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自称コンサルタントのギャルが僕を魔王にしようとしてくる  作者: 結生
第二章 枯れた花は夢を見る

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悪夢再び

「え~、本日も休みである夢咲先生に代わり、私がホームルームを行う」



 教室にやって来たのは白髪の生えたおじさん。

 僕の学校の校長だ。

 夢咲先生はここしばらく休んでいる。

 明確な理由は聞いてはいないが大体は想像がつく。

 先生が最近推していた小悪魔系Vtuberが一週間以上も配信せず音沙汰がないからだ。

 巷では引退したんじゃないかと噂されている。

 まぁ、推しキャラが毎回死ぬ運命にある先生の推しだから、その可能性があり得そうなところが否定できない。

 先生もそれは自覚しているからこそ、引退したと思ってメンタルを壊したのだろう。


 僕も休みたい。ここ最近、メンタルどころかフィジカル面でもボロボロだし。



 ブルル。



 スマホの通知が来る。メッセを送ってきたのは未だに不登校のゼラからだった。



『これ見て!』



 ゼラから送られてきたのはとあるネットの記事だった。

 その内容はちょうど件の小悪魔系Vtuberのものだ。


『小悪魔系Vtuber黒百合クロネ、勇者軍説浮上!!!』


 タイトルにはそうデカデカと書かれていた。

 そんなわけないだろうと思いながらも、記事を読んでみる。

 どうやら、この話の根拠はクロネが配信をしなくなった時期と魔王軍大規模侵攻の時期が被っているからというものだった。

 確かに先日の大規模侵攻で被害を受けたのは勇者軍のみで一般人には被害は出ていない。

 かといって、クロネが大規模侵攻に巻き込まれた証拠は何もないけど。

 よくある陰謀論だろう。たまたま合致した情報を並べているだけにしか見えない。



『こんな記事見てる暇あったら、早く学校来い』


『ばーか』



 5秒くらいで返信来た。暇人過ぎるだろ。



「ご主人ご主人」



 ホームルームの最中に校長のことなど無視して、梗夜君が僕に話しかけてくる。



「なに?」


「これ、どうですか?」



 梗夜君から一冊のノートを渡される。



「えっと、現国のノート?」


「いえ、文化祭で歌う曲の歌詞です」



 この人、まだ文化祭諦めてなかったんだ。

 てか、歌詞? ウソでしょ?



「ノートまるまる一冊、びっしり書き込んであるんだけど? 何曲作るつもり?」


「いえ、Aメロだけですけど」


「ギネス狙ってる?」



 誰が歌えるのさ、こんなの。喉潰れるって。新手の拷問じゃん。



「ご主人の素晴らしさを伝えるのに、ノート一冊に収まりきらなくて」



わぁ、嬉しくないラブレターだ。



「この調子では本番に間に合いそうになくて……」


「安心して、本番なくなったから」


「ですから、最悪当日即興でやろうかと」



 目を背けないで。

 文化祭は中止になったんだって。



「そこ、私語を慎みなさい。それと席に着きなさい」



 あーあ、校長に怒られた。

 そりゃ、ホームルーム中に勝手に席立ってるの梗夜君だけだし。喋ってるのも梗夜君だけだし。



「は? 何言ってんだ、ジジイ。俺はここの生徒だから席なんかねぇよ」



 そうだよ、生徒じゃないんだから、いちゃダメだよ。分かってるなら、来ないでよ。

 校長もこの際だからバシって言ってあげて。



「む、それもそうだ。失礼した」



 校長?



「後で、席を用意しておこう」



 校長!!!!!!!!!



「では、わたくしもお願いしますわ」


「あ、おじさんのも」



 どさくさに紛れて部外者2名も要求しだした。



「空気椅子ですと色々と不便なのですわ」



 描写なかったから知らなかったけど、メイさんずっと空気椅子してたの? なんで今まで誰もツッコまなかったの?



「この際です、他に欲しいものがあれば用意します」


「ゲーミングPC!」「リクライニングチェア!」「新作コスメ!」



 校長はサンタさんじゃないよ?



「検討しておきます」



 検討する余地ないよ。

 いや、でも買ってくれるなら、別にいいか。



「先生! 週休7日制にしてください」


「それはダメだ」



 なんで僕のだけ即答!?

 これは差別だ。PTAに訴えてやる。


 抗議文を書こうと引き出しからノートを取り出して、開く。



「なっ!!!!!」



 するとそのノートには僕と梗夜君の濃厚な絡みが描かれたイラストで全ページ埋め尽くされていた。



「何してんの!?」



 犯人は分かっている。



「…………グッ!」



 委員長を睨みつけると、サムズアップと共にいい笑顔で返された。

 僕が喜んでるように見えたの?



