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自称コンサルタントのギャルが僕を魔王にしようとしてくる  作者: 結生


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MoT技術とミスリル

 放課後。

 僕は白撫の工場へとやって来た。



「なんで学校に行っているのか、じゃと?」



 そこで気になっていた疑問を白撫に投げかけてみる。



「昔、ばっちゃんに言われたのじゃ。学校にだけは通っておけとな」


「なんで? 白撫ほどの才能があれば、別に学校で勉強する必要もないでしょ?」


「たしかにそうじゃな。授業はわしの知っていることばかりじゃ」


「なら、なおさら行く意味なんてないじゃん。すでに依頼を受けて仕事もしてるみたいだし、学歴もいらないでしょ? それなら学校に行く意味なんて」


「いいや、そんなことはない。なぜなら――おぬしに会えたからな」


「僕?」


「会ったのは学校じゃなかったが、高校に入学しておらんかったら、おぬしと会う機会なぞ、なかったからのう」



 白撫は作業を止め僕の方をゆっくりと見つめる。



「ばっちゃんは言っておった。学校にだけは行けと。そこにはきっと大人になってからでは手に入らない大切な出会いがあると。じゃから――」



 白撫は小さく笑って、僕を指さした。



「――この出会いが大切なものだと証明してくれることを期待しておるでのう」


「残念だけど、それは叶わない願いだよ。僕なんかにそんな……」


「なぁに、軽く魔王になってくれさえすれば、わしとしては大満足じゃ」


「いや、だから! 魔王になんてならないって!」


「どうかのう? おぬしは巻き込まれやすい体質っぽいしのう。おぬしにその気がなくとも、周りが勝手におぬしを魔王にしてしまいそうじゃがな」


「あー。それが今一番心配してることではあるね……」


「ちなみにその勝手する一人がわしじゃがな」


「白撫さん⁉」


「おぬしはもう逃れられぬ運命の中じゃよ」


「いやだー! やめて! 現実を突きつけないで!」


「ま、わしらに見つかったのが運の尽きじゃな」



 そう言って、白撫は作業を再開した。



「で、さっきから気になってたんだけどさ。今は何を作ってるの?」


「これか? これはのう、一瞬で部屋の中のゴミだけを吸い上げてくれる掃除機じゃ」


「一瞬で? どいうこと?」


「ボタンを押すだけで部屋内のゴミを自動で判別し、ゴミ袋に詰めてくれるのじゃ。しかも、分別機能付き」


「え、すご。掃除の概念が変わっちゃうじゃん。うちにもほしい」


「それは難しいかもしれんの。これは業務用じゃ。一般家庭ではまず買えぬ代物じゃよ」


「ああ、だからあんまり有名じゃないのか」


「この全自動掃除機の発注が来ておってのう。明日までに三千台用意しなくてはならぬのじゃ」


「もしかして、昼間いじってたのって、これ?」


「そうじゃ。基盤は出来上がっておるから、あとはミスリルを埋め込むだけで完成するのじゃ」


「ミスリル? ミスリルって魔力を通す鉱物だよね?」


「そうじゃ。MoT技術で作られるすべての機器にはこのミスリルが埋め込まれておる。これによって、魔力で機器を動かすことが出来るのじゃ」


「それって大変なの? 埋め込むだけなら簡単そうに聞こえるけど」


「難しくはないんじゃが、如何せん数が多くてのう。ミスリルの埋め込みには多少なりとも魔力を使うんじゃ。この数は魔力消費が激しくてのう」


「あ、そうなんだ。じゃ、まぁ頑張って」



 僕は嫌な予感がしたので、そそくさと逃げようとした。



「待つのじゃ」



 しかし、しっかりと白撫に捕まってしまった。



「ちょうど人手が欲しかったところじゃ。おぬしも手伝え」


「え、いやでもそれって素人にもできるものなの?」


「そんな難しいものではないぞ。いいか?」



 白撫はミスリルを取り出し、日中ひたすらいじっていた基盤の一枚に押し当てる。



「これで、ほい」



 すると、スーッとミスリルが基盤に吸い込まれるように消えていった。



「これだけじゃ」


「え⁉ 今何が起きたか分からないんだけど⁉」


「なんじゃ。見ておらんかったのか?」



 お手本をもう一回見せてもらうが、ほぼ一瞬でミスリルを埋め込んでいってしまうので何が起きているのかさっぱりわからない。



「はぁ~、よいか?」



 白撫は盛大にため息をつきながら、渋々と言った感じで説明を始める。

 いや、僕が無理やり付き合わされてるんですが、その辺理解してくれてます?



「ミスリルを埋め込む際には微量な魔力を流し続け、基盤に設定してある魔力の波長と合わせることでミスリルは埋め込まれるのじゃ」


「ごめん。何て言った?」


「聞いておらんかったのか?」


「違くて。言っている意味が全然分からなかった」


「いいか? この世のありとあらゆる物質には微量ながら魔力が宿っておる。この基盤も例外ではない。そして、この基盤に流れる魔力とミスリルに流れる魔力の波長を合わせると、ミスリルが溶け込み、内部に埋め込まれるのじゃ」


「えっと、その説明を鵜吞みにすると、基盤に流れる魔力を正確に読み取って、魔力の波長を微調整しながら合わせなくちゃいけないってこと?」


「そう言っておるじゃろ」


「いやいやいやいやいやいやいや! こんなん無理だって! そんな繊細な魔力コントロールなんて僕出来ないよ⁉ てか、そんな細かく魔力の波長を読み取れる人なんてそうそういないって!」



 と文句を言ってみるが、そういえば白撫には鑑定眼があるんだった。

 そりゃ読み取るのは簡単だろうね。

 魔力の微調整は難しいだろうけど、高校生ならそれなりにできるし、集中すれば十分あればできそうではある。

 あくまで一般的な高校生ならの話だけど。

 そもそも魔力の波長なんて正確に読み取れないから、一般的な高校生でも、魔力を微調整しながら偶然、波長が一致しなければ埋め込みなんてできないだろう。

 MoT技術のプロならこれくらいサッとできるものなのだろうか?

 個人的には鑑定眼を持つ白撫だからこそ、一瞬で埋め込みが出来ているようにしか見えない。



「とりあえずでよい。やってみなくては話にならないであろう?」


「はいはい、分かりました。やるよやりますよ。出来なくても文句言わないでよね」



 そうして、これから地獄のような作業が始まった。

 結局、初めてミスリルの埋め込みが成功するまで二時間かかってしまった。



   *



 メキシコ湾に浮かぶ人工島。

 そこには勇者軍の総司令本部が構えている。

 魔族は南米からやってくる。

 つまりここは人魔戦争の最前線でもある。

 そんな総司令本部の一室に白い羽の生えた女性が冷たい声で告げる。



「本日をもって、あなたを勇者パーティから追放します」



 目の前にいた甚平姿の男は気にした素振りも見せずにため息をついた。



「へいへい、おじさんは黙って去るとしますよ」


「異論はないのですね」


「あったところで、君はその決断を覆すことはないだろう?」


「当然です。あなたの行いは目に余ります。勇者軍にとって不利益となるのなら、例え最高幹部でも容赦なく追放します」


「ほらね」



 予想通りの返答が返ってきて、男は肩をすくめる。



「じゃ、用無しのおじさんはさっさと去るとするわ」


「これからどこへ行くのですか?」


「もう君の命令に従う義務はないと思うんだがな」


「……ただの世間話です。ダメですか?」


「そう言う言い方は、感心しないな」



 男はきびを返し部屋を後にする。



「故郷の日本へ帰るとするさ」


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