やっぱりこの世は金
「うわわわわわ……絶対ヤバそうな人たちでてきたんだけど……もうツムツム。さようなら。僕は死んだふりをすることにするよ」
「黄統会の組長っすね」
あ、聞いたことある名前。竜胆の家の前でおばあちゃんが言ってた極道じゃん。
組長の後ろにいるのってもしかしなくてもあれ全部部下? 2、300人はいるじゃんね?
このままじゃ、僕たちドラム缶にコンクリと一緒に詰められて東京湾に沈められちゃうじゃん。
「……いや、でも極道に喧嘩売ったの竜胆だけだし、僕関係ないし、見逃してもらえないかな」
「先輩、さっきからゲス思考駄々洩れですよ。後で粛清します」
竜胆はもうお亡くなりになるのは確定してるから、後とかないから、僕だけ悠々自適に暮らすから。
「よし、あの2人を殺せ」
え? 僕も? なんで?
「あの少年はどうせそこの女の部下だろう。生かしておいて、報復されても面倒だ」
「そう言う認識なの? 部下じゃないよ? だから、生かして。報復とか絶対しないから。お願い、助けて」
命乞いをしてみるが、聞く耳持たず、彼らは銃口を僕たちに向ける。
あ、これ、死んだわ。
「ところで、今回の報酬を頂けるかしら?」
今まさに僕らが撃ち殺されそうになった時だった。
サクヤが組長に依頼料を要求しだした。
「なんだ? こんな時に。まぁ、いい。おい」
組長は後ろに控えていたスーツの男に声をかける。
するとそのスーツの男がアタッシュケースをサクヤに手渡した。
「確認させてもらうわ」
サクヤがアタッシュケースを開け、中を覗く。
「…………提示された報酬の2割しか入っていないのだけれど?」
「なにを抜かしている。提示したのは成功報酬だ。あの女を殺せと依頼したにもかかわらず、まだ生きているじゃないか。むしろ、依頼失敗で金を払う必要すらないところ2割もやっていることに感謝するべきだろう」
「…………そう」
サクヤはアタッシュケースを抱えて、下がる。
そして……。
「メグ、やりなさい」
「了解。……ッカ」
ドカンッ!!!!!!
サクヤに命令されたメグが奥歯を鳴らした瞬間、組長の後ろに控えていた部下たちの中心が爆発した。
「な、なんだ!!」
ザシュ、ザシュ。パンパンパンッ!!!
予想だにしない爆発に混乱している彼らの中へアカリは飛び込んでいき、ナイフとハンドガンで極道連中を無力化していく。
メグもまた爆発の煙に紛れて、素手で敵を倒していく。
そして、僅か30秒。
300人近くいた敵を全て無力化していた。
「き、貴様ら一体どういうつもりだ……!」
ただ一人、敵の組長を除き。
「私は依頼主だぞ! その私を襲うなど……」
「ええ、さっきまではそうだったわね。でも、もう報酬は受け取って、依頼も終わった、ならあなたとの関係を繋げるものはないの。だから、ね。これから、私があなたに何してとしても許される。なんのつながりもない赤の他人なのだから」
「ふ、ふざけるな! 金渡して殺されるなんてことがあってたまるか!」
「それはこっちのセリフよ。資金がギリギリのこんな時にブラックカスタマーに当たった私の気持ちが分かるかしら? それはもう……許せないわ」
ガンッ!
サクヤは衝動のままにシャベルの面の部分で組長の頭をぶっ叩いた。
「ぐぎゃ……………」
そして、そのまま組長は意識を失って倒れた。
「え、えぇ~……何この状況?」
なんか内輪揉めみたいなの初めて勝手に敵が消えたんだけど?
どゆこと?
この人たちは味方なの? それともこれから殺されるの?
