。タケシを倒す術を。
(いや待てよ?そもそも本当に透明になってんのか?もしそうなら最初のデルタアタックの時に綿で防がなくても透明化で透かして躱せたハズ・・・!)
考察する中で勘の良いガキのダーク・ウルフは一つの事に気づいた。
それはタケシは身体を透明にして消えたという事では無いという事だった。
(という事は実際は周りの風景に溶け込む事で俺達には消えたと錯覚させた・・・ってコト!?カメレオンかよコイツ・・・)
カメレオン・・・それは爬虫綱有鱗目に分類される四足歩行動物。
体色変化が得意で、周囲の色に溶け込み、天敵から身を守る事で有名な脊椎動物であるがその実、生息する地域や環境、固体の状況によって変化に幅がある。
まぁ今はそんな雑学はどうでも良くて、ダーク・ウルフはタケシの姿を消す能力を似たような物ではないかと推察していた。
その仮説の下、ダーク・ウルフは更に考察を深め、論理の中に潜して行く・・・。
(デルタアタックの時の攻撃は透明化じゃ躱せなかった。だから自身を包み、全方向を防御できる綿の要塞で防いだ。さらに近づいて綿を貫いたアージョにカウンターを仕掛けたが、その時には既に透明化していたんだ)
ここまでのタケシの行動を振り返り、整理し、紐解いていく。
(だが裏を返せば綿で攪乱し、透明化しなきゃアージョの攻撃は回避出来なかったし、くらえば致命傷になっていたという事だ!だとすれば補足さえできれば勝機はある!!)
ダーク・ウルフはそう結論付けると一つの策を思いつく。
左腰に下げているポーチに手を伸ばし、策に必要なアイテムを手探りで確認する。
「あれ?急に黙っちゃってどしたん?まだまだ戦いは始まったばかりだヨ!」
一方で相変わらずヘラヘラした表情と口調でタケシはダーク・ウルフに煽りを入れる。
「うっせぇな!祝勝会の二次会の事考えてただけだっての!お前は呼ばねぇからな」
「オイオイオイ!オレっちも呼んでくれよ!呼ばれないのって地味に傷つくぜ?」
タケシの下らない煽りを適当に流したダーク・ウルフはなんか言ってるタケシを無視し、アージョに小声で声をかける。
「んな事よりアージョ、さっきみたいにタケシが見えなくなった時、青色のオーラで捕捉できそうか?」
「え?まぁ・・・たぶん出来ると思うぜ。あのオーラを発動中はめっちゃ目良くなるからな。疲れるけど・・・」
「分かった。奴を倒す作戦を思いついた。二人とも耳貸せ・・・」
「へっ、頼もしいじゃねぇか」
ダーク・ウルフはアージョとエルリークにそれぞれ作戦を伝える。コソコソと。
それを後方で見守るインフェルノカイザーは若干の不安を抱えていた。
「ウルフの奴、張り切ってるみてぇだがなんか無理してねぇか・・・?俺が万全ならあんな奴・・・!」
「兄さん。ここはウルフさんの策を信じましょう。今は我慢の時です・・・!」
「あぁ・・・そうだな。てかお前等いつの間に仲良くなったん・・・?」
一時的に戦えない状況に歯がゆさを感じながらもインフェルノカイザーはダーク・ウルフ達の戦いの行方を見守る。
シャイニングカイザーも思いは同じであった。だが自分を信じて思いを託してくれたダーク・ウルフを尊重し、来る時に備える。
「・・・」
そしてポラリスは言葉こそ発さないものの、何かを思いつめたような表情でタケシを睨みつけていた。




