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自称コンサルタントのギャルが僕を魔王にしようとしてくる  作者: 結生
第二章 枯れた花は夢を見る

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エントリーシートの自己PR書くことないや

 今日はリリアナたちが襲撃してきた後の初登校日だ。

 学校自体はあったのだが、体中痛すぎてそれどころではなかった。



「んな!! おい! ババァ! その茶碗はご主人の分だぞ! 勝手に持ってくな!」

「この世の食事はお姉さまが優先されるのですわ」

「ねぇ、おじさん、朝はパン派なんだけど、ある?」

「のう、梗夜、わしのプリン知らぬかの?」

「白撫さんは甘いものだけじゃなくて、もっとちゃんとしたものを食べてください」



 てか、この人たち朝からうるさいんだけど。

 少し前までは妹と2人暮らしだったから、静かなものだったけど、今は茉奈花、プリムラ、梗夜君、メイさん、白撫、風真さん、ゼラの8人暮らしになったのだから当然と言えば当然だろう。

 なお、ゼラは未だに僕以外の人とは馴染めず、部屋に籠りっきりでここにはいない。

 ちょうど茉奈花がゼラ用の朝ごはんを部屋に持って行く後姿が見えた。



「で、プリムラは何してるの?」



 メイさんが配膳してくる朝食を物凄い勢いで口に運びながら、片手でタブレットを叩いている。

 あの分じゃ、今日の朝食も僕の分はプリムラの腹の中だろう。



「これはエントリーシートをね、書いてるんだよ」


「エントリーシート? 就活でもするの?」


「就活、まぁそんな感じ~」


「へぇ、プリムラ働くんだ」



 なんだっけ、確かコンサルタント(笑)でしたっけ。



「そんなわけないじゃん? これはレンタローのエントリーシートに決まってるでしょ」


「はい?」



 僕の? なんで? 働きたくないし、就活もしたくないんですが。

 仮に労働意欲があったとしてもプリムラがES書いてるの最高に意味わかんない。



「魔王継承戦に参加するんだから、出さなきゃだし」


「魔王継承戦!?」



 初めて聞いたけど、絶対参加しちゃダメなやつなのは分かる。



「絶対そのエントリーシート出さないで!」


「なんで?」


「言わなくても分かるでしょ!」


「文句ばっかり。でもね、これさえ出せば命は保証してくれるんだよ」


「そんなわけないじゃん! 明らかに揉め事に巻き込まれるやつじゃん! こないだのこともう忘れたの!? また襲われたりしたら嫌だよ!」


「その逆。継承戦は厳格なルールの元に行われるの。ESを提出して正式な魔王候補になれば、理由もなく襲われることはなくなるんだよ。継承戦のルールが記載されている制約文書(ギアススクロール)では勝手な契約者同士の戦闘を禁じてるからね~。これを破れば魔王候補の資格が失われちゃう。だから、これは自衛のためでもあるの。おーけー?」


「そうなんだ、それならES提出した方がいいね……ん? 待って? それなら最初からそれ出しとけば今まで襲われることなかったのでは?」


「後はナンバーズをどうするかだよねー」


「今、無視した? もしかして、この間のリリアナたちのやつプリムラ仕込んでたりした?」


「たいへん! このままじゃ自己PR欄が空欄よ~」



 ガ・ン・無・視。


 あ、これ確定だわ。プリムラのやつ裏で動いてやがった。最低だ。この悪魔!

 最初からおかしいと思ってたんだよ。

 プリムラは姿を変える魔法が使えるんだから、ハートの人たちに見つからずに僕と接触することも出来たのにそうはしなかった。

 わざと僕の存在をハート陣営にばらしたと言っても過言ではない。

 僕を魔王にするためにとは言え、やりすぎな気もする。

 この前は何とかなったけど……もしかしてその辺上手く調整しているのか?

 僕たちの誰かが死んじゃったりしたら元も子もないし。

 プリムラのことだし、ありえなくはない。

 まぁ、何事もなく終わったことだし、今更あれこれ言ってもプリムラには意味ないだろう。

 それよりも今はもっと気になることがある。



「てかさてかさ、冷静に考えてESってなに? 今時の魔王ってそんなもの書いてるの? 誰が見んのよ」


「継承委員会だね。経歴が不明な者を誤って魔王にしないようにね。それから、数札(スポット)10人と絵札(コート)のメンバー確認もあるね」


「け、継承委員会? 選挙管理委員会的なやつ? そんなのあるの? なんかもっと怖くて強い人が魔王になるとかだと思ってた」


「それは偏見」



 いや、今まで会ってきた魔族たちがそんな感じだったんだけども?



「最近は魔界でもIT化が進んで、こうした公的手続きもタブレットから出来るようになったんだよ。便利だよね~」



 魔界ってもっと野蛮な感じしてたけど、意外とちゃんとしてるのね。



「まぁ、それ出すだけで襲われることがなくなるなら出し得だね。で、どんなこと書いてるの?」



 プリムラが変なことを書いていないか、チラッとタブレットを覗き込む。



「えっと、保有資格が……公認会計士、日商簿記1級、税理士、中小企業診断士、TOIEC990点……他にも聞いたことない資格がつらつらと……ねぇ、いいの? 公的手続きなんでしょ? バレたら怒られるでしょこれ」


「だいじょーぶ! バレる前に資格を取ればいいだけの話だし」


「は……? いやいやいやいや!! 無理無理無理!! ぜえええぇぇぇったい無理だって! 背伸びし過ぎなんだって! てかてかこの資格の羅列なに!? 社長にでもなるの!?」


「魔界を会社と見立てればあるいは」


「魔王って社長だった!?」


「ごちゃごちゃ言わない。もうこれで提出するから」


「あ……」



 止める間もなくプリムラがESを送ってしまった。



「何やってんの!?」


「あ、そう言えば自己PR空欄のままだった」


「何やってんの!?」


「しょうがないじゃん。レンタローにアピールポイントがないだもん」



あんだけ適当に資格でっちあげられるなら、長所もでっちあげなよ!

