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自称コンサルタントのギャルが僕を魔王にしようとしてくる  作者: 結生


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梗夜VS.エリザベートⅡ

「あーあ、お気に入りだったのに」



 梗夜(きょうや)の攻撃に襲われ、傷一つ負っていないエリザベートは軽くため息をついた。

 そんな彼女の足元には等身大のウサギのぬいぐるみが5つ焼け落ちていた。



「それがてめぇの魔法か?」



 梗夜(きょうや)は拳銃を突き付け、エリザベートに問う。



「うん。玩具(パペット)魔法っていうの。私の想像するおもちゃを何でも創造できる魔法。さっきの炎はラビちゃんを盾代わりに召喚して防いだんだよ」



 周囲の家々には炎が飛び散り、梗夜(きょうや)たちの戦場は炎に囲まれたコロシアムのようになっていた。



「それじゃあ、今度は私が聞く番。お兄さんの持ってるその銃は何?」


「見て分かんねぇのか? 魔法銃だよ」


「私の知っている魔法銃と違うから聞いてるんだけど?」



 梗夜(きょうや)の持つ銃は白をベースとし、所々に金色の装飾が施されている。そのデザインは明らかに量産型のそれではなくオーダーメイドの一点ものであることは誰でも分かる。

 けれど、エリザベートが引っかかったのはそこではない。



「魔法銃は込めた魔力以上の出力は出せないはず。なのに、今の一撃はお兄さんの全魔力を込めても出せる威力じゃなかった。どうして?」


「ミスリルを知ってるか?」



 エリザベートの質問に梗夜(きょうや)は質問で返した。



「バカにしてるの? 魔力を通す鉱物でしょ。MoT技術で作られる魔法道具には必ず使われてる。魔法銃も例外じゃないわ」


「そのミスリルの魔力伝導率はおおよそ98%。流し込んだ魔力をほぼそのまま伝えることが出来る。けど、この世にはそれ以上に魔力伝導率の高い鉱物が存在する」


「ま、まさか――ミスリル・オーロ!?」



 エリザベートはその鉱石の名を口にした。



「そうだ。金色のミスリル。こいつは世界の法則を変える。込めた魔力を増幅させることの出来る唯一の鉱物」


「知ってるわ! でも、あれは世界にたった10gしか存在しないはず! 5g手に入れるだけでも月1つと同等の値段よ! どうしてそれをあんたが持ってるのよ!」


「昔、クソ親父に誕プレは何がいいか聞かれてな。嫌がらせで言ってみたら、マジで買って来やがった」


「なっ! 嫌がらせ……」



 梗夜(きょうや)のそのセリフにエリザベートは絶句した。



「まぁ、それで俺が持っててもしょうがないから、幼馴染の機械オタクに渡したら、こいつが返ってきた」



 梗夜(きょうや)はコンコンと右手の銃を叩いた。



「さて、ネタバラシは終わりだ。続きといこうか」



 そう言って銃口を改めてエリザベートに向ける。



「おっと、1つ言い忘れていた。こいつに埋め込まれたミスリル・オーロは5g。その魔力伝導率は――」



 カチッと引き金を引くと、銃口から赤い炎が噴き出る。



「――50000%だ」


「っ!」



 エリザベートは咄嗟に熊のぬいぐるみを召喚し、梗夜(きょうや)の炎を防ぐ。



「っざけんな! それってつまり込めた魔力を500倍に出来るってことでしょ!」



 炎に耐えながら彼女は吠える。



「でもそんなの武器が強いだけで、あんたの力じゃない! イキんな!」



