太ももは太ければ太いほど良い、と古事記にも記されている。
僕とプリムラは居城の中央に位置する大広間へとやって来た。
そこには半径5メートルほどの円卓があり、等間隔に4つの椅子が用意されていた。
既にリリアナとシャーリィはそれぞれ向かい合うように席についていた。
リリアナのすぐ後ろにはシスティさんが控えていたが、シャーリィは1人だけだった。
Qは連れてきていいと通達があったけれど、予定が合わなかったとか?
まぁ、僕には関係のないことだ。
空いている席へ向かって、座ろうとした。
が。
「ねぇ、何してんの?」
僕より先にプリムラが席についていた。
「紅茶を飲んでいる」
「見ればわかるよ、そんなこと! じゃなくて、なんでプリムラが座ってんのさ! こういうのって魔王候補の人が座るんじゃないの!? あと、飲んでるそれ、僕に出された紅茶だよね!?」
「なんだ、ようやく魔王候補としての自覚が出てきたか」
「いや、そう言うことじゃなくて。空気を呼んでって意味で言ったんだけど? 僕は別に魔王候補であることは受け入れてないよ」
「なら、このままでもいいな」
「よくないから!?」
「はぁ、仕方ないな」
「………………」
「――――――」
「え? この間は何? なんでどかないの?」
「ズズズズズー」
プリムラは僕のことなど無視して、紅茶を飲み続けていた。
そして、
ゴーン。ゴーン。ゴーン。
ティーパーティー開始を告げる鐘の音が3回、城中に響き渡った。
「結局、僕は立ちっぱなのね?」
てか、あれ? 魔王候補がまだ1人来ていない?
この円卓に集った魔王候補は僕、リリアナ、シャーリィの3人だけだった。
この場にはスペードの魔王候補の姿がなかった。
「フフッ、よく来た。次世代の卵たちよ」
そんな時、円卓を挟んで僕の目の前にある巨大な階段から、1人の女性が降りてきた。
「アマゾネスの女王か」
プリムラのその呟きであの人が誰なのか分かった。
というのも、名前だけは事前にプリムラから聞いていた。
このアマゾン地帯には多種多様な危険生物が徘徊しており、対策なしでは間違いなく死に至る地球上最も危険な陸地と言われるほどの場所。
だが、ここにはこの居城があった。
この居城は魔王軍が地球へ攻め込む際の重要拠点なのだ。
そんな場所をこんな危険な地帯に作るのなんて自殺行為に他ならない。
しかし、そんなこの場所を安全地帯にすることが出来る魔法があった。
それが彼女、アマゾネスの女王の魔法。
彼女の魔法は万物との対話を可能にする。
虫も猛獣も彼女と対話をすることで、アマゾン全ての生物を支配しているのだ。
「ふむ、スペードの小僧は遅刻か」
彼女の名はレイア・イシュタール。
現魔王の6、アマゾネスの女王のレイアだ。
アマゾネスという女性戦士の種族の頂点に立つ女性。
血の気が多く、戦闘を好む野性的な種族でその多くが健康的な褐色肌で、筋骨隆々な見た目をしている。
けれど、彼女はおおよそアマゾネスのイメージとはかけ離れていた。
透き通るような白い肌に、整えられた綺麗な黒髪。そして、柔肌を秘めるかのような十二単で身を包んでいた。
アマゾネスというよりかは大和撫子と言った方がいいだろう。
「はいはーい! いないなら失格でいいと思うの! 欠席裁判ってやつ!」
右手を上げながら勢いよく席を立ち上がるのはハーピィのシャーリィ。
「そうだな、このまま来ないようであれば資格剥奪に……」
「あらあら、せっかちですこと」
レイアさんの言葉を遮って大広間に1人の女性が入って来た。
見覚えのある栗色の髪に整った顔立ち。左肩にはリリアナたちと同じ黒のロングコートをかけている。
プリムラから聞いた話によると、あのコートは魔王軍の軍服とのこと。だから、見た目は人間だけど、魔王軍の関係者だろう。
いや、この場にいるんだから関係ないわけないんだけど。
にしても。
でっっっっっっか!
あ、もちろん身長の話。
恐らく190近くはあるだろう。
そして、さらに目を引くのは、
「ふっっっっっっと!」
プリムラの2倍はありそうな太もも。
あまりの太さに声が出てしまった。
うっ、こっち睨んできた。やっべ。
いや、まぁしょうがないじゃん。だって太いんだもん。
歩くたびに、むちっむちっ、って効果音鳴ってそう。てか、鳴ってる。聞こえるわ。
「遅い到着だな。スペードの魔王候補よ」
「重役出勤というやつですわ」
「ねぇ、あの人がスペードの魔王候補?」
他の人に聞こえないくらい小さな声でプリムラに訊ねる。
「サツキ・エイワス・セレスティアナイト。スペードのQであり、メイの妹だ」
「え、メイさんの?」
道理で見覚えあると思った。どことなく似てるわ。
「てか、クイーン? スペードの魔王候補は来てないの?」
「何を言っている? いるじゃないか」
「え?」
プリムラが指差したのは、サツキさんの足元。
「彼がスペードの魔王候補だ」
そこにいたのは身長100センチにも満たない、小さな小さなゴブリンの少年だった。