傷つくぞ!



「……あ、ちょっと待って。ナンバーズは? まだ全員決まってないよね!? これでES受領されなかったら、また他の魔王候補が襲ってくるかもってこと!?」


「あ、それは平気。ES提出段階なら半数以上が決まってれば平気だから」



 1~13の番号が振られてて、僕が13だから残りは12で、その半数ってことは……。



「え? 数合わなくない? 必要なのって僕除いて6人だよね? プリムラ、梗夜君、メイさん、白撫、風真さん……5人しかいないけど? 半分いってないけど!?」


「何言ってるの? ゼラっちいれたら6人でしょ?」


「それ僕断ったんだけど!?」


「? レンタローの意思なんて関係ないよ。本人にやる気があればいいじゃん」


「んな、メチャクチャな……」


「おい、プリムラ! さっきESを送ったって聞こえたが、本当か!?」



 さっきまでメイさんと言い争いをしていた梗夜君が話に割って入ってきた。



「うん、出したよ」


「数字は!? 俺はいくつで登録した!」



 数字……あぁ、そう言えば、1人1人にトランプみたいに番号が与えられるんだっけ。

 僕はK(キング)、プリムラはQ(クイーン)なのは聞いてたけど、みんながいくつなのかは聞いてなかった。



「梗夜、お前はクローバーの10(テン)だ」


「な、なにぃ!!!! なんで、エースかジャックじゃないんだ!」



 エースとジャックはなんか強そうな人を置きそうな感じあるよね。

 でも、これって意味とかあるのかな?



「ジャックってのは王の右腕的存在だろ? なら、俺じゃねぇか!」


「ちっちっ、いい? 10(テン)数札(コート)の中で最も数字が大きいんだよ。これの意味が何を指しているか分かる? いわば、数札(コート)のリーダー的存在っしょ? それを任せられるのは?」


「……そ、そうか。なら仕方ねぇな! 俺がやってやるよ!」



 梗夜君は上機嫌で厨房の方へと戻っていった。



「で、実際のとこどうなの?」



 多分、プリムラは嘘をついた。だから、こっそり本当はどういった意味があるのか聞いてみた。



「通例なら各魔王候補たちが意味をつけてるよ。例えばハート陣営なら、2は一番槍でJが陣営最高戦力みたいな」


「え、そうなの? 僕、何も考えてないけど」


「うん、だからうちの陣営は初代魔王にならうことにしたよ」


「まぁ、僕的には何でもいいから使いまわしには賛成だけど、10にはどんな意味があるの?」


10(テン)が持つ意味は『抑圧』」


「あ~、なるほど。ぴったりだね」



 確かに抑圧されてそうだもんね。家のこととか。



「ちなみに他の人は?」


「メイちゃんはクローバーの2(デュース)。その意味は『努力』」


「ど、努力?」



 あまりイメージがないのだが、近くで聞いていたメイさんは俯きながら頬を赤らめていた。

 え? なにあれ? なんなのあの反応。絶対いつもだったら、お姉さま! って大声出してはしゃいでるのに。

 急に湿度あげてくるじゃん。こわっ。



「シロろんはクローバーのA(エース)。その意味は『創造』」



 白撫がエース? って違和感があったけど、そこに込められた意味を聞いて納得した。

創造力なら白撫だろう。

 それにこの前もめちゃくちゃ仕事してくれたし、エース的なポジでもいいだろう。



「風おじはクローバーの8(エイト)。その意味は『機転』」



 忍者だから? まぁ、風真さんがいくつとかその意味とか割とどうでもいいって気持ちの方が買ってるからなぁ。

 当の本人は朝から酒飲んでるし。どうせカシオレ。


 他の数札の意味をプリムラが教えてくれ、まとめると以下のようになるようだ。


1《エース》:創造

――無きものを生み、まだ見ぬ可能性を形にする者。

2《デュース》:努力

――才に恵まれずとも、歩みを止めぬ者。

3《トレス》:調和

――いずれにも染まらず、異なるものを等しく見つめる者。

4《ケイト》:対立

――己が信念のためならば、世界を敵に回すことさえ厭わぬ者。

5《シンク》:反転

――定められた流れを覆し、不可能を可能へと転じる者。

6《サイス》:勝利

――いかなる窮地にあろうとも、最後に勝利を掴み取る者。

7《セブン》:勇気

――恐れを知り、それでもなお一歩を踏み出せる者。

8《エイト》:機転

――移ろう状況を見極め、その一瞬に最善を選び取る者。

9《ナイン》:守護

――己を顧みず、大切なもののために立ちはだかる者。

10《テン》:抑圧

――縛られ、虐げられようとも、己を失わず耐え抜く者。



「待てよ? それぞれの数字に意味があるなら、絵札の僕やプリムラにも何かしら意味があるって言うのか?」


「あ、もうすぐ登校の時間だ。準備しなきゃ」


「あ、逃げやがった」



 聞かれて困ることだったのか?

 でも、今思うと僕もあまり聞きたくないかも。マイナスな意味とかだったら嫌だし。知らぬが仏。

 ま、そんなの置いておいて、僕も学校行く準備しないと。



Jジャック:友情

――喜びも痛みも分かち合い、隣に立ち続ける者。



Kキング:包容

――異なるすべてを受け入れ、共に在ることを望む者。



 そして、Q(クイーン)

 その意味は――。



――『信頼』

――己を託し、また託されることのできる者。


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