 銃口から炎が収まると同時にエリザベートは右手を振る。



「“人形爆弾パペットディストラクション”!」



 無数の人形がエリザベートの周りに出現し、梗夜(きょうや)めがけて飛んでいく。



「…………」



 梗夜(きょうや)はその人形に照準を合わせていたが、一瞬逡巡した後、銃口を斜め下に向け、引き金を引いた。



「っと」



 それと同時に軽く跳躍する。

 すると、銃口から放たれた炎を推進力に後ろへ飛んだ。

 そのすぐ後、先ほどまで梗夜(きょうや)の立っていた場所に人形が落ち、爆発した。



「意外と見極めがいいですわね」



 その梗夜(きょうや)の判断を、少し離れたところから見ていたメイは素直に褒めていた。



「今の人形を何も考えず撃っていれば、誘爆し、その爆風を自分が受けることになっていたでしょう。ですが、一辺倒の攻撃だけでは彼女は崩せませんわよ」



 梗夜(きょうや)が赤い炎を撃ち続けるが、エリザベートはその全てを人形の盾で防ぎながら少しづつその距離を詰めていた。



「互いに魔法は中距離メイン。けれど、エリザベート・ステュアートには近接格闘がありますわ。このまま距離を詰められれば神代梗夜(かみしろきょうや)に勝ち目はありません」



 メイの言葉通り、梗夜(きょうや)は少し押され気味だった。

 絶対に近づかせたくない梗夜(きょうや)に対し、エリザベートはこのままの距離で戦っても距離を詰めて戦ってもいい。その選択肢の差がそのまま戦況の差になっていた。



「その銃、威力も攻撃範囲もすごいけど、弾速はそこまででもないよね? これなら見てからでも反応できちゃう」



 ミスリル・オーロの存在に取り乱していたエリザベートだったが、すでに心の余裕を取り戻していた。



「その手数の少なさは致命的じゃん。だって、お兄さんはまともに魔法も使えいなザコだもんね」



 そう梗夜(きょうや)は詠唱魔法しか使えない。それは一対一の戦闘では致命的な弱点だ。さらに付け加えるなら、彼は魔法銃の利点を生かすこともできない。

 本来、魔法銃は自身の持つ魔法と組み合わせて戦略を広げるためのサブウェポン的役割が大きい。

 にもかかわらず、梗夜(きょうや)は詠唱魔法しか使えない為、魔法銃がメインウェポンとなり、攻撃が単調になってしまっている。

 だから、エリザベートは魔法銃の攻撃にのみ対応すればいい。

 いや、彼女はもう1つだけ警戒しているものがあった。

 それはメイの存在だ。

 今は傍観に徹しているがいつ横やりを入れてくるとも限らない。

 だから、7:3の割合でメイの方をより警戒していた。

 梗夜(きょうや)は知らない事実であり、知れば不本意なことに違いないが、彼がまだ倒れていないのはエリザベートの意識がメイに向いているからだ。

 それだけ、彼らの実力には差があった。



「……っと彼女がそう誤認していれば、この勝負、すでに決着はつきましたわね」



 そう呟いた後、メイはエリザベートに微笑み、彼女に背を向けた。



「はぁ?」



 それが意味するのはただ1つ。


『あなたたちの戦いに手出ししない』


「……ムカつく」



 メイに煽られたと思ったエリザベートは一瞬、梗夜から意識を逸らした。



「……ここだな」



 それを見逃す梗夜(きょうや)はではない。



「“黄の弾丸(イエローバレット)”」



 梗夜(きょうや)が引き金を引く。



「それはもう無駄だって」



 呆れるエリザベート。

 彼の攻撃に対しすかさず人形の盾を召喚しようとする。

 が……。


 ――パンっ!



