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もふもふ聖獣はサーシャがだいすき!  作者: 早乙女姫織


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第二十六話 光の祭り

王国からの使者が村を去った後、広場には重苦しい空気が残っていた。


使者の言葉――「次は容赦しない」――は村人たちの心に影を落とし、夜になっても不安は消えなかった。


焚き火の炎が揺らめく中、老人たちは顔を曇らせ、若者たちは拳を握りしめていた。


「王国が再び来れば、村はどうなるのだろう」


「聖女様を渡せと言われたら……」


囁きは広場に広がり、子どもたちも怯えた瞳でサーシャを見つめた。


彼女は肩の傷を押さえながらも微笑み、子どもたちを抱き寄せた。


「大丈夫。私はここにいる。逃げたりしない」


その言葉は小さな光となり、人々の心を支えた。


だが、不安を完全に払うには足りなかった。


その時、長老が杖を突きながら立ち上がった。


深い皺の刻まれた顔は厳しくも温かく、瞳は鋭く光っていた。


「恐怖に沈んではならぬ。我らは光を祝うべきだ。魔物を退け、聖女が村を守った奇跡を忘れてはなら

ぬ。だからこそ、祭りを開こう。光を讃える祭りだ」


その言葉に村人たちは驚き、やがて頷いた。


恐怖に沈むよりも、光を祝う方が心を強くする。


こうして「光の祭り」が始まることになった。


翌朝、村人たちは広場に集まり、祭りの準備を始めた。


花を摘み、門を飾り、焚き火を用意する。


子どもたちはもふもふと共に花冠を編み、笑い声を上げた。


「聖女様に贈ろう!」


「もふもふにも!」


小さな手で編まれた花冠は色鮮やかで、春の香りを放っていた。


サーシャは戸惑いながらも受け取り、胸に温かさを覚えた。


「ありがとう……私は偽物だと言われても、この村では光を届ける者でありたい」


その言葉に子どもたちは笑顔を浮かべ、もふもふは尻尾を揺らした。


村人たちは料理を作り、衣装を整え、歌を練習した。


若者たちは踊りの輪を広げ、老人たちは祈りの言葉を整えた。


村全体が祭りの準備に包まれ、恐怖は少しずつ薄れていった。


夜になると、広場に焚き火が焚かれた。


炎の揺らめきが村を照らし、人々は集まった。


花冠を載せた子どもたち、衣装を纏った若者たち、杖を突いた老人たち――村全体が光を讃えるために集

まった。


サーシャは祭壇に立ち、両手を組んだ。


肩の傷はまだ痛んでいたが、心は静かだった。


もふもふは足元に座り、尻尾を揺らしていた。


「神よ……この村に光を。人々の心に安らぎを」


祈りの言葉が夜空に溶け、掌から淡い光が広がった。


光は焚き火と共鳴し、村全体を包んだ。


人々は息を呑み、やがて涙を流した。


「……暖かい」


「心が軽くなる」


その声は広場に広がり、祭りの始まりを告げた。


焚き火の炎が夜空に揺らめき、広場は光に包まれていた。


サーシャの祈りが終わると、若者たちが太鼓を打ち鳴らし、歌声を響かせた。


輪になった彼らは色鮮やかな布を翻し、足を踏み鳴らして踊り始めた。


「聖女様に捧げる歌だ!」


「光を讃えよう!」


声は力強く、夜空に届くようだった。


子どもたちはもふもふと走り回り、笑い声を上げた。


もふもふは尻尾を揺らし、踊りの輪に飛び込んでリズムを刻んだ。


「もふもふも踊ってる!」


「尻尾が楽器みたい!」


その声に広場は笑いで満ち、サーシャは心が軽くなるのを感じた。


肩の傷はまだ痛んでいたが、笑顔は自然に広がった。


彼女は輪に加わり、村人たちと共に踊った。


偽物ではない、本物の聖女だ――その声が広場に響いた。


歌と踊りが続く中、夜空に星が瞬き始めた。


焚き火の炎とサーシャの祈りが共鳴し、もふもふの体から淡い光が溢れ出した。


「……見て!」


子どもたちが指を差す。


もふもふの毛並みは輝き、光は広場を包んだ。


サーシャの祈りと人々の歌が重なり、光はさらに強まり、村全体を照らした。


畑の土が潤い、泉の水が澄み、家々の影が柔らかく揺らいだ。


人々は驚き、涙を流した。


「これは……神の祝福だ」


「聖女様と獣が光を呼んだ!」


その声は広場に広がり、村人たちの心に確かな信頼が芽生えた。


サーシャは涙を流しながらも微笑み、胸に手を当てた。


「私は……偽物ではない。この村に光を届ける者だ」


その言葉は夜空に響き、星々に届いた。


光の奇跡が広場を包む中、村人たちは用意したごちそうを並べた。


大鍋には肉と野菜の煮込みが湯気を立て、焼きたてのパンが籠に積まれていた。


果物の盛り合わせは色鮮やかで、春の香りを放っていた。


「聖女様、どうぞ」


「もふもふにも!」


子どもたちはパンを差し出し、もふもふは嬉しそうに食べた。


サーシャはスープを口にし、温かさに涙を浮かべた。


王国で孤独に沈んでいた日々とは違う。


ここでは、人々と共に食卓を囲んでいる。


「美味しい……ありがとう」


その言葉に村人たちは笑顔を浮かべ、杯を掲げた。


歌と踊り、光とごちそう――村全体が祝福に包まれた。

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― 新着の感想 ―
 サーシャさん達が故意で国へ害与えたか怪しいのに、あからさまな脅迫や通告を口にした使者の操り人形になるまいと、自他を鼓舞するように光の祭りをする村人達と、それに感謝するサーシャさん。  人々の心が沈む…
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