美しき天使様
魔族には選ばれた者のみに与えられる魔力が存在する。
そう、闇の魔力である。
対照的に人間側にも選ばれた者のみに与えられる魔力がある。
それは星属性。
星属性の魔力は生まれながらに与えられるものではなく、後天的に発現するものである。
そして、発現出来るのは勇者に選ばれた者のみ。
その勇者の選定者であり、星属性に魔力を変質させることが出来る者こそが神から遣わされた天使族である。
現在、勇者軍に所属している天使族はルミエル・ジヴリール、ただ一人である。
「これはひどい有様ですね」
そんな天使族であるルミエルは報告を受け、池袋へやってきていた。
「ほとんどさら地ではありませんか」
立ち入り禁止となっている池袋へ平然と入っていく。
「止まりなさい。ここから先は一般時の立ち入りを禁止しています」
当然、警備していた警察に警告を受ける。
「ああ、そうでしたね。認識阻害を解かなくてはですね」
ヘイローに白い羽、天使の姿で出歩けば目立ちすぎてしまう。その為、ルミエルは一般人と同じに見えるよう擬態している。
今、その認識阻害を解き、警察に天使の姿を見せる。
「私は勇者軍特別顧問のルミエル・ジヴリールです」
「っ! これは失礼しました!」
「いいえ、日本の警察は優秀ですね。その調子で警備をお願いします。ところで、現在把握できている情報を頂いても?」
「はい。4日程前、ここ池袋と埼玉の富士見市で大規模な戦闘を確認しました。池袋では目撃情報が多数上がっていますが、富士見市に関しては目撃者がおらず、戦闘の跡だけが残っていました」
「魔王候補が関わっていると聞いていますが、何か確証があるのですか?」
「池袋での目撃情報とハートのJであるクリームヒルトの特徴が一致しているため、その可能性があるかと」
「なるほど、そういうことですか。では、彼女の目的についてそちらの見解は?」
「戦闘が起きる前に、店内で口論している姿を見たとの証言が多数寄せられており、恐らく……」
「ただの喧嘩、と言うことですか?」
「…………」
警官は答えづらそうに首を縦に振った。
それもそのはず。ただの口論で池袋が崩壊してしまったなど世間に公表出来るはずもない。
「はぁ……、クリームヒルトに関しては魔王候補の部下であるため、対処が少々面倒ですね。ですが、喧嘩相手の魔族に関しては別です。日本は中立国。喧嘩と言えど、魔族が魔法を使ってここまでの被害を出してしまっては、それ相応の責任を取ってもらわないといけません。が、クリームヒルトが相手では流石にもう生きてはいないでしょう」
「あ、いや……それが今は病院にいまして……」
「クリームヒルトを相手にしてまだ生きているのですか? 彼女であれば止めを刺しそうなものですが」
「どうやら相打ちだったようで」
「相打ち……? 彼女と渡り合える魔族など限られますが、どなたです?」
「……魔族、ではないのです」
「え?」
「クリームヒルトと戦ったのは、人間の女子高生です」
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池袋から少し離れたとある病院。
僕とプリムラはそこに入院している委員長のお見舞いにやってきた。
「まさか委員長もハートの被害を受けてたなんて」
「いやー、あーしも流石に予想外だよー。ブクロがメチャクチャになってるんだもん。埼玉県民は実質外出禁止じゃんね」
「確かに埼玉の人は池袋以外の遊び場知らないしね」
ロビーで受付を済ませて委員長の病室に向かう。
「えっと、委員長の病室は……あれ? 誰かいる」
委員長の病室の前に白衣を着た医師と見知らぬ女性がなにやら話し込んでいた。
え? てか、あのお姉さんめちゃくちゃ美人じゃん。モデル? 女優? 委員長にあんな知り合いがいたなんて。
しかもピンク髪だ。間違いなくスケベな人だと分かる。だってピンク髪だもん。
「おや?」
美人のお姉さんが僕たちに気が付き、声をかけてきた。
「彼女のお友達ですか?」
「はい、クラスメイトですけど」
「そうですか。あまり深刻にならずに、きっと良くなりますから」
お姉さんはそう言って、僕の肩を軽く叩いて、そのまま帰っていった。
「え? 何今の反応。委員長の容体ってそんなに悪いの?」
委員長のことが心配になる僕に対し、プリムラは遠ざかっていくお姉さんの背中をじっと見ていた。
「プリムラ、知り合い?」
「んー、会ったことはないけど、知ってはいるかな。でも、今は関係ないから後でね」
ってことはやっぱり有名人なのか。なんとなく声に聞き覚えあるし、テレビで見たかも。写真集とかあるのかな。後で調べてみよ。
「君たち、恋羽衣さんの友人のようだけど」
今度は医師の先生が僕たちに話しかけてきた。
「出来れば、面会は避けて欲しいのだが」
「え? そんなに酷い怪我なんですか?」
「体の方はほとんど治っているのだが……心へのダメージが大きく、受け答えがはっきりしないのです」
「あの委員長がそこまで……」
これは出直した方が良さそうだ。
「分かりました。では、今日は……「委員長、いるー?」
帰ろう。と言おうとした瞬間、プリムラが空気を読まず、勝手に病室の中に入っていく。
「バカ! 話聞いてなかったの!?」
医師も大慌てで僕と一緒にプリムラを連れ戻すために病室の中に入る。
「委員長、喧嘩したんだって? なんでー?」
あーもう、この悪魔が。人の心がないんか? どう考えてもこの流れでそれ聞いちゃいけないやつでしょ。
「プリムラか。聞いてくれ。彼女が逆カプだったんだ。許せないだろう?」
ふむ、なるほど。
「先生、あの人もう退院させましょう」