「…………え?」



 軽い音が鳴ったと思った瞬間、エリザベートの右肩が黄色い炎に撃たれていた。






「あっつ! なに!?」



 エリザベートは急いで肩についた炎を叩き落とす。



「撃たれた? いつ? 見えなかった? うんん、そこじゃない。そこの原理は分かってる。分かんないのは……」



 彼女はさっき肩に灯った炎の色を思い浮かべていた。



「黄色? どういうこと? は?」



 そう、エリザベートは梗夜(きょうや)が黄色い炎を使ったことに動揺していた。



「隙だらけだぞ」



 梗夜(きょうや)は攻撃の手を休めず、銃口を向ける。



「!」



 エリザベートは思考を止め、反射的に人形の盾を召喚する。



「“緑の弾丸(グリーンバレット)”」



 今度放たれた炎の色は緑。

 赤い炎と違い放射線状ではなく一直線に伸びており攻撃範囲は格段に狭くなっている。かと言って弾速が早くなっているわけでもない。



「緑!? まずっ……!」



 炎の色を視認したエリザベートは咄嗟に回避行動に移るが、一歩遅かった。

 真っすぐ伸びる緑の炎は人形の盾と衝突する。

 絶大な破壊力を示した赤い炎すら防いだ人形の盾だったが、一瞬で撃ち抜かれた。

 そして、そのまま後ろにいたエリザベートへ。



「くそッ!」



 避けきれないと悟ったエリザベートは左手を前に出す。



「いっ……!」



 緑の炎は止まることなくエリザベートの左手を貫いた。

 まき散らされた鮮血は彼女の頬を染める。



「今のは行けたと思ったんだけどな」



 左手を犠牲にしたが、致命傷は避けていた。



「赤、黄、緑……3色も? そんなの聞いたことない!」



 左手を抑えながらエリザベートは梗夜(きょうや)を睨みつける。



「炎属性の魔法にはいろんな種類があるんだぜ? 知らなかったのか?」


「知ってる!!! 最もメジャーで扱いやすい赤の炎、火力は低いけど速度重視の黄の炎、貫通性能に特化した緑の炎。他にもその色事に特色の違う炎があることは知ってる。でも、それを複数種類習得するなんて非効率なこと誰もしない!」



 2度目。エリザベートの取り乱すその姿を見て、メイは微笑を浮かべていた。


「習得できる魔法には限りがある。この世の常識であり、それは魔王でもお姉さまでも覆すことの出来ない生物の限界ですわ。それに加え魔法学の発展、MoT技術の確立、それらによって程度の低い魔法は世間で評価されなくなっていますわ。

だからこそ、人は扱う魔法を限定するのです。求められるのは汎用性でなく個性。

例えば、炎属性であれば、扱う炎の色を1色に限定し、その能力を伸ばします。覚えようと思えば多色の習得は出来ます。けれど、それはエリザベート・ステゥアートの言う通り非効率ですわ。

何故ならどれも中途半端になり使い物になりませんもの。器用貧乏と言うやつですわ」



 それが世間一般の認識である。

 そのせいでエリザベートは読み違えた。

 いや、常識に囚われていただけではない。

 彼の実力を見誤っていた。

 それがこの事態を招いていた。

 初撃。

 彼の炎を初めて見たときに気が付くべきだった。

 魔力は低くともその魔法技術はトップクラスであると。

 その彼が何故詠唱魔法しか使わず、魔法銃に頼ったのか。

 常識外れの多色使い手とまで読み切れずとも、まだ手札があるのだと考えるべきだったのだ。



「わたくしならば、彼が最初に撃った魔法銃で分かりますけれどね」



 詠唱魔法で放った炎はオレンジ。

 魔法銃で撃った初撃は赤。

 この時点で既に2色の炎を使っていた。

 けれど、多色使いの可能性を初めから消していた彼女はその似た色の変化に気が付かなかった。



「そんなわたくしでも、彼の馬鹿げた魔法理論は理解できませんでしたわ」



「ただでさえ、魔力が低いくせに多色使いなんて非効率な真似して! その銃がなければ、一生まともに魔法が使えないのよ! どうかしてる!」


「おかしくはないぜ。これは俺に魔法を教えてくれた人の信念であり、俺はそれに共感しただけだ。後悔はない」


「信念……? そんな役に立つかも分からない信念ってなんなのよ!」


「決まってる――」




「――これが一番カッコいい」


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