もさくてもいい
もさいグレンです。ますます重たい男になってます。
「子どもたち、寝たよ」
グレンが3歳になる双子、ロビンとアレンの寝かしつけから戻ってきてジェシカに絡みついた。
グレンは商団の財務顧問の仕事につき、ジェシカは狩人として生計を立てていた。
グレンはその目立つ顔を隠すためにヒゲ生やしてモサモサしている。そのままの容姿は目立ちすぎるししょうがない。
「ああもう!そうやってすぐにくっついて!暑い!あ、ちょっ!ヒゲ…ヒゲがこそばゆい!」
狩りの罠の手入れをしていたジェシカは背後から絡め取られ必死にもがいた。
鼻腔をくすぐるハーブの爽やかな匂いが長い髪やヒゲから漂ってくる。
グレンは臭いと言われたのがよほど堪えたらしく、昔の経験や商団のツテを総動員して川から水を引き、かまど風呂までこしらえて毎日身体をピカピカに磨き上げている。水を引いたついでに家の横にかなり広いハーブ園や畑を作り、石鹸や香料まで手作りしている。
商団に卸して結構な収入源になっていた。
水くみの重労働から解放され、狩りの後に風呂に入ってさっぱりできるのはジェシカもかなり嬉しかった。
今ではパン屋の女将さんの店を筆頭に、村中の家に水が引かれ、グレンの株は爆上がりである。
「しいー。大きな声を出すと子どもたち、起きてきちゃうよ?やっと二人きりになれたのに」
グレンはわざとらしくヒゲの断面をジェシカの首筋に撫でつけた。
うなじや耳の後ろに触れるその何とも言えないゾワゾワにジェシカはビクンと身体を震わせる。
「こうしとかないと、君がまた消えちゃうんじゃないかと、不安なんだ。安心させて?」
グレンはそのまま顔を首筋に埋めた。首にぽとりと熱い雫が落ち流れ落ちる。
「〜〜〜っもう!そうやってすぐ泣き落としして!」
ジェシカは振り返りグレンの顔を両手で挟んだ。
「逃げない!もう逃げないから、泣かないで!」
「だって…幸せで夢みたいなんだもの…」
グレンは泣き笑いしてジェシカに口づけを落とした。
何回も、何回も。
「一つだけ残念なんだけど…」
熱い吐息の合間にジェシカが呟く。
「何?」
こめかみに、眦に口づけを落とし続けながらグレンが聞き返した。
「もさい。あんなにキラキラした王子様だったのに。特にヒゲがやだ」
「嫌い?」
グレンの動きがピタリと止まり、不安げに聞き返した。
「………残念なだけで、嫌いじゃない」
ぱああっとグレンの顔が輝いた。
「好き?」
「当たり前なこと聞くな!」
それを聞いたグレンはウルウルしてジェシカを抱きしめた。
翌日、やっぱり少し整えようかとジェシカはグレンの髪とヒゲを切りそろえた。
シャキンとハサミを入れる毎に整った顔立ちが見え出すと、ジェシカは懐かしさにドキドキしてきた。
少年の幼さが抜けて、大人の色気が出てる。
温かい蒸しタオルをヒゲに当て、泡立てた石鹸をなでつけ、カミソリを滑らせた。無防備に伏せたまつ毛が長い。
ついつい、ヒゲを全部落としてしまった。
やっぱり顔が見えたほうが良いな…。
最初は素直にそう思っていたのだが。
数日もしないうちにグレンは村中の女性陣にもてはやされ出した。
用もないのに来客がやたら多くなった。
「あ、今日は旦那さんお留守?」
「仕事行ってるけど、何か用なら伝えておくよ?」
「う、ううん!そんなたいした用じゃ無くて、どうしてるかなぁって!」
似たようなやり取りを数件。
グレンが出ると、長々話している。
ジェシカが出るとあからさまにがっかりされる。
何やら外が騒がしいなと思ったら商隊から仕事帰りのグレンの周りに若い娘から若くない娘まで群がりもてはやされているのを見て、ジェシカは胸がモヤモヤした。
「ただい、ま…っ!?」
戻ってきたグレンの襟首を掴み、ジェシカは唇を押し付けた。
噛みつくような口づけをして、離れたジェシカは視線を胸元に落としボソッと呟いた。
「やっぱり、ヒゲ剃らなきゃ良かった…。すごいモテて心配になってきた…」
その夜のグレンは大暴走だったが、久々に見るキラキラグレンにジェシカもかなり盛り上がった。
そして、新たに家族が増えた。
もさいグレン。
一度落書きしてみたら想像以上のもささに悲しくなりました。
ジェシカに嫌われないよう、風呂まで作るグレン(笑)
ジェシカが獲ってきたジビエに野菜やハーブを使い、城で食べてたご馳走を再現してるかも。