「…………」
サクヤが一歩一歩僕の方へと近づいてくる。
そのたびにドクドクと心臓の音が強くなっていく。
「唯野憐太郎……であってるかしら?」
サクヤはしゃがみ込んで僕の顔を見ながらそう問う。
「あ、はい……」
「そう、なら、あなたにこれを」
「?」
サクヤが渡してきたのは一枚の名刺。
「オイル社は金さえ積めばなんでもやるわ。世界を征服しろと言われれば、勇者を殺すし、地球を救えと言われれば、魔王を殺す。依頼料次第で神だって殺してあげる。それが私たち。私たちに何か依頼があったらいつでも連絡をくれていいわ。それと、ちゃんとお友達にも勧めておいて、これ絶対」
「あ、はい……」
サクヤの勢いに飲まれて名刺を受け取り、首を縦に振ってしまった。
「じゃあ、私たちはこれで失礼するわ。あなたからの依頼、楽しみにしてるわ」
そう言って、サクヤはメグとアカリを連れて本当に帰っていった。
「え、なにこれ? 終わったの?」
「……じゃないすか?」
「なんかぬるっと終わってない? あんまりスッキリしないんだけど」
「生きてたんだからいいじゃないすか」
「いや、まぁ、そうなんだけど」
僕はサクヤから貰った名刺を見つめる。
そして……。
「すぅ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!」
「嗅ぐな! 変態!」
少し体力が戻ったのか竜胆から鋭いツッコミが入った。
「し、仕方ないだろ! いい匂いしたんだもん!!!!!」
「だからって嗅がないでください! 粛清しますよ!」
「サクヤ……さん、かぁ」
「なに物思いにふけているんですか。気持ち悪いです」
「だって、凛としてて強くて女社長でザ・大人の女性って感じで色気ヤバかった。特に足。サイドスリットのスカートから覗く太ももがえちちで、しかもあのパンツが見えそうで見えないあのギリギリの感じがもどかしくて最高でした。あと、おっぱい大きかった」
「クソですね」
「金さえ積めばなんでもしてくれるって言ってたよね。…………なんでも……ゴクリ」
「あ、もしもし、警察ですか? はい、不審者です」
ピーポーピーポーピーポーピーポー。
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「これでよかったのよね? ミユキ」
憐太郎たちから離れてミユキが隠れていた部屋に戻って来たオイル社一同。
「ジャガジャガ……うん、これが一番お金になる」
じゃがりこを食べながら、ミユキはそう答えた。
「彼の名は唯野憐太郎。素性はよく知らないけど、彼を慕い、最近、彼の部下になった人が何人かいるみたいなんだけどね。その中の1人が……」
「神代梗夜」
「そうそう、せいかーい」
「間違いないんでしょうね。彼がカミシログループの御曹司なのは」
「ばっちしよ。2日分のポテチをかけてもいい」
「そう、なら、私たちはついにこれでカミシログループと繋がりを持てたということね?」
「え? いや、それは……どうなの? まだ、名刺渡しただけでしょ? 本人には渡してないんでしょ?」
「問題ないわ。彼にはお友達にも勧めてと念を押しておいたから」
「……それで繋がり持てたら誰も苦労しなさそう~」
「ふふ、順調ね。私の野望はもうすぐそこまで来ているわ」
オイル社会長――山田サクヤ。
将来の夢――億万長者。
「あ、あ、あの、会長……」
「どうしたのかしら、アカリ?」
一部ではあるが報酬が入り、カミシログループとの繋がりを持てたと思っているサクヤは上機嫌だった。
「こ、これを……」
そんな時、アカリが一封の封筒を持ってきた。
「何かしら?」
サクヤは封を開け、中を確認する。
そこに入っていたものは……。
「請求書?」
川越で暴れまわり、建物を破壊し、田んぼも荒らしてしまっていたため、それらの請求が全てサクヤ宛てになっていた。
恐らく、こうなることが分かっていた組長が事前にオイル社に事後処理を押し付ける根回しをしていたのだろう。
「こ、こんなの、今日貰った報酬が全部消えちゃうじゃないの!」
サクヤは膝を折り、空を仰ぐ。
「どうして、いつもこうなるのよーーーーーー!!!!!!」




