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自称コンサルタントのギャルが僕を魔王にしようとしてくる  作者: 結生
第一章 野に咲く花に祝福を

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空っぽのホムンクルス

 プリムラ? まだ外にいるはず。ハートの魔王候補? 雰囲気別人っぽいけど? 人格付与魔法か?

 想定していなかった事態に思考が定まらずぐるぐるとめぐる。



「ここにたどり着いたのは2人。最大の障壁となるプリムラをクリスタが抑えてくれている間に決着をつけたいものね」



 彼女の口から聞こえる声もプリムラと全く同じ。

 それでも別人だというのなら。



「もしかして、プリムラって双子なのか?」


「いいや、そういうレベルの話ではなさそうじゃ」



 僕の言葉を否定した白撫の瞳が紫紺に光る。

 あれは白撫の魔法、鑑定眼を発動させているときにみられる光だ。

 白撫は微弱な電磁波を飛ばし、対象の構成構造全てを見抜くことが出来る。



「あれは、まったくの同一個体じゃ」


「じゃあ、やっぱりあれはプリムラってこと?」


「そうではない。外身がまったく同じだけで、中身は全くの別物じゃ」


「臓器の数が少ないとか?」


「バカ者め。魂のことじゃ」



 ということは、プリムラの体に別の人が入っているとかそういうことなのだろうか。



「流石は久井目家の天才少女ね。もう私たちのことを見抜くなんてね。それとも誰かに聞いたことがあるのかしら?」


「ばっちゃから聞いたことがある。魔界唯一の魔女の国、セレスティア王国から研究の依頼が来たと」


「そうね。でも、彼女は断ったそうね」


「当然じゃ、あの研究に“ロマン”はなかったのじゃから」


「そうかしら? セレスティア王国ではその“ロマン”だと思われているみたいだけれど」


「あんなものとうの昔に廃棄されたプロジェクトだと思っておったがのう。まさか、実用化に至っていたとは」


「そのプロジェクトってのは何なんだ? プリムラに関係があるのか?」


「ワルプルギス計画。歴代で魔女が魔王になった例はなかった。その前例を覆すための計画。実効的に魔女の中から魔王候補を生み出すと言うものだった」


「生み出すと言っても闇の魔力が宿るかは運次第。じゃが、闇の魔力を持って生まれる子供が現れる周期はある程度決まっておる。セレスティア王国はその周期を利用したのじゃ」



 魔王候補たちによる魔王選定戦は五十年おきに行われると言っていた。

 ってことはそれが始まるまえの間ってことか?



「何もしなければほぼ0%だけれど、この計画によってその確率を飛躍的に上げる方法を考え出した。その周期が来るタイミングで大量の魔女の子を産む。これだけ、たったこれだけで魔女の魔王候補が生まれる可能性が上がるのよ」


「魔女といえども体は人間、そうやすやすと子供をポンポン埋めるわけではない。それを解消するための方法をわしのばっちゃんに依頼したんじゃろ。胸糞悪い話じゃ」


「でも、国は独自で開発し、成功した」



 ここまで聞けば、流石の僕にも分かった。

 プリムラとリリアナ。彼女たちが普通の魔女じゃないことを。その正体を。



「そうして生まれたのが私たち――


――ホムンクルスよ」







「私が生まれるまでに作られたホムンクルスは7万を超えていた。当然、その作られたホムンクルスを育てるだけの余裕は国にはない。だからすべて廃棄処分になった。あなたのよく知るプリムラもその一人よ」


「なっ! なんて勝手なんだ!」


「ええ、そうね。勝手よ。けれど、それを私に言ったところでどうしようもないのだけれど」



 確かにリリアナもどちらかといえば被害者と言えるだろう。彼女も廃棄処分になっていた可能性もあるのだから。



「じゃが、分からんのう。ホムンクルスとは言え、素体は魔女じゃろ。育てて損はないように思うが?」


「本当にそうかしら? あなたたちならもうすでにホムンクルスを育てることの苦労を知っているはずよ」



 ここで言っているのは性格的な面。ではないだろう。

 となると思い当たるのは……。



「食事か……?」


「異常な食事量だとは思わなかったのかしら?」



 お、思ってた。けど、あんなのはただのギャグ描写だと。

 あれはプリムラ特有のものではなく、ホムンクルスだったからなのか。



「だとしても、すべて捨てるのはやはり引っかかるのう。違和感がある」


「何が言いたいのかしら? 実際に起こった出来事に対し今更文句を言っても仕方がないでしょう?」


「知っておく必要があると思ってのう。他にも捨てる理由はあったはずじゃ」



 白撫の意図が分からない。一体何を気にしているんだ?