「にしても……」



 委員長のイラスト初めて見たけど、本当に上手かったんだ。内容は最悪だけど。



「あれ……? でも……」



 このイラストの感じどっかで見たことあるような……。

 委員長はネットじゃ有名らしいし、意外とどっかで見たことあったのかも。

 帰ったら、後で委員長のイラスト検索してみよ。






 放課後。

 僕は梗夜君と竜胆と夕食の食材を買いにスーパーにやって来た。

 プリムラは友達が多く今日も別のクラスの人たちと遊びに、茉奈花は生徒会で帰りが遅く、メイさんはまともに食材の買い出しが出来ない為、梗夜君からNGを食らっている。その他の人たちは手伝うといった考えを持っていない為、必然的に食材の買い出しはこの3人になる。



「いいですか、梗夜先輩。むやみやたらに暴力沙汰を起こさないでくださいね」


「お前は人のこと言えねぇだろ」


「失礼ですね。私は暴力沙汰なんて起こしませんよ」


「いや、起こしてんだろ。それでこの前はご主人が巻き込まれたんじゃねぇか!」


「あれは暴力ではありません。粛清です」


「変わんねぇだろ!」


「いいえ、違います! そこに正義があるかどうかが大切なのです」


「じゃあ、俺のも粛清だ。ご主人に仇なす敵は全て罪人だ。罪人を裁くのは正義だろう?」


「なるほど、あなたなりの正義と言うわけですね。なら、仕方ないですね」



 あ、いいんだ。

 まぁ、この二人同士が争わなくていいなら、揉め事減って助かる。

 梗夜君とメイさんは毎日のように喧嘩してて、見てるだけでも疲れちゃうし。多少は仲良くしてほしい。一緒に暮らすならなおさら。



「それにしても毎日すごい量買い込みますね」


「主にプリムラ用なんだけどね。多い日とかだと1日20回くらい買い物に行ってる」


「それは……ネットとかの通販で頼まないんですか?」


「してたよ。でも、買い込み過ぎて利用停止食らっちゃった」


「なんでですか? 企業からしたら儲かるのに」


「ほぼ買占め状態になって、他のお客さんに回らなくなっちゃうからだってさ」


「それ逆に食費はどう賄ってるんですか……?」


「親からは心配いらないとは言われてるけど」



 多分、梗夜君の親からその辺は受け取ってると思うから、あんまり心配していない。

 食料も定期的に送られてくるし。




「結構な量になりましたね」


「とりあえず、今回はこれくらいかな」



 一通り優先順位の高い食材を籠に入れた。これ以上は3人で持って帰れそうにない。



「そうですね。この分だと、後2往復くらいですかね」


「もっと人手があると助かるんだけどね……」



 竜胆がうちに来てくれたとは言え、それでも人出は足りない。

 いや、まぁ、一番食ってるプリムラが手伝えって話なんだけど。



「お困りなら手を貸すわよ?」


「……え? あれ? なんでいるの?」



 急に知らない人に話しかけられたと思って、振り返ったらそこにはプリムラがいた。



「お前、遊びに行くとか言ってなかったか?」


「遊びに? そんなこと言った覚えはないのだけれど?」


「いや、手伝ってくれるなら助かるけど」


「いいわよ。それで何をすればいいのかしら」



 どうしてプリムラがここにいるのか分からないが、手伝う気になってくれたのなら僥倖。





 …………いや、待って。何かおかしい。



「お前、本当にプリムラか?」



 そうだ、今、目の前にいる彼女は銀髪。この時のプリムラはこんな親しみやすい話し方はしない。それにプリムラが僕の言うことを聞くとか絶対あり得ない。僕が魔王になるくらいあり得ない。

 と、なると考えられる可能性は……。



「? もう何言ってるのかしら。私はリリアナだけれど」



 やっぱりかああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!



「っ! ご主人、下がってくさい」



 梗夜君は状況をすぐさま察し、僕とリリアナの間に割って入る。



「え? なに? なんですか? プ、プリムラ先輩じゃないんですか?」



 リリアナのことを知らない竜胆は彼女のことをプリムラだと思って、戸惑っている。



「何しに来やがった、てめぇ。また、ご主人の命を狙って……」


「違うわ。もう知ってると思うけれど、憐太郎は正式にクローバーの魔王候補として認められたから、手を出せないわ」


「じゃあ、何の用だ」


「何って……憐太郎は分かってるわよね?」


「え? いや、全然」


「なんでよ!?」



 そこで驚かれも困るんだけど。俺の方がなんでよ。



「憐太郎がまったく会いに来てくれないのだから、私から会いに来たのだけれど」



えぇ……。この人何言ってるの?



「会う理由がまるでないんだけど……?」


「つれないこと言うのね。私たち夫婦なのに」



「「「…………え?」」」



 ホントなに言ってんのこの人!!!!!!!!!!!!!!!



