夢幻魔法
「ってことがあったんだけどさ」
家に帰ってすぐ、竜胆のことをプリムラに相談した。
「なんだ、彼女のこと知らなかったのか?」
今のプリムラはギャル状態を解除した銀髪魔女本来の姿になっていた。
「いや、知らないよ。だって、今日初めて会ったんだよ?」
「この辺じゃ有名だぞ。やたら正義感の強い女子高生がいるって。それで度々トラブル起こしていて、迷惑しているらしい」
「いいのそれ? 未来の勇者じゃないの?」
「いや、あれは彼女が勝手に言っているだけだ。勇者候補でも何でもないぞ」
「え、そうなの?」
「実績を積めばなれると思っているらしく、ここらへんで悪さをしている連中に片っ端から喧嘩を売っているらしい」
さっきガラの悪い連中が襲って来たのは竜胆自身が蒔いた種ってことなのか。
「それで、僕はどうすればいいのさ? 毎日、あんなのに絡まれてたら身が持たないんだけど?」
「簡単な話だ。力で屈服させればいい」
「出来るか!!!!! 竜胆の強さ知らないのかよ! チートみたいな魔法使うんだぞ!!」
「チート? 彼女の魔法はそんなすごいものではないぞ」
「いや、何言ってんの!? 空飛んだり、不死になったり出来るんだよ!?」
「空ならお前も飛んでいただろう?」
「いや、それはそうだけどさ。でも、不死だよ不死! 心臓撃たれても生きてたよ!? あれは!? チートじゃん!」
「だから、チートではないと言っているだろう。彼女の魔法には明確な弱点もある」
「明確な弱点? ウソだぁ~。ないってそんなの。てか、そもそもあの魔法は何? たった一つの属性で再現できるものなの?」
「彼女の魔力は夢幻属性だ」
「むげん……? なにそれ?」
「イメージを具現化出来る魔力だ」
「え、ずっる。やっぱチートじゃん」
「本当にそう思うか?」
「だって、なんでも作れちゃうってことでしょ? 最強じゃん」
「夢幻魔法は生成系魔法の下位互換だと世間では認知されている。評価は高くない。むしろ外れの分類だ」
「えぇ~、竜胆の見てたらそうは思えないんだけど?」
「生産系の魔法で生成したものは、魔力が尽きたとしても永遠に残り続ける。だが、夢幻魔法は常にイメージを頭に思い浮かべていなければ、実体化を維持できず、魔力が尽きれば当然消え去る。その名の通り、夢や幻のように儚い一時の現象に過ぎない」
「でも、普通の生産系魔法と違ってその物に色んな能力付与出来るんでしょ? なんでも斬れる剣とか空飛べるマントとか死ななくなる星の冠とか。竜胆はそう言うの作ってたよ」
「あれは彼女が特殊なだけだ。夢幻魔法はイメージを忠実に再現する。だから、そのイメージにノイズが入れば、魔法自体発動しないシビアな魔法だ」
「どういうこと?」
「さっき死ななくなる星の冠と言ったな。そんなもの存在すると思うか?」
「あり得ないよ。あれでなんで死ななくなるのかわけわかんないし」
「そう、その『分からない』がノイズだ。イメージをするにあたり、構造や原理に少しでも不明な点があれば魔法として成立しなくなる。そのせいで、一般的に夢幻魔法は実在しそのもの自体をよく知らなければ具現化することが出来ない。しかも、一時のみだ。それなら他の生産系魔法の方が使い勝手がいいだろう?」
「ほへ~、夢幻魔法が使いづらいのは分かったけど、じゃあなんで竜胆は普通にあんなチートみたいな武器を具現化出来てるのさ?」
「考えられる可能性は1つだけだろう。彼女は自身のイメージするものに一切の疑問を持っていないのだろう。彼女の中ではなんでも斬れる剣も空を飛べるマントも不死の冠も当たり前のように存在しているということだ」
「それってつまり……」
「彼女は思い込みが激しく妄想癖のある単純バカというだけの話だ」