 それにリリアナの方もどうしてこんな会話を続けているんだ。



「良いか、憐太郎。場合によっては最悪、わしらはプリムラのやつを信じることは出来ない、ということじゃ」



 分からない。

 ここまで言われていても白撫の想定している最悪が分からない。



「いいわ。教えてあげる。それでプリムラの信用がなくなるのなら、こちらとしても好都合だから」



 そうして、リリアナから告げられる――。



  *



「そうさ、てめぇは生きていちゃいけない。あり得ねぇって話さ」



 アタシはコンコンとこめかみを指で叩く。



「だってそうだろうよ。捨てられたホムンクルスどもは中身が空っぽだったんだからよ」



 ホムンクルスを大量に生成する過程で、セレスティア王国はコスト削減のために人格を埋め込まずに体だけを永遠に作り続けていた。

 そうして、魔王候補が生まれたときにはじめて疑似人格を埋め込み生物として動ける体にする。

 疑似人格を埋め込まなければ物言わぬ人形と大差ない。

 そもそも生きていたと言えるかすら怪しい連中だった。

 だからこそ、プリムラは異常なんだ。



「てめぇ、一体どこでその人格を得たんだ?」



 ホムンクルスに勝手に自我が芽生えるなんてことはありえねぇ。

 別の誰かがプリムラに人格を与えたとしか考えられない。



「忘れたよ。そんな昔のことは」



 プリムラは手首のアクセサリーを巨大化させ、その大鎌を構える。



「手早く済まそうか。君に戦う気があればだが」


「あぁ? ありまくりに決まってんだろうがよぉ。こちとらリベンジの機会を待ってたんだって」


「そうか? やたら無駄話が多いから時間稼ぎをしたいのかと」



 その言葉にアタシは内心で舌打ちをする。



「なんでアタシがそんなことしなくちゃいけねぇんだよ。てめぇをサクッと倒しちまえばいいだけじゃねぇか」


「君は自身と相手の力量は正しく認識しているタイプだろう? 君では私に勝てない。だから時間を稼ぐ。この場に君たちの陣営メンバーが三人欠けている。彼女たちが戻ってくるまでの前座をしようという腹積もりなんだろ」



 本当にムカつくなこの女。

 こっちの心を見透かしているような態度が気に入らねぇ。しかもそれが全部あってるときたもんだ。

 個人的にはこのまま正面切ってプリムラとやり合いたいが、それはハート陣営の利益にならない。

 例えどれだけ気に入らなくても、ボスを魔王にするためならプライドくらい捨ててやる。

 今、ルーナのやつをクリームヒルトの元へ向かわせた。

 ルーナの魔法なら池袋まで数分で着く。クリームヒルトが戻ってくるまでの間、時間を稼げれば、最も不確定要素の大きいプリムラを止められる。



「こっちの思惑をそれだけ見抜いててなんで動かねぇ? 時間をかければそっちが不利だってのによ」


「不利? それは君の仲間がここに戻ってこれればの話だろう」


「なにをいって……」


「断言しよう。君のお仲間はここには戻ってこれない」



 意味が分からない。

 ここにいるのがクローバー陣営の全戦力のはずだ。他に動ける者は彼らの自宅にいる風真燕時と魔王の娘だけのはずだ。

 そっちにも一人向かわせている。

 だから、こいつの言っている意味が分からない。

 他にいるのか?

 アタシたちがまだ知らないクローバー陣営のメンバーがいるのか。



「なんでそんなことが分かるかって顔だね。決まってる。


――コンサルタントは何でも知ってる」



 ***



その頃。

ハート陣営最後の戦力は——。


 中池袋公園。

 そこは女性オタク向けの店舗が多く立ち並ぶ乙女ロードと呼ばれる場所である。

 アニメイトはもちろん、コスプレ店や執事喫茶など腐女子向けの店が集まっている。

 そして、当然そこには女性向け同人誌を扱う店舗もあり、



「こ、これは前期覇権アニメ『ミスティリア』に出ていたモブキャラ少年Aと青年BのBL本!」



 そこにクリームヒルト・ログレスの姿があった。



「って何だこりゃ。よく見たらA×B本かよ。普通B×Aだろ。アニメ見てねぇだろこの作者。こっちは逆カプNGだっつの」



 クローバー陣営との抗争中であるにもかかわらず、同人誌漁りをしている。

 そんな彼女の真横に長い黒髪の女子高生が隣にやってきて同じ同人誌を手に取った。



「百合ものにも拘らずモブの男性キャラのキャラデザがよく女性人気も高かったアニメだけど供給が少なく設定どころか名前すらも公表されないから二次創作界隈でも絶滅危惧種扱いされてたワタシも挑戦しようと思ったけど情報が少なく挫折してしまったそんなA×Bの二次BLがまさかこんなところで見つかるなんて作者誰だろう聞いたことないけどとりあえずツ〇ッターフォローしてこれも当然3冊買ってうへへこれは捗るぞ~」



 急に早口でまくし立てる少女の声が耳に届く。



「はぁ?」



 頭に血が上ったクリームヒルトはその客の肩を思いっきりつかんだ。



「Bが攻めに決まってんだろうが!」


「君は何を言っている。 年上が攻めなんてそんなありきたりなのを読んで何が面白い?」


「年下攻めの方が通だと思ってる老害は黙ってろよ」


「少年がA、青年がBって名付けられた時点で、公式がA×Bを示唆してるのが分からないのか? にわかさん」


「それを言うなら、てめぇは声優のラジオ聞いたのかよ? あれ聞きゃ、B×A以外ねぇだろ。老害」


「………………………………」

「………………………………」



 そして、2人は睨み合い、



「「んだ、やんのかてめぇ!!」」


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