竜胆真澄
私の名前は竜胆真澄。将来の夢は勇者になって世界を救うこと。
そんな私の学校には人類の大敵である魔王、の次期候補が通っていた。
確たる証拠を得て、いざ討伐!
そう思っていたはずなのに……。
「ちょっと騒がしいけど……いや、だいぶ騒がしいけど気にしなくていいから。入って」
その魔王候補である先輩の家に招かれた。
オイル社との戦闘の後、しばらく休んで動けるようになったら、先輩にここまで案内された。
「ご主人! 話は聞きました! ご主人が大変な目にあっていたというのに、お傍にいられず申し訳ございません!!!!」
「いや、あの、土下座やめて? 竜胆が引いてるから」
赤髪の青年が涙を流しながら、地面に頭をこすりつけていた。
この人は確か神代梗夜。
まさか本当に先輩が従えてるとは……一体どんな手を使ったのだろうか。
「んーんーんーんー」
「で、風真さんはなんで玄関で磔にされてるんですか」
「んーん~~~~んーーー」
石柱にぐるぐる巻きにされているおじさんが何か言っているが、口も縛られているため何を言っているか分からない。
「ああ、またメイさんの着替えを覗こうとしたんですね」
なんで分かるの!?
「ん、無事で何より」
リビングに行くと、そこには金髪のギャルが優雅にくつろいでいた。
「『無事で何よりだ(キリッ)』、じゃないんだよ。なんで僕のSOS無視したの? ねぇ? なんで?」
「これもまたコンサルティング」
「そればっか! プリムラのバーカバーカ!」
パリンッ!
「へ?」
キッチンの方からティーカップが飛んできて、先輩の前を通り過ぎていった。
「あらあらあらあらあら、まぁまぁまぁまぁまぁ」
その直後、同じメイド服を着た女性がスっと先輩の真後ろに立つ。
「お姉様にバカとはなんですの?脳みそが腐っていますわねお姉様ほどの天才はこの世に存在しませんのよええもちろん神を含めてですわ万物はお姉様がこの世に存在してくださっていることを感謝すべきですわそれなのにあなたときたら本当に……殺しますわよ」
「はいすみません」
その女性は先輩の耳元で早口でまくし立てる。
「あら、お兄さま。帰ってましたの?」
買い物帰りなのかビニール袋を抱えた藍色の髪の少女がリビングにやって来た。
「あら、お隣の方は? お友達ですか?」
「ん? まぁ、そんなとこ」
「そうですか! では、今からお茶を入れますね」
少女は嬉しそうにキッチンの方へと駆けて行った。
「あの、今の子は?」
「僕の妹の茉奈花だ」
「妹? 先輩は妹にお兄さまって呼ばせてるんですか?」
「な、なにそのドン引きした顔は。違うから。茉奈花が勝手に呼んでるだけだから。強制とかしてないから!」
必死に否定しているところが怪しいと思うのだが。
いぶかしげに先輩の顔を覗き込んでいると……。
ドカンッ!!!!!
「こ、今度はなんすか!?」
上の階から不穏な爆発音が響く。
「またか……」
先輩はため息をつきながら、その爆発のあった上の階へと上がっていく。
気になるので、私もその後についていく。
「工作なら工場でやってって言ったじゃん、白撫」
「すまないのう。後で直すから許してほしいのじゃ」
2階に上がると、部屋が3つほど吹き飛んでおり爆炎を上げていた。
そして、そこにはスク水に白衣を羽織った少女が煤だらけで座り込んでいた。
「なななななな、なんて格好させてるんですか!? やっぱり先輩は変態じゃないですか!?」
「いや、待って。僕は年上にしか興味がないんだ」
「そう言う話をしているんじゃありません!!!」
これは粛清が必要ですね。今すぐ縛り上げて勇者軍に……あれ?
「誰か倒れてますけど?」
さっきの爆発に巻き込まれたのか、壊れた壁の近くに魔族の女の子が倒れていた。
「うぅ…………」
「大丈夫ですか?」
私はすぐさま駆け寄り、抱きかかえる。
「…………ひっ! 知らない人!?」
しかし、その少女は私の顔を見るなり、青ざめどこかへと逃げ去ってしまった。
……なんで?
「ああ、気にしなくていいよ。あれはただの引きこもりだから」
「とは言っても怪我は? 大丈夫なんですか?」
「平気平気。ゼラは白撫と部屋が隣だからいつもあれに巻き込まれてるし」
「いや、いつも巻き込まれてるから怪我しないに因果関係なさそうですが」
「と、まぁ、こんな感じで全員紹介できたし。あ、こっちの部屋は空いてるし、白撫の爆発に巻き込まれないから、いいよね?」
「はい? 何の話ですか?」
「何って、竜胆の部屋の話だけど?」
「私の部屋? あの、全然ついていけてないんですが……」
「いや、だから、今日から住む部屋の話だって」
「はあああああ!?!?!?!? 住むって、私が!? ここに!? なんでですか!?」
「だって、寝泊りするとこないだろ? 家、燃やされてたじゃん」
「あ……」
そうだ。私の家は黄統会に燃やされ住める状態じゃなかった。
「でも、どうして……?」
「どうしてって……え? プリムラと話がついてるって聞いてたんだけど?」
「……何も聞いてませんが」
「マジ!? ……クソ、またプリムラの独断かよ……」
「その、私は大丈夫ですから……。パトロールで野宿は慣れていますから。……だから、平気です」
『ほら、あれ……、竜胆さん家のお子さんよ』
『いい年して、勇者になろうとしてるんですって』
『そのためにあちこちに喧嘩売ってるって話よ。親が親なら子も子ね』
『嫌ねぇ、この間も報復のためにこの辺を怖い人たちがうろうろしてたものね』
『こっちはいい迷惑よねぇ。出来れば引っ越してほしいのだけれど』
『しっ、聞こえるわよ』
『おい、妄想女が登校してるってよ』
『マジかよ。あいついると変な言いがかりつけられそうで嫌なんだよ』
『それならまだマシだろ。この前なんか、同じ学校って理由だけであいつに恨みを持ってる連中にボコられた生徒いたって聞いたぜ』
『最悪じゃん。学校辞めてくんないかなぁ』
「……私は大丈夫ですから……、あの、先輩たちに迷惑がかかってしまいますし……ですので」
「いや、今さら?」
「え?」
「こっちはもう迷惑かけられてんの。変な人たちに襲われて大変だったし、体中痛いし」
「なら、なおさら、私なんか……」
「あ、もう、そう言うのいいから。うちに勝手に住んでる人たちとか問題ごと持ってくるどころか自発的にトラブル起こす連中ばっかりだし。ここまで来たら1人も2人も変わんないから」
私の心中など知る由もない先輩はなんてことないように受け流す。
「それよりも人増えたせいで家事の手が足りないんだよ。家事全般は茉奈花で、料理は梗夜君、掃除洗濯はメイさんがやってくれてるんだけどさ、他の人たちが全然家事出来なくてさ。いや、プリムラはたまにやってくれて入るんだけどね。それでもやっぱり回らないんだよね。竜胆は一人暮らししてたから、一通りできるでしょ?」
「え、ええ、まぁ……」
「いやぁ、よかった。家事もしないで居候してる人たちより、全然いいよ。だからさ……」
ああ、どうしてこの人は――。
「頼りにしてる」
私の欲しい言葉をくれるのだろうか。
「仕方ありませんね。先輩がそこまで言うなら、私が助けてあげます!」