「ご、ご主人! 夫婦って、夫婦ってどういうことですか!?」


「先輩、結婚してたんですか!? まだ高校生なのに……ま、まさかででででででき婚!? ふ、不純異性交遊!!! 粛清対象です!!!!」


「ご主人に子供!? どこにいるのですか!? 安心してください、ご主人の子は俺が身をもって守りますから!」


「そ、そうです! 妻と子供をほっぽって他の女の人と同棲なんて最低です! 粛清! 粛清!」


「いや、ちょ、2人とも落ち着いて?」



 ダメだ。梗夜君も竜胆も混乱して分けわからないこと言ってる。話聞いてくれない。



「えっと……リリアナ」


「何かしら? 旦那様」


「辞めて。この2人冗談通じないから」


「?」



 なんで、きょとんとするの? 本気で言ってるの?



「だからね、僕たちは結婚してないし、付き合ってもないでしょ?」


「?」


「だから、首傾げないでよ! ふざけるのもいい加減にして!」


「ああ、そういうことね」



 お? 分かってくれた?



「日本だと婚姻届を出さなくてはいけないのよね。安心して、ちゃんと書いてきたから、後はあなたの名前を書くだけよ」


「ンァーーーーー!!!!!」



 リリアナが取り出した婚姻届を奪い取ってビリビリに引き裂いた。



「そんな……何をするの……ひどい……」



 リリアナはその場にへたり込みシクシクと泣き出す。



「先輩! ダメですよ! ちゃんと認知してください!」


「離乳食は作ったことないですが、調べた感じそう難しくなさそうです。安心してください、母親がいなくなってもご主人のお子さんは必ず俺が育ててみせます」



 ああ、もうメチャクチャだよ。だれか、この状況なんとかしてー!



「あちゃ~思ったより暴走しちまったか。でも、あんたも悪いんだぜ。うちのお嬢を口説こうとしたんだからさ」



 混沌としたこの状況に頭を抱えていた時、今度は全く見覚えのない女性が話しかけてきた。



「だ、誰ですか?」


「あたしか? あたしはクリームヒルト。ハートのジャック(J)と言った方が分かりやすいか?」


「な……!」



 絵札ってことは絶対つよつよな人じゃん!



「や、やっぱり僕を……」


「もー! ヒルトンパイセンどこっすかー! あ! 見つけた!」



 どうやらそのハート派閥がもう1名追加されたようだ。

 長い黒髪を2つ結びにした小さな少女。まだ小学校中学年くらいだろうか。



「ああああーーーーーー!!!! あんたはあの時の御曹司!!!!」


「あん? てめぇこそ、この前のクソガキじゃねぇか。何しに来やがった、またメスガキの丸焼きにしてやんよ」


「ふん、もうあんな辱めはごめんよ! 今日はリリねぇもヒルトンパイセンもいるから、あんたに勝ち目なんかないのよ!!」


「んじゃ、やったろうか、あぁんん???」



 止める間もなく2人が取っ組み合いの喧嘩をおっぱじめる。



「お、いいぞもっとやれ」


「憐太郎はこの後暇かしら? よければ私の部屋に来ない?」


「ハート? 魔王候補? プリムラ先輩に似てるんですが、どういうことですか!? 先輩! 説明を求めます!」



 状況がどんどん悪い方向にしか行かないんだけど、ホント誰でもいいからなんとかしてよ……。



「あなたたち、ここは公共の場ですよ。喧嘩は余所でやりなさい」



 と、救世主のようにとある女性が2人の喧嘩を止めに入った。

 少し寝癖がついたままの長い薄桃色の髪にスウェット姿でずぼらな性格が透けて見えるが、この状況を打開してくれるなら、誰だっていい。

 にしても、この人に見覚えがあるというか、最近会ったような。



「それで、喧嘩の発端は何ですか?」


「「こいつが喧嘩売って来た」」


「喧嘩を売られたからと言って、すぐに買うのは子供です。大人であれば、大らかな心で流しましょう」


「ふっ、まぁ、俺はただ子供の相手をしてただけで、別に本気じゃなかったがな」


「私は子供だしー」


「先ほどコーヒーゼリーを買ったのですが、いい子にはこれを上げましょう」


「私、喧嘩しない! いい子!」



 こ、この人、すげぇ……。

 あっという間に宥めた。子供の扱いに慣れている。



「あの、ありがとうございます」


「いいえ、お気遣いなく。ここであなたたちがトラブルを起こし、勇者軍に気づかれれば、戦争が起こってしまいますから。私はそれを回避したかっただけですので」


「せ、戦争? どういう意味ですか?」


「どういう意味も何も、魔王候補同士が争えばそうなるのは必然でしょう」


「「「っ!」」」



 魔王候補。彼女の口からその言葉が出た瞬間、リリアナとクリームヒルトさんが臨戦態勢に入る。

 僕は驚いてそれどころではなかった。



「ど、どうして僕たちが魔王候補だと」


「おや、まだ気づいていなかったのですね」



 パチンっ。と指を鳴らすと、彼女の頭上に光の輪が、腰には2枚の白い羽が出現する。



「あ、あなたはまさか……」



 僕やリリアナはその姿を見てもピンと来ていなかった。

 けど、真澄だけは彼女に心当たりがあったようだ。



「勇者軍特別顧問、ルミエル・ジヴリール様……?」


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