意外な関係性
「ここがあなたたちの家ですか。立派なものですね」
「どうして、こんなことに……?」
ルミエルさんがどうしてもうちに来たいと言ってきたため、しぶしぶ連れてきた。
リリアナもついて来ようとしたが、あの後すぐにやって来たシスティが止めてくれた。
他にも何人か見たことのない人たちもいて、何やら口論し始めたからその隙にスーパーから出て、うちに帰ってきた。
口論の内容から察するにリリアナの暴走はクリームヒルトとか言う人の入れ知恵らしい。
一体何を吹き込んだのか気になるが、それは次に機会があったら聞いてみるとしよう。
それよりも今は目の前の天使様だ。
「一体、うちになんの用があるんですか?」
勇者軍特別顧問なら、僕が魔王候補であることがバレたらまずい。
捕まるか、最悪殺されかねない。
「そう緊張しなくても大丈夫です。あなたを捕えたりはしませんから」
「え? な、何のことですか?」
「あなたが魔王候補であることは知っていますから」
バ、バレてる!!!!
「てめぇ、燃やすぞ」
梗夜君が右手に炎を灯し、敵意を見せる。
「ちょ! 何してるんですか! ルミエル様に手を出したら私が許しませんよ!」
「なんで、てめぇが邪魔すんだよ」
「ルミエル様は勇者の選定者なんですよ! ダメに決まってるじゃないですか! ルミエル様、安心してください。未来の勇者である竜胆真澄が必ずお守りします」
そんな梗夜君に対し、竜胆はルミエルさんへ露骨なアピールを見せ始めた。
「ですから、あなた達と戦うつもりはありません。ただ、どうしても会いたい人がここに住んでいるようなので」
「会いたい人……ですか?」
勇者軍ってことは……風真さん?
確か風真さんが追放された理由って勇者軍にいる天使に手を出そうとしたからって……もしかして、復讐?
勇者軍には天使は1人しかいないみたいだし、そうなると風真さんがセクハラしようとしていたのはこのルミエルさんってことになるんだけど。
つまりこの面倒事は風真さんのせいってことになる。
よし、なら当人同士で何とかしてもらおう。僕関係ないし。
「ささ、どうぞ、こちらへ」
なら、僕はなるべく波風を立てないようにしよう。
とりあえず、ルミエルさんをリビングに案内する。
「ん? あれ?」
すると、ちょうどリビングのソファーで寝転がっていた風真さんと鉢合わせる。
「どうしてここに、ルミエル様が? もしかして、おじさんに会いたくなっちゃった?」
「憐太郎君、これから言う人を連れてきてもらえますか?」
「うはー、無視されたー」
ルミエルさんは風真さんを視界に入れないように、風真さんのいる位置とは真逆のキッチンの方に向かって喋っていた。
「えっと……会いたい人って風真さんのことでは……?」
「風真? 聞かない名ですね。知らない人です」
オッケー把握。ルミエルさんには風真さんの話題を振ってはいけないようだ。
「それで、会いたい人っていうのは?」
「久井目白撫さんです」
「え? 白撫とは知り合いだったんですか?」
「知り合いと言うよりはビジネスパートナーと言ったところでしょうか」
白撫は色んな武器作ってるみたいだし、それを勇者軍でも使ってるって話だし、それ関係かな? 新しい武器を作って欲しいと頼むとか?
「分かりました。今、呼んできますので少し待っててください」
どういう関係なのか僕が詮索する必要はないだろう。
リビングでルミエルさんに待ってもらってる間に、地下通路を使って工場へ白撫を迎えに行く。
「ルミエル? 誰じゃ?」
「知らないの? 向こうはビジネスパートナーって言ってたけど」
「うむ~、心当たりがないのう」
白撫の反応からルミエルと面識がないようだった。
って言っても、白撫なら普通に取引相手の名前とかちゃんと覚えてなさそうなイメージあるし、会えば分かるかもしれない。
「とにかく、来てくれないか? 仕事があるっぽいし」
「仕方ないのう」
ということで、白撫を連れて再びうちに戻ってくる。
「はい、白撫です」
「どうも、白撫じゃ」
「お久しぶりです、白撫さん。いえ、直接会うのは今回が初めてなので、初めましてが正しいでしょうか?」
ルミエルさんのその口ぶりから面識はなかったらしい。それなら白撫が心当たりがないと言っていたのもうなずける。
「それで、わしになんの用じゃ?」
「はい、少し必要な機材があって用意してもらいたく……」
白撫とルミエルさんが仕事の話に入る。
どんな要件があって来たのか気になってはいたので、その会話に聞き耳を立てようとしていたおり、それを邪魔するかのようにゼラから呼び出しの連絡が来た。
どうも急用とのことなので、リビングで話す2人を置いて、僕はゼラの部屋へ向かう。
「なんだよ、急に呼び出して」
「なんだよ、じゃないんだよ! 今、お客さん来てるよね!」
「来てるけど……あぁ、知らない人連れてこないでってこと? 安心していいよ、ゼラは会うことないだろうし、引きこもってれば」
「そうじゃなくって! もしかして、レンは気づいてないの!?」
「……? 何の話?」
「声で分かるでしょ!!!」
「声? あぁ、そう言えば、聞き覚えのある声だったような……」
「え!? なんでそんな淡白な反応なの!?」
「逆にそっちはなんでそんなに興奮してるんだよ」
「だって、あの人――黒百合クロネちゃんでしょ!!!!!!」




