もしもの夕べ
前回の妊娠では妊婦のジェシカはほとんど知らないから、今回のグレンの過保護ぶりは大変なことになりそうです。
そして毎日お腹に耳当てて「とーさんですよー?」とかやりそう。
仕事行くのも渋りそうだけど。
生活のために泣く泣く行くけど速攻終わらせて帰ってくる。でも手抜きなし。
「父さん仕事いった?」
ジェシカはロビンとアレンにそっと聞いた。
「うん、行ったぜ!」
「なるべく早く帰るって!」
二人は元気に答えた。大きくなったなぁと感慨深い。
いつも、母さん、つえー!父さん、頭いい!すげーつ!とキラキラした目で褒めてくれる。
子どもができた事を伝えた途端、お兄ちゃんになると張り切っている。聞き分けがずいぶん良くなって助かっていた。
グレンはと言えば、家族が増えるから新しい家を建てると言って、職人を10人も呼んで家の裏手の林を整地しだした。
みんなで足を伸ばして入れるお風呂を作るって言ってたけど、本気かな…。
「やれやれ。こんなに家にこもっていたら滅入っちゃうよ。二人ともちょっと森まで狩りに行って来ていい?」
今回は幸い悪阻もほとんどない。
動けるうちに保存食も蓄えておきたい。
ところが…。
「だめ!」
「父さんに母さんが出かけないよう見張っててって言われたんだ!」
双子がちいさな両手を広げて通せんぼする。
そして、両脇からギューっとしがみついた。
「行っちゃだめーっ」
「ええ!?子どもに何頼んでるの!あの人!」
しっかり行動を予測されていた。
ジェシカは過保護に過ぎる夫に呆れ返った。
「狩りに行こうとしたんだって!?」
帰ってきたグレンが叫んだ。
ロビンとアレンが誇らしげに報告したらしい。
「あ…、ほら、栄養あるものも食べないとだろ?新鮮なのが食べたいなあって…」
しどろもどろ答えるジェシカにグレンは悲愴な顔をして………はらはら泣き出した。
「………ジェシカ…。君の身体は君一人のものじゃ無いんだ。どうして無茶ばかりするんだ」
「………ごめんなさい」
もう、このグレンの涙には太刀打ちできる気がしない。ジェシカは素直に謝った。
「退屈ならみんなで散歩しよう?狩りはダメだ。一人で森へ行ってでケガでもしたら大変じゃないか」
「はい……」
こうして今日も泣き虫で愛の重い夫に、甘く捕らえられるジェシカであった…。
茜色の大きな太陽が森の向こうに消えようとしている。夕焼けの光を受け、水面がキラキラと輝いていた。
まぁ、こうして家族四人手を繋いで、のどかな夕焼けの川べりを歩くのも、悪く無い。
グレンと出会ってから色々あったけど、今が一番幸せだ。夫はもさくて重いけど。
フフっと笑ったジェシカの横顔をグレンが覗き込む。
「何か言った?」
もう王子様ではない、僕だけのグレン。
「幸せだねって言っただけだよ!」
ジェシカは弾けるように笑って夫を、息子たちを抱きしめた。
Fin
これにて終幕です!
まだ、エルンちゃんに「おヒゲ、やー!」っとプイッとされたり、4番目どころか森のうさぎさんより序列が下がって泣き崩れるグレンや、もさい顔で王都にコッソリ帰り、みんな悲嘆に暮れる中、アンソニーだけ、「あら、イケオジになったじゃない!」と言うとか、ある街角ですれ違うロバートとロビン&アレンとか。グレンはスティンキーじゃなくてヒンメル晩年バージョンもいいかな?(自粛)と、他にもエピソード色々考えたけど、きっとそんな事もありつつ、幸せに暮らして行くのでしょう。
めでたしめでたし、ですね。
お楽しみいただけたでしょうか?
次は子ども達のその後を描く「ARCADIA希望編」開幕予定です!
そちらも見ていただけると嬉しいです。
◆◆ 予告 ◆◆
ARCADIA希望編〜The "HOPE" chapter〜
長年続いた戦争を終結させ、不毛のブレイグの発展に導いた稀代の英雄、ブレイグ大公の双子の公子は、大公妃譲りのオリーブグリーンの瞳以外、まったく印象の違う兄弟だった。
黒の公子、ロビン・ブレイグ。
黒髪で大きな体躯。明るく飾らないおよそ高貴な身分とも思えない朗らかな人柄で城下にも頻繁に顔を出し、領民からよく慕われていた。
白の公子、アレン・ブレイグ。
銀髪で女性と見紛うような優しげな風貌。しかし、毎年行われる剣術大会では子どもの部から通算9連覇を誇っている剣の達人。また、聡明で勉学にもよく励み、全てにおいて完璧ながら、奢らず柔らかい物腰だった。
さながら太陽と月のような二人はそれは仲が良く、任されはじめた政務においても良く協力しあい、ブレイグ大公領の未来は明るいと思われた。
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