ハートの魔王候補
プリムラ? まだ外にいるはず。ハートの魔王候補? 雰囲気別人っぽいけど? 人格付与魔法か?
想定していなかった事態に思考が定まらずぐるぐるとめぐる。
「ここにたどり着いたのは2人。最大の障壁となるプリムラをクリスタが抑えてくれている間に決着をつけたいものね」
彼女の口から聞こえる声もプリムラと全く同じ。
それでも別人だというのなら。
「もしかして、プリムラって双子なのか?」
「いいや、そういうレベルの話ではなさそうじゃ」
僕の言葉を否定した白撫の瞳が紫紺に光る。
あれは白撫の魔法、鑑定眼を発動させているときにみられる光だ。
白撫は微弱な電磁波を飛ばし、対象の構成構造全てを見抜くことが出来る。
「あれは、まったくの同一個体じゃ」
「じゃあ、やっぱりあれはプリムラってこと?」
「そうではない。外身がまったく同じだけで、中身は全くの別物じゃ」
「臓器の数が少ないとか?」
「バカ者め。魂のことじゃ」
ということは、プリムラの体に別の人が入っているとかそういうことなのだろうか。
「流石は久井目家の天才少女ね。もう私たちのことを見抜くなんてね。それとも誰かに聞いたことがあるのかしら?」
「ばっちゃから聞いたことがある。魔界唯一の魔女の国、セレスティア王国から研究の依頼が来たと」
「そうね。でも、彼女は断ったそうね」
「当然じゃ、あの研究に“ロマン”はなかったのじゃから」
「そうかしら? セレスティア王国ではその“ロマン”だと思われているみたいだけれど」
「あんなものとうの昔に廃棄されたプロジェクトだと思っておったがのう。まさか、実用化に至っていたとは」
「そのプロジェクトってのは何なんだ? プリムラに関係があるのか?」
「ワルプルギス計画。歴代で魔女が魔王になった例はなかった。その前例を覆すための計画。実効的に魔女の中から魔王候補を生み出すと言うものだった」
「生み出すと言っても闇の魔力が宿るかは運次第。じゃが、闇の魔力を持って生まれる子供が現れる周期はある程度決まっておる。セレスティア王国はその周期を利用したのじゃ」
魔王候補たちによる魔王選定戦は五十年おきに行われると言っていた。
ってことはそれが始まるまえの間ってことか?
「何もしなければほぼ0%だけれど、この計画によってその確率を飛躍的に上げる方法を考え出した。その周期が来るタイミングで大量の魔女の子を産む。これだけ、たったこれだけで魔女の魔王候補が生まれる可能性が上がるのよ」
「魔女といえども体は人間、そうやすやすと子供をポンポン埋めるわけではない。それを解消するための方法をわしのばっちゃんに依頼したんじゃろ。胸糞悪い話じゃ」
「でも、国は独自で開発し、成功した」
ここまで聞けば、流石の僕にも分かった。
プリムラとリリアナ。彼女たちが普通の魔女じゃないことを。その正体を。
「そうして生まれたのが私たち――
――ホムンクルスよ」




