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自称コンサルタントのギャルが僕を魔王にしようとしてくる  作者: 結生


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幸せの在り処

 どうしよう。急にゼラの父親から電話がかかってきた。

 これあれだよね。娘にちょっかいかけるな的なこと言われるやつだよね。



『お主の名はレンと言ったか』


「は、はい……」



 すごい威圧的な声。怖い。めっちゃ怖い。通話切りたい。切ろっかな。



『年はいくつだ?』


「16です……」


『娘と同い年か』


「はい……」


『…………………』


「………………………………」



 沈黙が、ツライ……。



『はぁ~まぁ、いい』



 お? これはもしかして……。



『娘とどうやって知り合ったのか、変なことを教えていないか、不埒なことをしていないか、本当に友達なのか、聞きたいことは山ほどあるが今は時間がない』



 許されてないですよね。そうですよね。

 これ絶対、今度会った時根掘り葉掘り聞かれるやつだ。

 でも、変なことはしてないし怒られない、はず……。



『今日、こうしてお主と会話を交わす訳はただ1つ。ゼラの不登校を治す方法が知りたい。何か良い案はないか?』


「ないです」



 僕はノータイムで即答した。



『え、ちょ、答えるの早くない? もうちょっと考える素振りとか見せてよ』



 あれ? なんか急に話し方に威厳がなくなってきたな。



『じゃ、じゃあさ、不登校になった理由とか知らない?』


「知らないです」


『そ、そっか~。で、でもでも、他に何か些細なことでもいいから、ゼラのこと教えてくれない?』



 この父親めっちゃ必至だな。

 それだけゼラのことを心配してるってことなんだろうけど。



「不登校うんぬんは分からないですけど、父親が無理やり学校に行かせようとしてくるのはうざいって言ってましたね」


『あ、あはは、そんなこと言ってるんだ。そうか……そうなんだ……』



 露骨に声のトーンが下がった。電話越しなのにこの人、分かりやすすぎる。



『でも、学校には行かせたい。そうじゃなければ、友達も出来ないし、将来だって……』


「友達なら僕がいます」


『え?』


「今の時代、学校に行かなくても友達を作る方法はいくらでもあります。合わない人と無理に合わせることを強要する学校が向いていない子もいるんです」



 無理に学校へ行かせようとする人は嫌いだ。

 だって、そういう人たちは学校生活を楽しんだ人たちばかりだからだ。



「ゼラがどうして学校に行っていないのか、その理由は分かりませんが、行きたくない理由がある以上無理に行かせようとするのは価値観の押し付けにしかなりません」


『だが、学校に行けなければ将来いい職業に就けないだろうし、きっと苦労することになる。娘には幸せになってもらいたいだろう』


「別にいい職業に就くことだけが幸せではないでしょう。幸せを感じるのは人それぞれです」


『それでも、将来の選択肢は増える。なら、学校に行った方がいいだろう』


「確かに選択肢は増えるかもしれません。でも、それは問題なく学校を卒業出来た人たちだけです。無理に学校に行かせた結果、心に大きな傷を負ってしまったら、その選択肢は全て断たれるんです」


『それはいつ苦労するかの話だろう。学生時代に苦労するか、社会人になって苦労するか。だったら、まだ我が力を貸せる今のうちに苦労してもらう方がいい。将来、苦労した時、我はいないかもしれぬのだから』


「例えば将来、結婚して子供を産んで、夫が死に、母子家庭になったとしても、その苦労の中、子供が成長していく姿を見るのが幸せだと思う人もいます」


『それは幸せの妥協ではないのか。それにその子供にとってその生活は幸せか疑問だ』


「ええ、そうです。これは幸せの妥協です。でも、幸せと感じるハードルが低ければ、それだけ幸せを感じる瞬間が多いということです。それと、子供が不幸になるかもしれないとのことですが、それもまた同意です。けど、それはしょうがないことです。だって、幸せとは誰かの不幸で成り立っているのだから」


『…………うっ』



 そこでゼラのお父さんが言葉に詰まった。



『幸せは誰かの不幸で成り立っているか……耳が痛いな』


「?」



 ゼラのお父さんが呟いたその言葉の真意は僕には分からない。

 きっと何か心当たりがあったのだろう。



『確かにお主の言う通りかもしれない。だが、自分の身近な人くらい幸せでいて欲しいではないか。その為ならなんでもする』


「だったら、ゼラの好きにさせてあげて下さい。さっきも言いましたが、あなたの価値観を押し付けるようなことだけは絶対にダメです」


『そうだな、さっきまでのは我の意見であって、娘の考えではない。だが、好きなことをさせるべきと言うのなら、やはり、我は学校に行かせたい』


「何を言っているんですか? ゼラは学校に行きたくないって……」


『いいや、それは違う。正確には最近は、と言うべきか』


「最近は? それってどういうことですか?」


『妻から聞いた話だが、お主が学校に行き始めた頃から愚痴をこぼし始めたらしい。レンが最近遊んでくれなくなったと。寂しいのかと思っていたが、あの顔は寂し気と言うよりは羨ましいと思っている顔だと、そう言っていた』


「なんですかそれ……」



 それじゃあ、ゼラが本当に学校に行きたがってるみたいじゃないか。

 これはひどい裏切りだ。不登校仲間だったはずなのに。

 って言っても先に学校行き始めた僕には何も言う資格ないんだけどね。

 それに。



「やりたいことを我慢するのは良くないですね」



 せっかく生きるのなら、やりたいことをやるべきだ。



「分かりました。そういうことなら、僕も協力しましょう」


『そうか! 助かる! で、どのようにすればよい?』


「そうですね……。学校に行きたいと思っている、それでも行けないのだとしたら、今の学校が悪いのかもしれませんね」


『学校が? だが、ゼラの通う学校はここら辺では一番の名門だぞ?』



 え? そうなの? もしかして、ゼラってめちゃくちゃ頭いいの?

 ……いや、それはないな。いつもの会話から知性の欠片もないからな。

 そうなると、お嬢様とか?

 あー、もしかして、今電話しているお父様は実はとんでもないお金持ちとか有名人だったり?

 なんかめちゃめちゃ失礼なこと言っちゃってたような気がするけど、……一旦忘れよう。



「問題なのは学校のレベルではなく、生徒かと。不登校の理由が学校の生徒にあるのであれば、その学校にゼラを知る人が1人でもいるのなら、ゼラは通いにくいかと。それに知らなかったとしても、これだけ長く不登校であったなら、今更学校に行ったところで悪目立ちしかしないでしょう」


『そうなると、転校するのが一番効果的か?』


「ですね。問題はどこの学校にするかですが……」


『ああ、それなら目星はついている。いいところがあるんだ』


「へぇ~、どこですか?」




『お主の学校だ』


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