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自称コンサルタントのギャルが僕を魔王にしようとしてくる  作者: 結生
第一章 野に咲く花に祝福を

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大罪魔法

天使の奔滝(エンジェルフォール)



 クルスの頭上に半径数百メートルほどの巨大な水の塊が生成され、無慈悲にそれは落ちてくる。



「“ガンマ・バースト”」



 が漆黒の電磁袍を放ちそれが墜落する前に上空で弾き飛ばした。



「悪い、プリムラ。少し遅れた」


「問題ないわ。それで方針は決まった?」


「よく知らないが、燕時が魔法を使うらしい。その発動に時間がかかるからそれまで足止めする。って言いってもプリムラのことだ。どうせ知ってるんだろうけど」


「どうしてそう思う?」


「コンサルタントは何でも知ってるんだろ?」


「よろしい」



 にしても、あのクルスとかいうやつはとんでもねぇな。

 幻想級魔法をバカスカ撃ってるのに全く魔力が尽きる気配がない。

 いや、この場合、魔力量がバカげてるのはメイの方か。

 魔女の中でも別格ってことか。

 けど、それならなおさら解せないな。

 これだけの力があればリリアナと共闘していたら俺に勝ち目はなかった。

 なのになんでリリアナがやられてから出てきたんだ?

 メイの体を乗っ取る条件を満たしていなくて遅れた。なら納得は出来るが。

 ……止めよう。自分の都合のいいように解釈をすれば、足元をすくわれかねない。

 奴には俺以外の目的があると想定して動いた方がいいな。



「憐太郎」


「おっと」



 考え事をしていたら、水が散弾のように降って来た。

 プリムラの呼び声で現実に引き戻された俺は咄嗟に回避行動に移る。



「多少は我慢してくれよ」



 散弾の雨を躱しながら、クルスへ向けて、右手を払う。



「“ターミネイト・ロー”」



 五指の指先から放たれた斬撃がクルスを襲う。

 メイの体だが、少しばかりの傷は勘弁してもらおう。



「“海竜の牢獄アクアリウム”」



 しかし、クルスは自身の周囲を水で覆い俺の斬撃を防いだ。



「マジか」



 加減したとはいえ、あんな水で防がれるとは。



「そう悲観するな。あれはメイの持つ絶対防御だ。破れるのは幻想級以上の魔法くらいだ」



 冷静に解説してくれるプリムラだが、言っていることが本当なら突破方法がない。

 幻想級以上の魔法なんて、神話級、もしくは天冠級しかない。

 今の僕が使える魔法はせいぜいが精霊級。幻想級に一歩及ばない。

 可能性があるとすれば、燕時の魔法くらいだがまだ時間がかかりそうだ。



「“海水の大蛇(シィーサーペント)”」


「うおっ!」



 地面から蛇の形をした海水が足にのびてきた。

 燕時の方へ視線を向けた隙をつかれ、足に巻き付いて来た蛇に体を持って行かれ、上空へ投げ飛ばされた。



「“海帝の撃鉄(アビス・インパクト)”」



 俺がすっ飛ばされた先に巨大な拳が振り下ろされる。



「まったく世話が焼ける」


「ちょ、なにして……」



 飛び上がって来たプリムラが俺を足場にして、水の拳に向かってさらに飛ぶ。



八重付与魔法オクタプルエンチャント身体強化リインフォース”」



 大鎌の一振りだけでクリスの魔法を真っ二つに切り裂いた。



「クッソ。あいつ俺を踏み台にしやがって!」



 っと、プリムラへのクレームは後回しだ。

 どうやら燕時の下準備が終わったようだ。



「――それは不死鳥。永遠の時を持つもの」



 詠唱に入った。

 梗夜がたまに使っているが、詠唱魔法は本来非効率なもの。

 発動に時間がかかり、現代の魔法観では廃れた過去の遺物。

 だが、それでも詠唱魔法には強みがある。

 詠唱さえ同じならば誰でも同じ効果を得られる。



「――それはウルスス。美しかったもの」



 魔導書ってのが何なのか分からないが、白撫の言い方的に代々勇者軍内で受け継がれてきた魔法ってところだろう。

 生まれ持った魔法属性に関係なく扱える魔法。



「――それはタウルス。怪物にして神聖なるもの」



 いや、今はあの魔法について考えている場合ではないな。

 この詠唱を邪魔されないようにクルスを足止めする。



「――それはエクゥス・アシヌス。愚鈍なるもの」



 プリムラと共にクルスとの距離を詰めようと地面を蹴る。

 しかし、先に動いたのはクルスだった。



大罪魔法(・・・・)か。黙って撃たせるわけないだろう」



 クルスは俺とプリムラの間を抜けて、燕時へ迫る。

 勢いよく地面を蹴ってしまったせいで、俺とプリムラは止まれず、反応が遅れる。



「――それは誰しもが抱く、抗うことなき倦怠」



 目の前にクルスが迫ってきても、燕時は動揺することなく詠唱を続ける。



「悪いがこっから先は通行止めだ」



 梗夜が銃口から青い炎を放つ。



「――それは歩みを止める鎖」



 その炎に対し、クルスが高出力の水をぶつけ、水蒸気を発生させる。

 それは白い煙となって視界を奪う。



「――それは意思を鈍らせる枷」



 姿は見えなくなっても燕時の詠唱だけは聞こえる。

 プリムラが咄嗟に大鎌を振り回して、煙を払う。

 すると、燕時の持つ魔導書に手を伸ばすクルスの姿があった。



「こっちの狙いを見抜けなかった君らの負けだ」



 やはり、やつの狙いは別にあった。

 燕時の持つ魔導書。

 あれを自分の目の前で使わせる。

 今までのすべてがこの状況を作り出すための布石。



「貰った」



 クルスの左手が魔導書を掴みもぎ取った。



「これで……なに?」



 しかし、手にした魔導書とさっきまで詠唱していた燕時の姿が黒い煙となって霧散した。



「何をした!」



 クルスは迷わず俺を睨みつける。



「あんたが何か企んでるのは分かってたからな。手をうったさ」



 “ホロウ・イプシロン”

 事前に燕時の姿を模した分身を用意し、梗夜に守らせていた。

 つまり――。



「それは栄光を腐らせる鉄」



 燕時の詠唱は止まっていない。

 クルスは辺りを見渡し燕時の姿を探す。

 けど、地上に彼の姿はなかった。



「――人よ眠れ。獣よ膝をつけ。神よ玉座を降りよ。

 ――すべてを堕落へ導く腐朽の鉄鎖」



 そして、詠唱が完了する。



「“怠惰の鎖(アケディア・カテーナ)”」



 漆黒の光と共に地面から無数の鎖が飛び出し、クルスを狙う。



「っち。地面に隠れていたのか」



 クルスは苦虫を嚙み潰したような表情で上空を飛び回り、鎖を回避していく。

 正直なところあれがどんな魔法か分からない。

 けど、必死こいて逃げ回っている彼女の姿を見れば、あれで拘束さえしてしまえばいいと分かる。



「そう逃げるなよ。魔女王様」



 足から魔力を噴出させ、クルスの行く手に先回りする。



「邪魔だ、どけ!」



 余裕のなくなったクルスから今まで以上の魔力上昇を感じる。



「“海神の激昂(アビス・ラグナロク)”!」



 クルスが作り出したのは数百メートルを超える神の化身。

 その右手には三叉の槍。

 恐らく、神話級魔法。


 俺一人じゃどうしようもないな。



「プリムラぁあ!!!」



 彼女の名を呼ぶ。

 今どこにいるかなんてわからないし、そっちに視線を向けてる余裕もない。

 だから、信じる。



「“ルルワ・オミクロン”」



 闇の魔力で形成した抜き身の刀。

 一メートルに満たない大きさだが、プリムラの魔法があれば。



十重付与魔法ディカプルエンチャント身体強化リインフォース”」



 筋力の増加を感じる。

 プリムラに意図は伝わったようだ。



十重付与魔法ディカプルエンチャント巨大化グロウマキナ”」



 刀を振りかぶった瞬間、刀身だけが伸びていき、クルスの魔法と同等のサイズまで成長する。



十重付与魔法ディカプルエンチャント対魔法特攻マギアベイン”」



 次に刀身が赤黒い光に包まれる。

 魔法の効果は知らない。

 けど、意味のあるものだと直感できる。

 そこに俺の魔力を重ねて包む。



「断ち――切る!」



 力の限り巨大化した刀を振り下ろす。



「……なっ!」



 クルスの神話級魔法、だけでなく彼女を守っていた水の障壁まで一刀両断する。

 彼女の驚いた表情とその後ろから巻き付く鎖が見えた。



「く……そ、……魔力が」



 その光景を最後に僕は意識を手放した。


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